山下イートオール
許せない。やるせない。私は親友の死を噛み締める。そんな中、こんこん、とノックが響いた。教師たちだ。どうしようか、私は考える。そのまま教師に話した方がいいか、話さず隠した方がいいか。だとしても、どう隠す?いや、それは私の能力がある。
それらの雑多な思考を置き去って、今はもう語られない夜の夢を思い出す。
彼女のためにも、まだここで
「夜は今、トイレです」
「分かりました。では、早めにご飯来てくださいね」
無理に偽善者ぶった声に腹が立つ。教師たちが部屋から出ていき、私は昨晩、夜とカードゲームをしたテーブルに突っ伏する。夜をイメージし、目を閉じる。
眩しい光に包まれて、夜がまた現れた。
「やっぱり、生きてたんだ。夜」
笑って見ると、いつもみたいに夜も笑う。
けれど、夜は一言も喋らない。それこそ、人形のような虚なものが私に向いている。それだけの事実しかない。
奥には直視したくもない、友人が寝ている。私のやるべきことを整理してみる。
まず、友人を安全なところに移動させる。また、こうなった人間は、臭いがするらしい。何かないか。探していると、このホテルのチラシ、のようなものを見つけた。
『睡眠にこだわる』
大きく書いてあった。チラシの下の方に「新型コロナ対策のため、三日以上の宿泊をさえる方は、ベットメイキング等のサービスは控えさせていただきます。」
もう、何も考えず、彼女をできるだけ柔らかい寝具で包み、ベットに寝かせる。誰もこの部屋には入ってこない。
なぜかさっきから涙は出ないし、まだ笑って夜と話せる気がした。それは私のクソみたいな能力のせいかもしれないし、この能力が今になって役に立つのも皮肉みたいだ。
そして、次にやること、と言うか同時並行だ。夜の夢を叶える。そして、彼女を殺したものを見つける。そのあとは、私のその時の気分次第だ。
「夜さん、大丈夫?朝食に全然手が着いてなかったけれど」
魚澄だ。飽くまでこちらを心配する風じゃなく、一応聞いてみた、と言う感じだ。
「昨日遅くまで遊んじゃってね。まあ大丈夫だよ」
魚澄をよく観察してみる。こいつが、夜を殺している可能性がある。そこまで興奮している様子はないし、いつも通りだ。
「夕さん、特別な力を持っているでしょ。」
「え、どうしたの」
「やって欲しいことがある。やってくれたら、犯人の情報を教えてあげるよ」
私の夜が苦笑する。
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