魚澄クールネール
めっちゃ、気が狂ったみたい。あー、じゃなくて。これは俺の話じゃないし、俺に限った話じゃない。
唯我統って奴がいてさ。そう、様子が、どうかしてる。
一日目。いつもとは少し変わった、一日。眠い。いつもと変わりない、眠さ。バスガイドの静かな声に包まれて、
どうしたのか、近づいて観察しようとしたが、無駄だった。唯我はいつも通り振る舞おうとしてしまう。ここは一度、相談しよう。隣に座る
「そう言えば、唯我の様子、どこかおかしくない?」
もちろん小声だ。諒太は勢いよく振り返ると、魅入るように見続けた。
「ね、違和感あるでしょ」
「いや今、首ゴキっていって、動かせない」
「ああ」
少し待つことにする。
「ああ、たしかに。具合悪そうな気がするわ」
「だから、どうしたんだろうなって」
彼は考え込む。バスガイドの眠気を誘う声をなんとか退けて、彼の答えを待った。
「何か、大事なものでも無くしたんじゃない?」
「ああ、新幹線で落としたとかはあるかも」
「『研修』旅行だし、浮かれてるのかもね」
智紀たちは修学旅行、ではなく、研修旅行を企画された。なぜなら、智紀たちは意識が高い。嘘だ。学校の校長と、副校長が、意識が高い。
「まあ、決まったことは後でじっくりと愚痴ろう」
「うーん。暇だし、ガチャでもしようか」
彼は目を閉じ、手を皿のように広げる。彼には特別な能力が備わっていて、彼のそれは『近くにいる人間の能力をコピーする能力』らしい。まず、彼に特殊な能力があることに驚いたが、周囲に特殊な能力を持っている人がいることに驚いた。
ぽん、と言う音と共に、彼の手の上に釘と紙が現れた。諒太が紙をこちらに寄せ、智紀も読んだ。
『固定。物を固定することができる。コピー版では、釘を刺した物を固定できる。』
「ふうん。面白いじゃん」
彼はそう言いながら、智紀に釘を刺す。
「動けないんだが?試しに俺を使うのやめなよ」
智紀は諒太に釘を刺した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます