山下ヴェールドール
「疲れたー」
「もうあと三日で終わるからね」
「うん、時間が立つの早」
そう言いながら、二人でベットにダイブする。うわ、やわらか。その優しさが表されるように、周りに大きな、猫とハムスターが現れる。もふもふしていて、もくもくしていて、体が包み込まれる。何かに触れた感覚はなかったが。
「うわあ、夕のおかげで柔らかいとかの次元じゃないね」
私には、先天的に不思議な力があった。それは、『何か』を見せる、だけの力。
「触れないのに柔らかいとは」
「だから、次元が違うんだよ」
夜ちゃんは座り直し、笑った。
「それでも、私のよりはいいいでしょ。綺麗だし」
「いや、強さで言えば夜ちゃんの方だと思うよ」
夜。水卜夜。今私の目の前にいる友人の名前だが、そもそも私たちが仲良くなったのは、ある共通点からだ。二人とも、声が似ている。
それもそうだが、多分一番の決め手になったのは、二人とも、特別な力を持っているからだと思う。夜は、何かを固定する力を持っている。太陽が出ている間だけ、だけれど。
「夜なのに太陽が出てる間だけ、なんて皮肉だよね。まあ、夕方は好きだからいいんだけど」
何かを言おうとして、夜は口を閉じる。何?と聞くと、とても恥ずかしそうに、
「夕も好きだし」
と言ってきて、私は夜を小さく突いた。
朝だ。アラームのならない朝は新鮮で、少しだけ目覚めが良かった。しかし、時計を見ると朝ご飯の時間ぎりぎりだ。夜のベッドの棚には睡眠薬と水筒が置いてある。
「夜ちゃん、起こしてって、」
そう言いかけて、私は止める。言葉と、意識と、息を止める。夜がベッドから落ち、寝ていた。それならまだよかった。腹の辺りから赤くて黒い“それ”が滲んでいる。
声をかけても反応はない。窓も扉も鍵は閉まっているし、キーカードは部屋の中にある。だれが、どうやって?夜は、人形のような白い瞼を、少しも動かさず、返事もしなかった。
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