第2話 既視感

 目覚めると私の身体は幼くなっていて中学の頃に捨てた犬のぬいぐるみがまだ綺麗に残っていた。状況を確認するために時計を見ると2013年4月9日(火)だった。近くにはフィルムの付いた水色のランドセルがあった。

「ひなたー!朝だぞー」

「はーい!」

 3段ベッドの下から母の声が聞こえて無意識のまま私は返事をした。階段で下まで降りると中学に上がった時に交通事故で死んでしまった父がコーヒーを片手に新聞紙を広げて読んでいる姿が目に見えた。もう会えないと思っていた父を見ると自然に私の眼からは静かに涙が垂れていった。

「今日からやっと小学生で嬉しいのか」

「うん!」

 優しい声で私の涙について問おうとせず、私のことを大好きな優しい声で包む。

 本当はただ亡くなった父の声を再び聞けることができた喜びだったが生きている父に中学生の時に交通事故で亡くなる事を伝える事は、私一人の未来を変える問題では済まなそうだと感じた。たとえ、未来が変わるとしても私の人生が明るくなるのだとしても一つの選択だけでは、変わらないと幼い私でもわかることであったからだった。でもこの時間はまだ幸せと感じられて、このまま終わってほしくないと願うばかりだった。いずれ地獄を見る事になるから…。

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わたしの最期 社会不適合者。 @Felze

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