第8話

体育の授業…

ということで100mのタイム測定をすることになったのが


「涼風と石田、最初で」


体育の吉田よしだ先生が順番を名指しで全て決めていく…結果私は最初…未来が最後尾に並ぶ形になっていて一瞬だけ吉田先生を凄い顔で睨んでいた


「先生…この順番の意図は」


「特にない…強いて言えば面白そうだから」


未来がは?って言ってる気配がしたが気にしません…私は気付いていません…


横並びで涼風さんと並ぶ、145cm……四捨五入して150cmの私と身長20cm以上傍からみたら姉妹にしか見えないですねこれ…


「一緒に走るよりも個人的には見てて欲しかった気もするけど……まあ、しょうがないね」


「…そんなに自信があるんですか……」


「ああ…体はしっかりと鍛えていてね」


本当に自信満々と言った様子の涼風さん…スポーツ万能王子様…もし本当にそうならかっこいいですね………何思ってるんですかね…私…


「………オンユアマークス」


…普通に授業でやる100mでスタートの合図が陸上競技のちゃんとしたものでしかもスターターピストルなんだ…


私はそんなことを思いながらクラウチングスタートで構える


「セット」


パァンッと音が響く…完璧なスタートを決め…そして綺麗なフォームで走る…が私の足はそのフォームに見合わないぐらい遅かった…もちろん全力である…


そして…その自信満々だった涼風さんはその自信に見合った足だった…フォームを綺麗で無駄を感じさせない…本当にそんな人いるんですね…


そして当然涼風さんが先にゴールした……振り返ったと思うと腕を広げてまだゴールしてない私のレーンに立った…何やってるんですかあの人…


………普通に避けるだけでいいのだけれど…なんというか涼風さんを驚かせてみたいと思ったのです


私もゴールし…たが速度はあまり緩めずに、まっすぐ涼風さんの少し前でそのまま来る…そのまま抱きしめられると思いきや…私は彼女の横に綺麗なスライディングを決め、その勢いを殺さずに立ち上がり少し距離を空ける


「…涼風さん腕を広げてどうしたんですか?」


「……なかなか面白いことをするね…望海くん…その避け方に免じて抱擁はやめてあげよう…」


一瞬だけ動揺してた気がしますが…平然とした態度でそう言い放つ涼風さん…普通に避けただけだと抱きしめるつもりだったんだこの人…


ちなみに涼風さんのタイムは12秒83陸上選手と疑うレベルです…私は18秒77……気にしないです…気にしないです…


「…しかし望海くんの走り方は…なんというか女性のそれというより男性に近いものを感じたね………」


「気のせいです…昔からああいう走り方です…」


……それっぽい走り方をしようしたときもあったけど…走ってみたら今以上に遅かったし…何より走りづらくてたまらなかったのでやめました…


「石田…スライディングは上手かったしその見た目でやるのは面白かったがあんまやるなよ…それで怪我でもされたらわたしの監督責任とか言われかねんからな…特にお前は…不味い…」


「あ…はい…すみませんでした…」


吉田先生が少し笑いながら言ってましたがはて私は特に不味いのはなんでなんでしょう…


そして…その後


「ほら…私と未来くん以外興味がないんだろうけど…ちゃんと見てないと…」


「…はい」


なんというか…女子の全力疾走は…私には目に毒でした…


―――――――――――――


キャーキャーと周りが黄色い歓声が上がっている

それを私は多分憎らしげに見ていたのだろう


「山本さん…顔が怖いよ…?」


「え…ああ…御堂さんごめんなさいそんな顔してた…?」


「うん…話しかけていいのか分からないくらい怖い顔だった…」


御堂千景みどう ちかげさんはそう言って苦笑いした…そんなに怖い顔してたんだ私…望海関連だとどうも自分以外が関わるとそういう顔をしてしまうらしい…

前の黄色い歓声がいっそ大きくなる…なんとまた涼風さんが手を広げてる


「………あの人は…」


「山本さん!また顔!顔!」


御堂さんがまた注意するが…私の視線はゴールに向けられていた…望海は速度をあまり緩めずに涼風さんに走ってる…見たくない……それでも視線を離せずに見てしまっていると…涼風の構えてる腕の下あたりをスライディングで抜けていた…なんというかとてもホッとした…あのまま抱きしめられていたら私は我慢出来なかった…


「石田さんって案外器用なんだね…」


「…スライディングは上手いの…望海…というより野球が多分上手いのよ…」


「へぇー…髪伸ばしてるしなんか凄い意外だね」


実は私も何故野球が上手いかは分かっていない…そういうチームや部活に入っていたことはないのだ

そしてわたしが野球が上手いことを知ってることを多分彼女は知らない


小学生の体力測定の時ソフトボール投げで彼女は完璧な投げ方で投げたり…中学の授業でソフトボールがあった時に綺麗フォームでバットを振っていたり…これだけだとソフトボールが上手いと思うが…


ソフトボール部の人がなんかバッティングが違うと言ったり…彼女はそれが当然のように塁でリードを取ろうとしたり


「石田さん…野球じゃないのでリードは禁止ですよ」


「…!はい…すみません…」


気付いて顔が真っ赤になってた望海が可愛かったのでよく覚えている


極めつけは中学2年生の時…彼女がコソコソと休みの日に出かけていたのをたまたまこっそりついて行った時

バッティングセンターで女子には…というより明らかに早い130kmのマシーンで綺麗なバッティングホームで楽しそうにボールを打ってる彼女…ちなみにその後その場にいた小学生の男の子にお姉ちゃん凄いー!と言われて顔を真っ赤して退散していた、可愛いかった


「今度は優しそうな顔してるけど…なにかそれも怖い気がするね…山本さん…」


「ん…ああ…話の途中で…ごめんね…御堂さん」


「いや…別にいいけど」


そうこう話してる内にどうやら私たちの番がきたようだった


「走るの涼風さんになんか負けるのは嫌だけど…あそこまで足早くないんだよなぁ…」


「まあ確かに彼女早かったよね…まあ私の方が早いけど」


「…え?」


その言葉通り御堂さんは早かった…12秒11…早すぎる…私は13秒81…

みんな涼風さんがいちばん早いと思ってたのもあり絶句していた…涼風さんももちろん驚いていて私もさっきまでのモヤモヤより驚きが勝ってしまったが…


「未来さんお疲れ様です」


そんなみんなの驚きの中平然と私に寄ってきた望海に全部どうでも良くなった




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