聖女は怒りは収まらない

朝山みどり

第1話 聖女召喚

わたしは二人でよく行った喫茶店を目指して歩いている。徹夜明けの身に日差しが眩しい。最後に婚約者に会うからと一日休みを取って睡眠、エステと磨き上がるつもりだったのに、会社から呼び出された。無能な上司の尻拭いで取引先に頭を下げに行き、書類を作り直した。徹夜で・・・・・朝一番でそれを、取引先に持って行き自慢話を傾聴した。


そのまま、目的地に向かって歩いている・・・・・最後に美貌を見せつけて、捨てた魚の価値を見せつけてやるつもりだったのに・・・・


前から来る二人連れに気づいた。やつと寝盗り女だ。向こうもわたしに気づいたようで一度立ち止まったが、すぐに歩き出す。


三人仲良く店に入るのか・・・・最低だ。


はっと気づいて優雅に見えるように歩調を変えたわたしの足元が光った。まわりの景色がぐにゃりと歪んだ。


やつが走って来た。わたしはその顔を目掛けてポケットの婚約指輪の箱を投げつけた。角が当たれと念じながら・・・・と景色がしゃきっとなった。そこはヨーロッパの礼拝堂でコスプレーヤーの聖地だった。



頭を振って現実に戻る。徹夜明けは美貌にも体にも思考力にもよくない。だが・・・・これって・・・そうだわたしは目が回って倒れたんだ。もうちょっとしたら見知らぬ天井を見るんだ。とまわりの男性を見回してイケメン度を測っていたら、後ろから声をかけられた。



「よくおいでた。聖女様。さぁ神殿に参りましょう」

「なに?神殿などにやらぬ、王宮に留めるぞ」


「あなた方、これって一体?どういうこと?」と徹夜明けにも関わらず良識ある言葉使いで質問すると



聖職者って格好のポヨンとしたおじさんが

「聖女様、よくおいで下さいました。」

と偉そうに言う。


「なんですって?おいでしたくなんかないわよ」

と言ってしまった。するとそのおじさんは



「聖女様、お静まり下さい」といいながら杖でわたしの肩を撫でた。


強烈な静電気が起きてビリっと痛みが走った。



「なにしてんの。このエロじじい」


そう言いながらわたしは靴を脱ぐとそれでそいつの頭を引っぱたいた。


ボコっと音がしてそいつは尻餅をついた。杖が手を離れて向こうに転がったが、すぐにこちらに転がってきた。



足元に転がってきた杖を拾い上げると


杖が『おぉ任せろ』と言ったようだった。さすが異世界?さすが夢?


それから杖が光り始めた。凄い演出だ。いくら夢でもわたしにはこんな想像力はないなと思いながら、杖を見ていた。


まわりの人間がすーーと後ろに下がって行った。


その時声をかけられた。


「お嬢様、ここで話しても解決いたしません。よろしければお茶はいかがですか?一休みして然るべき人に相談しましょう。でも先ずはお茶を・・・この世界のお菓子がお好きだといいのですが・・・」


そしてその女性は優雅に挨拶をした。これってカテシーってやつ?初めてみた。


わたしは杖のそばにいた人に渡すと彼女について部屋をでた。



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