第4話 温泉旅行
三矢孝弘という男は、色白で昔で言えば女形のような、ちょっとなよっちい感じの男だった。
今までの紗友里であれば、そんな頼りない男には見向きもしなかっただろう。しかし、甘えてくる感じは絶妙に女心を擽り、
――ホスト狂いをする女性の気持ちが少し分かった気がする――
とも感じたほどだった。
男性アイドルグループにいそうなタイプで、そんな男を隣に侍らせているところを、まわりに見せつけたいというほどに感じたほどで、自分には夫がいながら、そんな感情に陥るのだから、不倫という言葉には、甘い罠が含まれているということも分かるというものだ。
最近テレビドラマでは、そういうタイプのイケメンが多く登場する。まるでファッション雑誌の表紙を飾っているかのような男の子だ。月間のテレビ番組を掲載している雑誌などの表紙に、果物を持って登場している連中を想像してくれればいいだろう。
本当に孝弘という青年は、まるで少年と呼んでもいいくらいであった、声質も細く高いのだ。まるで声変わりをしていない少年のようで、その声を聴いただけで、女性ファンの中には卒倒してしまう人もいるかも知れない。
そういえば、昭和の昔の男性アイドルの熱狂的なファンが、黄色い声をあげすぎて、酸欠にでもなったのか、失神してしまう人もいたというが、今とは状況がかなり違っているだろうが、結果は似ているから不思議だった。
確かに昔のアイドルには、ひ弱い人もいた。可愛いという雰囲気そのもので、本当に声変わりをしていなかったのかも知れない。昔なつかしのアイドルを振り返るという番組で見たことがあったが、本当にひ弱という言葉が的を得ていたのだった。
だが、今の男の子というのは、ひ弱というのとはまったく違っている。本当に肌が白く、顔は可愛い系なのだろうが、全員が全員そういうわけではないのだろうが、どうして、ホストの営業を思わせると、テレビドラマなどでのホスト役を思わせて、信用ができないと思っている人も少なくないだろう。
とにかく、まずはお客の女の子にたくさん貢がせるために、相手を思い切りもち上げる。自分がまるでその子のものにでもなったかのようなスタイルだ。そうしておいて、どんどん高いものを注文させる。
ここからは、ネットニュースに載っていた手口の話なので、どこまでが本当なのか割らないが、
高いものを注文しても、
「掛けでいいから」
ということで、いわゆるツケという形で、その場は盛り上げるだけ盛り上げる、
そんなことを繰り返しているうちに、売掛金が数百万になっているというわけで、途中から男が豹変することになる。
「早く払わないと、俺の責任になってしまうんだよ」
と、すでに枕営業に切り替えたホストはそう言って、女に金を出すように迫る。
当然、そんなお金を都合できるわけもない女は、
「俺が手っ取り早く稼ぐ方法を手引きしてやる」
と言いながら、女を風俗に売り飛ばし、風俗で稼いだ金を売掛金に充てるという、よくあると言われているやり方だ。
風俗に堕ちることのない女性は、会社の経理部か何かにいて、会社の金を着服し、それがバレて(当然バレないわけはない)、そのまま会社から警察に訴えられ、
「業務上横領」
ということで、前科者になるという始末である。
もちろん、イケメンのホスト風の男性が皆そんな男だとは限らないが、紗友里もそれなりに大人なので、それくらいのことは分かっているつもりだった。
そもそも、水商売に一度は足を踏み入れた女だという自負もある。変な男には引っかからないという思いと自信が強かった。
だが、中途半端な自信過剰ほど、実は引っかかりやすいものはない。さすがに金銭的に騙されるところまではいかない。ただ、お小遣いと称して、せびられることはあっても、それはセレブの想定内のことであって、それくらいのことは、何でもないことだった。
それよりも、自分の方から与えるという快感を覚えるようになった。相手に尽くすということに目覚めたと言ってもいいだろう。
ただ、紗友里は、この男に引っかかったわけではない。確かに孝弘という男、ホストではないが、その甘いマスクで、子供の頃からまわりにちやほやされてきたおかげで、いいことも悪いことも味わってきたのか、そのテクニックのようなものが形成されているかのようだった。油断していれば、この男の術中に嵌ってしまいかねない。紗友里はそんな愚かな女ではないのは、さすが元ホステス。自覚があった。
紗友里は、彼との関係を分かって楽しんでいた。
「この男は私を愛してはいない」
という思いの元、自分も愛していないくせに、甘い言葉を浴びせるという、疑似恋愛を楽しんでいた。
つまり、気持ちがあるわけではない、肉体だけの関係だった。
そう思うと、不倫という感覚はない、こちらも疑似不倫であり、その分ドキドキという意味では半減するが、旦那を裏切っていることにはならないという意味で自分としては、悪意のない不倫ということで、ただ、楽しむだけでよかったのだ。
なるほど、この男はすぐにお金を要求してくる。最初の方は結構甘めに渡していたが、次第に渋るようになった。この男には、自分が主婦であるということは話しているが、それ以上のことはほとんど話し手いない。
「どうせ愛されていないんだ」
という思いがあるからで、なるほど、相手もいちいち聞いてこない。
「お金を少々くれるおばさん」
という意味の金づるくらいにしか思っていないのかも知れない。
それでも、肉体関係という意味では、遊びではないほどに濃厚であった。これもこの男のテクニックが、持って生まれたものなのか、そうでないとすれば、一体今までどんな女たちと付き合ってきたのか、最初から割り切って付き合っていなければ、普通であれば、メロメロにされることだろう。
こんな男なので、女は自分以外にもいることは分かっている。より取り見取りのこの男に、こんなおばさんだけで満足できるわけもないからだ、
この男のことだから、数人いる女とのベッドの中で、
「最近、金づるになるおばさんを見つけたんで、金を貢がせているところなんだ」
などと、紗友里のことを、他のオンナとの逢瀬の中での肴にしているのかも知れないと思うと、苛立ちを覚えるが、
「これは嫉妬ではない」
と思うと、すぐに苛立ちがなくなってきた。
時々、この男に抱かれる時、自分が分からなくなってしまわないのを確かめる意味でも、これくらいの感情を試してみるのもいいのかも知れないと感じた。
そういう意味では、肉体的にはある程度のめり込んでいるのかも知れないが、決して愛してはおらず、逆にこの男の性格や仕草に憎しみすら感じているかも知れないと思った紗友里は、
「どうせ、そのうちに飽きれば、こっちから捨ててやるんだ」
というくらいに考えていたので、しばらく疑似恋愛を疑似恋愛として楽しむことにした。
自分ではこれを不倫だとは思っていなかったが、相手はきっと不倫だということを意識していただろう。
そうなると、立場は明らかに自分の方が強いのだと思い込んでいるふしがある。ただ、それが、
「自分はフリーだが、相手には旦那がいる」
という意味での感情なのか、それとも、年齢差による単純な優劣管なのかのどちらかであろう。
「このイケメンの俺が、こんなおばさんに真剣になるわけないじゃないか。遊んでやっているだけだ」
というくらいに感じているのだろう。
その代償として、金銭を要求している。それくらいは当たり前のことと感じているとすれば、これは、ボランティアであり、金の要求は、甘えているだけだと思っているとすれば、この男がただのクズ男であることは明白だった。
ただ、この男のマシなところは、実際にホストではなく、チャラいところはあるが、バックに何か組織がついていたり、クスリのようなものをやっているという素振りがないことだ。
付き合い始めて、少ししてから、そのあたりを疑い出したので、すぐに別れるとなると、こちらが何かに気づいたと思われることで、却って危険だと思った。そのため、この男に、自分がまるで騙されているということを分かっていないような素振りをすることで、この男の正体を探ることにしたのだった。
だが、付き合い始めてから別に何も変わらないことから、
「この男の目的は金だけなんだ」
と思うようになった。
そうなると、いずれは、簡単に別れがくるのは分かっていた。
「金の切れ目が縁の切れ目」
というではないか。
そう思った時、紗友里の中で感じたのは、
「引導を渡すのはこの私の方からであって、決してこの男に引導など渡させはしない」
という思いだった。
しかも、ギリギリまで疑似恋愛を楽しむということを忘れたくはなかった。それは、引導を渡す時の効果がさらに大きくなるからで、肉体に溺れているからではなかった。
お金を渡すのは自分なので、主導権は自分が握っている。引導を渡すタイミングを握れるのは自分しかいないと思っていたのだった。
その思いに間違いはないが、まだまだ疑似恋愛は続くようだった。この男が今のところ本性を表す様子はなかった。紗友里の方では、次第に金も渋るようになってきた。かといってそれは最初の頃のように、言われるがままということではなくなり、少しずつ、相手にあまり深く考え込ませない程度に渋るようになったのだ。
相手がそれに本当に気付かないのか、それとも、それくらいは想定内のことなのか分からないが、お金を少々渋るようになったくらいで態度を変えるようなことは、この男にはなかった。
嫁が不倫をしているなどと、旦那は知る由もないだろう。
もし、知っていたとしても、自分だって他のオンナを抱いて、お金を渡しているかも知れないと思うと、どっちもどっちという感覚になってくる。
「しょせん、お互いにやりたいことをやっているんだ。しかも、最初に浮気したのは、あちらではないか」
と思っていた。
すでに、旦那に対しても愛情は消え失せていた。
孝弘が現れるまで、爪の先ほどだった愛情が、完全に消え失せてしまった。ひょっとすると、
「旦那とは最初から、疑似新婚を演じていたのかも知れない」
と感じたほどだった。
そんなことを思うようになって、
「私の人生って、絶えず疑似という言葉が付きまとっているんじゃないかしら? ひょっとすると、この自制だって疑似なのかも知れない」
とまで感じるようになった。
そうなると、ある程度の感覚、倫理や道徳観がマヒしてくるような気がしてきて、不倫すら悪いことではないとまで思うようになっていた。
ただ、自分の中で不倫を認めるということは、自分に対して負けを認めるようで、それは嫌だった。
孝弘という男、二十五歳という年齢であったが、この男も、紗友里が正体を明かさないことで、自分も正体を明かさない。
どちらが正体を明かさないことで得をしているのかを考えたことがあったが、普通に考えれば、配偶者のいる自分の正体がバレてしまう方が都合が悪いだろう。
そういう意味で、自分の正体を隠してきた紗友里だったが、この男は、そんな紗友里の気持ちを分かっているのか、余計なことは訊いてこなかった。
それは、
「この男も、正体がバレるのを恐れて、わざとこちらのことを聞いてこなかったのではないか?」
と思うようにもなっていた。
最初は、
「どうせ疑似恋愛なんだから、必要以上の情報があったとしても、別に何も変わりない」
と思っているのではないかと思ったが、こんなに簡単に金を渡す女の正体に興味がないというのも、少し違う気がした。
だから、彼も自分の正体がバレるのを恐れたのだと思ったが、ではこの男の正体がどこにあるのかと思い、そういう目で見ていれば、おのずと分かってくると思った。
自分がこれ以上ないというくらいに冷静に見ているので、分からないはずはない。そう思うと、ヤバいと思えばこの男の前から消えればいい。そのためには、自分を探しても分からないように何も情報を与えないようにしなければいけなかった。
もし、目の前から急に消えたとしても、この男なら、最初は少しだけ探すかも知れないが、すぐに探すことを諦めるだろう。
そして、自分の中で、紗友里との交際を黒歴史のように、記憶の奥に封印してしまうにchがいない。
ベッドの中での嘘くさい演技がそれを証明しているように思えた。
ここまでひどい感情でしかないこのクズのような男なのに、それでも疑似恋愛を続けるというのは、一体どういうことなのか、自分でもよく分かっていなかった。
「これって、惰性なのかしらね」
と、最初に思い描いていた不倫とはまったく違う感情で、
「若いツバメ」
という感じでもない。
若いツバメというと、最初はイケメンでおばさんを虜にしたつもりでも、どこか熟女の魅力に取りつかれたようになっていて、お互いに気づかぬうちに、次第に深みに嵌っていくという、ドロドロの不倫を思い浮かべるものだが、表面上はそうかも知れないが、内面は実に淡白で、割り切った関係であった。
ただ、若いツバメというのは、ワンパターンではなく、お互いに冷静で割り切った付き合いも存在するということを、紗友里は分かっていなかった。
だから、幸か不幸か、この恋愛を完全な疑似恋愛だと思うことで、最初から最後まで、遊びで通すことができるのだろうと思ったのだ。
紗友里が最初に感じた。この男に対しての、
「賞味期限」
であるが、もうとっくに切れているような気がしていた。
それなのに、お互いにどちらからともなく別れの兆候が生まれてくる様子はなかった。
「どうしてなのかしら?」
と思った。
孝弘の感情を想像してみたが、想像が困難であった。付き合い始めた時には、ウソかも知れないが、それなりに想像ができていたのに、今では想像しようとすると、この男の顔がのっぺらぼうになったかのように感じられた。
のっぺらぼうは、目も鼻も耳もなく、ただ、口の位置だけが白い歯を浮かび上がらせていて、実に気持ち悪い表情にしか思えないのだった。
「あの男にとって、私はどんな表情に写っているのだろう?」
自分の感情を押し殺しているつもりなので、なるべく、孝弘の前では表情を浮かべないようにしている。
それは甘えている時でも同じで、ただ、甘えている時は無表情であっても、それなりに甘えた表情が出てきているような気がした。
その表情は気持ちとはまったく裏腹な表情なので、いかにも薄っぺらいのだが、甘えた表情というのも、元々薄っぺらいものだけに、分かりにくいものなのではないだろうか。
最初から、お互いに会話らしい会話をしていなかったように思う。お互いのことを話していれば、それなりに会話もあったのだろうが、お互いに極秘だったことで、余計なことをいえなくなってしまったのだ。
下手に相手に聞いてしまって、
「じゃあ、あなたは?」
などということになると、とっさにウソをつくとしても思い浮かばない。
そうなると、会話は自然と凍り付いてしまうだろうから、それくらいなら、最初から何も喋らない方が無難だと言えるのではないだろうか。
紗友里だけでなく、孝弘もそう思っていることだろう。
「キツネとタヌキの化かしあい」
とは、まさにこのことに相違ない。
それなのに、紗友里は、一度旅行に二人きりで行きたいと思うようになった。
別に遠くでなくてもよかった。誰も自分たちを知らないところであれば、県内でもいいと思ったくらいで、
「ねえ、今度、一緒に温泉にでも一緒に行かないかしら?」
と話をすると、
「泊まり込みでかい? 大丈夫?」
と言われたので、
「二泊三日くらいであれば大丈夫よ。もしあなたがよければ、私の方で手配しておくこともできるわよ」
というと、
「どこか、行きたい温泉でもあるの?」
と聞かれたので、隣の県の有名温泉に行ってみたいというと、
「ああ、それはいいね。僕も賛成だよ。明日までに自分の予定を見て、連絡しよう」
ということになった。
旦那には、サークルの旅行といえば、簡単だった。むしろ、相手も自分がいない方が羽目を外せると思っているかも知れない。さすがに家を空けることはしないだろうが、帰宅時間を気にしなければ、いくらでも大丈夫だ。朝帰りさえしなければ、家政婦さんに怪しまれる心配もないだろう。
「いや、家政婦さんも、さすがに私たち夫婦のW不倫には気づいているんじゃないかしら?」
と思った。
それこそ、二時間ドラマなどでよくある設定を、そのまま当てはめればいいだけで、ここに限らず、どこのセレブな家庭には大なり小なりで存在していることであろう。
二泊三日くらいが確かにちょうどいい。長くもなければ短くもない。言い換えれば、
「怪しまれることのない、相手もありがたい期間である」
と言ってもいいだろう。
だが、不倫旅行と言っても、ずっとイチャイチャしていようとは思ってはいなかった。確かに夜はずっと一緒にいるのが楽しみではあるが、昼間は絵を描こうと思っていた。そういう意味では、
「サークルの旅行」
という言い訳もまんざらウソでもないだろう。
せっかく田舎ののどかなところに行くのだから、絵を描くという気持ちになることで、別の意味でのセレブを味わいたいという思いを抱くのも、紗友里という女の性格でもあった。
それほどの荷物になるわけでもない。二泊三日ということで、しかも、別に観光にどこかに出かけるわけでもなかった。この男は、あまり観光には興味がないようで、
「どうせなら、一日中昼間は温泉に浸かったり、ゆっくり寝ていたいくらいだ」
と言っていたこともあって、紗友里の方も絵を描きたいと思っていたので、ここだけは意見があったのだ。
「若い子にしては珍しい」
と思ったが、ここまで付き合ってきて、
「この人なら、これも不思議のないことだ」
と感じたのも事実で、どこか若いくせに、妙に落ち着いたところがあるのも分かっていたので、すぐに納得した。
昼に落ち合って、昼食をゆっくり摂ってから温泉宿に移動したが、ついた時間が中途半端だった。
三時は過ぎていたので、チェックインはできるのだが、夕飯までには、まだ何時間もあった。
とりあえず温泉に浸かって、ゆっくりしても、まだ四時過ぎくらい。日が暮れるまでには、二時間以上もあるので、
「疲れたんで、俺は少し寝るわ」
と言って、本当にすぐに眠りについてしまった男をしり目に、紗友里は散歩に出かけた。
目的は、次の日から、絵を描くのにどこがいいのか、ベストポジションを探そうということであった。
この温泉街は、山に囲まれていて、中央を少し急な川が流れているが、通常時はほとんど水が流れてこないので、静かなものだった。それでも、少し上流にいけば、森の中に入って行くようで、そこでは、釣りを楽しむ客も結構いた。
その中の一人が教えてくれたこととして、
「このさらに上流は滝になっていて、そこまでいけば、夏は本当に涼しいので、たくさん人がいるんだけど、まだ今は寒いからか、それほど人がいないので、ある意味、穴場になっているんだよ」
という話を訊いた。
以前から、滝の絵を描いてみたいと思っていたので、大いに興味をそそられ、その滝まで行ってみることにした。
まだ見えてくるわけではなかったが、ある程度まで行くと、明らかに水が何かに打ち付けるような音がしていた。
「ああ、あれが滝なんだ」
と思って、進んでみると、そこには、他の観光客もいた。
一組の男女のカップルであったが、女性はまだ二十代くらいだっただろうか。男性の方は四十は過ぎているように思えた。心なしか貫禄が感じられ、先代のイメージがあったが、この若さでそこまで感じるというのは、彼もやはりどこかの社長さんなのかも知れないと感じた。
男が紗友里に気づいたのか、軽く会釈をしてくれたが、横にいた女性も一緒に会釈をしたが、二人の様子が少し不可思議だった。
「心ここにあらずって感じだわ」
と思ったのは、会釈の時に、まったく笑顔を感じなかったからだ。
人見知りによる笑顔のなさではなかった。明らかに何かを抱えていることで、笑顔になれないその様子。何かゾッとしたものを感じたが、寒いのか、コートを着ていたが、そのうえで二人が、がっしりと抱き合っていたのだ。
これがこの物語のプロローグであることには違いないが、その時に、何か虫の知らせのようなものがあったのも事実だった。もちろん、理由もなく感じた虫の知らせはすぐに意識から外れてしまったが。それは、滝の勢いに心が奪われたからなのかも知れない。
翌日のことよりも、この時の出会いの方が紗友里には印象が深かったのは、どういう意識だったのだろうか?
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