第2話 pull the wool over eyes

俺の名前はルカ。 20際の誕生日を迎える前日、俺は気がついたら天国に来ていて、そこで知り合った神であろう少女に異世界へ転生してもらった男だ。 女みたいな外見をしているが、これでも列記とした男なのだ。

そしてその俺は今、異世界で魔王討伐するための第一歩としてレベルアップをしようと魔物探し中だ。しかし……

「ダメだ、どこに行っても魔物がどこにもいない……。 それに結構森の奥の方まで来ちゃったけど帰り道どうしよう、まぁ宿も無いわけだし街中で寝るよりは森の中で野宿した方がマシな気もするけど……」

俺は森の中に来たが魔物なんて1匹も見つけることすらできていない。 それどころか付近にいる気配すら感じず、寂しさすら感じてきた。

そんな寂しさを感じそうになっていた所だが、瞬間、転生前に少女に言われた言葉を思い出す。 そう、簡易説明だ。 ステータスが見たい時に見れるのであれば、そこからマップ開いて探知とか出来るのではないかと考える。

「ステータス画面から飛べればいいけど……。よし、物は試しだ。やってみるか!」

俺は見たいと強く願い、ステータス画面を開こうとする。

しかし、何も起こらなかった。

「気持ちが足りないかな……もう1回!」

そう言い続け、俺は何回も何回もステータス画面を開こうとした。しかし、一向に何も起こらず、声を出しても、目を瞑っても、手を前に出しても、何をしてもステータス画面なんてどこにも表示されなかった。

「どうしてだ?確かにあの時ステータス画面の開き方の説明ではこれで合ってるはずなんだけど……。 とりあえず街中に戻って聞いてみるか」

俺はレベルアップを中断し、街に戻ることにした。


「やっと戻ってこれた……」

いつの間にか森の奥に入っており、更に帰り道のことなど考えずひたすら歩き回っていたため、俺は街に戻るのに長い時間を使っていた。

「えーっと……あの人なら教えてくれそうかも!顔優しそうだし!それじゃ、あの人に聞いてみるか」

俺はその辺の人にステータス画面の開き方を聞く。

「あのーすみません。お聞きしたいことがあるんですけど……」

「おぉ、どうした?」

「あの、ステータス画面ってどうやって見るんですか?」

「ステータス?なんだそれ、俺には分からねぇな……」

おかしいぞ。この世界の住人ならステータス画面の見方くらいわかるはずだ。

俺は疑問を抱えたまま他数人に同じことを質問した。が、返ってくるのは疑問だけ。 中には俺を頭おかしい人だと言う人もいた程だ。

俺のように転生して間もない人間ならまだしも、この人数に聞いて全員そうでしたってのはまず有り得ない。 それによく考えてみれば魔物なんてどこにもいないし、勇者や魔法使いどころか冒険者って雰囲気の格好をしてる人なんてどこにもいなかったのだ。 魔物だってあれだけ探しても見つからない。

俺は転生先を間違えられたのかとも思った。

「うーん、誰に聞いてもわからないばっかりだな……。この世界の人なら基本中の基本だと思うんだけど……。さてはもしかしてあの神様、俺を転生させる場所間違えたんかな……。 まぁ考えていても仕方ない、とりあえず今の俺に出来ることをしよう」

そう思っていた時、後ろから声をかけられる。

「あのー、ちょっとすまない。さっき色んな人にステータス画面の見方を聞いていたのは君で間違いないかな?」

「あ、はい。そうですが……」

俺はその言葉に少し期待した。この人ならわかるのかもしれない、転生先を間違えたなんてそんなはずあるわけない。そう思っていた。

しかし、その希望はすぐ砕かれることとなる。

「そうか、君もか……。そうなると君も転生者で間違いないね。 少し話がしたい、ちょっとこっちに来てくれないか?」

その男は難しい顔をして俺を自分の家へと招待する。 今の話を聞く感じ、彼も転生者のようだ。

俺は彼の家の椅子に座り、そして彼もまた椅子に腰掛け話始める。

「初対面なのに急に招待してしまってすまないね」

「いえいえ、大丈夫です!ここなら落ち着いて話せますし!」

「そうか、なら良かったよ。そして本題に入るが……おそらく君は神に勇者になれ、とでも言われたんじゃないかな」

「はい、そうです。そして俺はそれを承諾しました。 で、今に至るって感じです」

俺がそう言うと、彼はまた難しい顔をする。

「やはりか……。君、すまないけど、ここから話す内容は君のとって絶望的なものになると思うけど、話しても大丈夫かい?」

そう言われた俺は疑問よりも恐怖の感情がすぐに出てきた。やはり転生先を間違えた? そもそも勇者なんて存在しない? むしろここは異世界でもなんでもない? などの色んな想像が俺の頭をよぎる。 だが、考えていても仕方ない。

「はい……お願いします」

俺は返答する。心の準備が付いているかと言われれば微妙だが、聞かない限りわからない。

「実は……」

彼は長々と話し始める。それは俺が想像していたことの斜め上を行く、もしくはそれ以上の絶望を見せつけるものだった。

彼の口から放たれた言葉を理解するのに俺は数分くらいかかっただろう。

簡潔にまとめるとこうだ。

そもそも神が言った内容は転生させること以外全部嘘で、俺は上手いこと騙されてただ転生させられただけ。それだけでは無く、そもそも俺が死んだのは不慮の事故で病気でも無く神の手によって殺されたという事、俺のような人間が複数人いる事、そしてその理由は異世界の住人を増やし満悦するというただの私欲に満ち溢れた身勝手な理由だと言う事だ。

「あいつは神の皮を被った悪魔だ。今の神になる前は、本当はこの世界には勇者や冒険者がいて、魔物やそれを統べる魔王もいて、魔法使いだって存在していた。だが、神の権限がアイツに変わってからこの世界の全てが変わった。 そしてそれが今ってわけだ……。急にこんな話して悪いな、だが、これが真実だ。どう受け止め、これからどうするかはお前さん次第だがな」

俺はただ唖然とした。それは転生する前の突然あの場所に来ていた時の感情とは全く違う、もうなにもかもを考えられない。いや、何も考えたくないという気持ちでいっぱいだ。

俺は利用された?あの話は嘘?俺はただアイツに…………

「俺は……」

俺は口を開く。 何も考えていない、思いついた訳でもない。ただ俺の口は自然と勝手に言葉を発していた。

「俺はアイツに……真相を聞きたい」

「は、はい?」

彼は先程までの真剣か声とは打って変わった情けない声を出す。まぁ、それもそうだろう。彼にとっては反撃とか復讐とか、そんな感じの答えを予想していたのだろうから。

でも俺は信じられなかった。確かに思うところはいくつもある。だがそれでもこの世界の神だぞ? 神が悪事を働くなど俺には考えられなかった。

「神がそんなことするとは信じられない。まぁあなたの言うことが信じられない訳では無い、だけど本当はどうなのかを神に聞くのが1番手っ取り早いと思うんだけど……」

俺はそう答えた。

「聞く……かー…………。」

彼はため息混じりで言う。 頭を抱え、流石に無謀だと心の中で思っているのだろう。

「そもそも相手は神だ。どこにいるのかも分からないし、そもそも行くとなったらお前はまた死なないといけないわけだし、もし死んだとしても会えるかも分からない上にこっちに戻ってこれるかどうかもわからない。流石にそれは無理だと思うのだが……」

現実的に考えたらまぁそうなのだろう。居場所すら掴めていない状態でこの決断は流石に無理がある。

「いいえ、その必要はありませんよ」

しかし、無理だと思っていたそれは彼女の声と共に打ち消されることとなった。

「私が何故あなたをここに送り込んだのか……。それを知りたいわけですね?」

突然扉の方から声が聞こえる。ふと顔を上げると、そこには転生前に見た彼女━━━━━神の姿があったのだ。

「お、お前!?何故ここにいる……」

「あなたこそ、こんな狭い家でのうのうと暮らして……落ちたものですね」

「貴様…なぜこの居場所がわかった。 そもそも俺はあの日以来お前とは関わっていないはずだ!いくらお前でも俺の居場所まで特定することなんて出来るはずがない!」

彼が神に対して反応する。 俺が聞く感じだが、この2人は面識があるように思えた。

「なぜって、それは私が神になる人間だからです。 まぁ……あなたから力を奪ってからは半分は神となっていますが。しかし、あなたも、そしてそちらのあなたもバカですよね。だって私に騙されてるだなんて考えもせずにこうなってしまうのだから」

「に、人間!?」

俺は自分が騙されたという真実よりも、彼女が神ではなく人間であることに驚いていた。半分神だと言っても彼女は人間だったのだ。

「えぇ、半分神ではありますけど」

「ちっ、こいつの言うことは本当だ。こいつはまだ人間なんだよ……」

「教えて差しあげたらどうです?私がこうなった理由と、あなたの愚かな行いについて……。まぁ私から話してあげても良いですけど」

「…………いや、俺から言う」

余裕そうな笑みを浮かべる少女に対し、彼は考えた後に自分の口から話し始める。

「それは2年前のことだ━━━━━」

そして彼は俺がここに来る前の、彼と少女の関係を話し始めた。

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【仮】勇者になろうと思ったけど予定変更して復讐者になります 蝉埜 蛻 @earth_color0012

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