第3話 まりえの世界

 桃源郷のような世界で育っている里穂とはまったく違った性格である女性が、

「もう一人の里穂」

 として生活している世界があった。

 この世界は、民主主義が体制として確立されているところであり、前章でのいわゆる、

「他の世界」

 として紹介された世界の代表的な世界であった。

 彼女の名前はまりえ、桜木まりえという。

 まりえは、大人しい性格で、学校では友達も少ないわけではないので、結構話をする友達が多いのだが、決して自分から話をする方ではなく、話しかけられるとうまく会話ができることで、まわりもまりえが、話しかけられなければ自分からは話すことはないという女の子だとは気付いていないようだった。

 趣味が読書というだけあって、いろいろな知識を持っていることで、話の内容も幅広くしかも、深く知っているので、その豊富な話題から、話し始めると結構長く話していることが多かった。

 だが、彼女は少し不思議な感性を持っている。

「私、別の世界の人と話したことがあるのy」

 という。

「別の世界というのは?」

 と聞くと、

「同じ時代の別の可能性を持った、別次元の世界のことね」

「それってパラレルワールド的な?」

 と聞かれたので。

「正確には違うんだけど、そういう感じだと思ってくれていいと思うわ」

 とまりえは言った。

「どんな話をしたの?」

「その人の世界の話なんだけど、その世界はこの世界と違って、何でもありなんだけど、それでもうまくいっているらしいのね」

 というまりえの話を訊いて友達は、

――この子、ヤバい考えを持っている――

 と感じた。

 だからと言って、まったく信じないわけではなかった。この話を夢の中の出来事だと思えば、それはそれでありではないかと思ったからである。ただ一つ気になったのは。

「夢で覚えているのは、怖い夢ばかりで、それ以外は夢から覚める時に忘れていくものなのだ」

 ということを信じている子だったからだ。

 まりえの話は決して怖い話ではない。むしろ桃源郷を夢に見たわけで、忘れてしまうには十分な気がしたからだった。

 だが、一瞬ヤバいと思ったまりえの話であったが、まったく無視をできないと感じたのは、話を訊いていて、自分にも心当たりがあったからだ。

―ーまりえは覚えているけど、私は忘れてしまっただけで、同じような夢を見ていたということなのかしら?

 と感じたが、本人は半信半疑ではあったが。実はその通りだったのだ。

 里穂の世界から、こちらの世界に入り込むことはできるが、露骨に目の前に現れてしまっては、余計に相手にショックを与えるだけで信用などしてくれるはずもない。

 夢に出るのが一番で、里穂の世界の人間には、先ほど友達が抱いたような、

「怖い夢しか意識として目が覚めてからも覚えていない」

 ということを知らなかったのだ。

 だから、何度も夢に出ているのに、一向に信じていないように見える友達を、その友達の、

「もう一人の自分」

 は、不思議でしょうがないと思っているに違いない。

 まりえの夢に出てきたのは、言うまでもなく里穂だった。

 里穂がなぜ出てきたのかというのは、まりえには分からなかったが、里穂自身も何が言いたかったのかが分かっていない。とりあえず。もう一人の自分に会いたかったというのが、本音ではないだろうか?

 まりえは、その時の里穂のことを、夢から目が覚めるにしたがって忘れていた。それはいつものことで、今回に始まったことではなかったが、そのうちに里穂のイメージが時系列に反して、次第に思い出されてくるのだった。

――こんなことってあるのかしら? 夢の中で見て一度は忘れたはずの人の記憶がよみがえってくるなんて――

 と感じていた。

 夢に出てくる里穂は、まりえにいろいろと問いかけているようだった。それは里穂がまりえの本音を知りたいと思うからで、なぜまりえがそう感じたのかというと、

「この人はもう一人の自分でありながら、まったく分からない。ここまで分からない自分が別の世界とはいいながら、存在してもいいのだろうか?」

 と感じていた。

 それは、里穂自身がまりえのことを知ろうという意識がないからだと里穂は感じたのであって、今からでも遅くないから、まりえのことを少しでも知りたいと感じたからであった。

「まりえちゃんは、大人しそうに見えるけど、相当気が強いんじゃないの?」

 と聞くと、

「ええ、そうよ。大人しく見える子の方が、案外何を考えているのか分からないところがあって、それだけに、気が強いのかも知れないわね」

 と言った。

「それは、人に自分の本性を知られたくないという思いから?」

「それもあるけど、どちらかというと、自分が不安なので、木を強く持っているというのかな? だから、自分の本性を見られたくないというところに考えが繋がっているのかも知れないわね」

 と、まりえは言った。

――この子は、自分のことを冷静に分析できる人なんだわ――

 と感じたことで、今の状況を知っていることも知らないことも聞いてみることにした。

「彼氏はいるの?」

 と聞くと、

「ええ、いるわよ。だいぶ前から付き合っている人なんだけど、やっと最近自分の中で彼に対しての不安がなくなってきたので、今は人に話せるくらいにまでなってきたわ」

「今までは内緒にしていたんだ」

「まあ、そうですね。でも、他の子だったら。ここまで彼のことを信用できるようになると、頭の中に結婚を描いているかも知れないわね。私はそこまで、まだまだ考えられないんだけどね」

 とまりえは言った。

「どうして? まだ遊びたいとか、他にもっといい人がいるかも知れないとか思っているの?」

「それもないとは言えないけど、それよりも、私が臆病だからというのが強いカモ? 何にでも保険を掛けるという感覚になっているんだけど、他の女の子から見れば、どうしてそこまでと思われるのかも知れないけど、私にとって恋愛は一度きりでもいいと思っているからなのかも知れないわ」

「どういうこと?」

「恋愛対象と結婚対象の人とは違うってよく言われるけど、その通りだと思うの。だから、結婚してしまうと、その人だけって思うじゃない? だから恋愛も一人でいいような気がするのよ」

 という話にまたしても、よく分からなかった。

「どうして、そういう考えになるの?」

「だって、たくさんの人と恋愛して、その後で結婚するでしょう? すると結構目が肥えてしまっているので、結婚相手がどんなにいい人であっても、恋愛経験が豊富であれば、途中で夫婦関係がぎくしゃくしてきた時、前に付き合った人の中に、本当は運命の人がいたんじゃないかって思わなくもない。そう思ってしまうと、後悔の念と、自分が早まってしまったのではないかという思いが交錯して、もう一度やり直したいと思うかも知れない。離婚が悪いことだとは言わないけど、そうなる可能性を少しでも排除するんだったら、変に恋愛相手を無作為に増やす必要がないように思うの」

 というではないか。

 里穂は唖然とした。

 里穂は、どちらかというと、そんなまりえの考えに近いはずだった。だが、それをまさかもう一人の自分から聞かされるとは思ってもいなかった。それを思うと、里穂は自分が考えていることをいかに整理して、まりえの話を訊けばいいのかを考えていた。

――やっぱり、まりえって、私の分身なのかも知れない――

 と、いまさらながらに感じさせる里穂だった。

「じゃあ、今誰かと付き合っているの?」

「ええ、お付き合いしている人はいるわ」

「さっきの話では、その人と結婚する意志はないけど、恋愛はこの人が最後くらいのつもりなのかしら?」

「そういうことになるわね。もしこの後お付き合いする人がいるとすれば、私は結婚相手としてしか見ていない。だから、その人が私を結婚相手と見てくれていなければ、別れるだけね」

 というのを訊いて里穂は疑問に感じた。

「結婚相手として別れた相手はカウントしないの?」

「ええ、カウントしないわ。恋愛の時も、相手にフラれたり、自分が納得する形で別れが訪れた場合は、私は恋愛相手としてカウントしないことにしているの。その存在すら消したいくらいだわ」

 と言った。

「というと、少し都合よく聞こえるんだけど。それは要するに他の人と考えが違っているだけで、あなたの中ではそれが当たり前のことだと思っているということね?」

「ええ、その通り。だから、私の中での恋愛は一人なのよ。他の人みたいに恋愛をちょっとでも付き合いった相手にカウントしてしまうと、何人になるか分からない。要するにお試し期間でも、入会したことになるかどうかというような考えに近いのかも知れないわね」

 とまりえが言ったが、

「こちらの世界では、そんな考え方が主流なの?」

 と里穂が聞きなおした。

「そんなことはないわ。これはきっと私の思い込みにすぎないと思うの。ただ同じことを言っていても、表現はニュアンスが違っているだけだと、あなたなら思うんじゃないかしら?」

 とまりえは言ったがまさにその通りだった。

「まりえさんは、どうしてそんなによく分かっているの?」

 と聞くと、

「今まであまり人と話さずに寡黙な人というのは、結構頭の中で考えがフル回転しているものだから、考えていることが柔軟なんじゃないかっていうのが、自己分析かしら? そのために、まわりの人の考えがあまりにも低俗に見えてくるという弊害もあるんだけどね」

 というのを訊くと、

「いやいや、そんなことはないと思いますよ。あなたくらいの考えを持っている人は。差別的であっても、私はいいと思うんですよ。この世界のように私利私欲に塗れた世界だったら、それくらいの意志を持っていないと、激流に飲み込まれてしまったりするんじゃないかしら?」

 ということを、里穂は言った。

「里穂さんの世界ってどんな世界なのかしらね?」

「私はこちらの世界も少しは勉強しているので、比較する感じの話になるかとは思うんですが、きっとあなたたちの世界から見れば、自由奔放な世界に見えるでしょうね。でも、それは今までの歴史に大きな違いがあるとということもあると思う。私たちの世界では、歴史は時系列に沿って、忠実に流れてきた。でもあなたたちの世界では、時代が逆行するようなことだってあったでしょう? 文化文明などはその最たる例で、せっかく時代が先に進むはずだったのに、ある人物が殺されたことによって、歴史が百年逆行したなんて話を訊いたことがあるでしょう。私もこの世界を勉強してきて、それは特に感じたことなのよ」

 と、里穂はいう。

「確かにそうかも知れない。歴史のターニングポイントの話はよく聞くんだけど、私も歴史を勉強していて感じたことね。でも、これは仕方のないことだと思ってきたけど、それは間違いだったのかしら?」

「そうじゃないわ。今の社会の考え方として、あなたの世界では、どうしようもないことなのかも知れない。歴史の限界とでもいえばいいのか、だから、あなたたちは、次元を超えることも、世界を超えることもできない。時代を超えることは私たちにもできない。それはあなたたちの考えと同じで、過去を変えると未来が変わるからよね。でも、私たちはもっと深く考えている。歴史を変えると、この世界だけではなく、別の世界にも影響を及ぼす。当たり前よね。もう一人の自分がいる別の世界なんだから。もし過去が変われば、あっちの世界には自分がいるが、こっちには存在しないということが起こってくる。時代がそれを許すかどうかね」

「というと?」

「どの時代にも絶対にもう一人の自分が存在するのは当然なのよ。だから、それは決まった歴史の中で動いているからうまくいっているんだけど、何かの歴史の歪で誰かが死んでしまうと、もう一人の自分がいる他の世界でも、その人は消えてしまうことになる。最初からいなかったという感じで綺麗に消えてくれればいいのだけど、下手をすれば、中途半端に消えてしまうこともあるでしょう。そうなると、その人は現実と夢の世界の狭間に落ち込んでしまって。抜けられなくなる。そのイメージがサルガッソと呼ばれるもので。いわゆる『宇宙の墓場』に落ち込んでしまったという感覚に陥るんでしょうね」

 というのが、里穂の見解のようだった。

「さすがに、そのあたりの話になると、壮大すぎて、すぐには何らかの結論は出てこないだろうから、これ以上考えるのは、余計なことなのかも知れないわね」

「そうね、もう一人の自分という感覚を、私以外の世界の人は誰も知らないのよ。私は知ることができて、それぞれの世界に夢という形で入り込むことができるんだけど、その中で私が一番気になったのがあなた、ありえさんなのよ」

 と、里穂は言うのだった。

「里穂さんは、どんな恋愛感情を持っているの?」

 と、今度はまりえからの質問だった。

「私の場合は、恋愛感情というのは、よく分からないんですよ。私たちの世界はこっちの世界のように、倫理などという考えは結構希薄なんです。もっと言えば、恋愛とセックスは切り離すとでもいえばいいのか、身体と心は別物のようなイメージがあります」

 と、里穂は言葉を選んで話したつもりだったが、少なからず、まりえには、その意味が分かりかねているようだった。

「どう解釈すればいいんだろう?」

 というまりえに対して、

「私たちは、性風俗も別に悪いことだという認識はないの。こっちの世界では、彼氏や旦那が性風俗のお店に行けば、怒るでしょう? 向こうではそんなことはないのよ。彼がそんな店に行ったとすれば、女の子は、自分が至らなかったんじゃないかって思うのが普通なんじゃないかな? それに向こうの世界では、男女平等というのが当たり前になっていて、当然、男の風俗があれば、女性の風俗もある、いわゆるこちらの世界でいえば、逆ソープなんていう商売だって、当たり前のことになっているのよ。それにね、向こうにはキャバクラもホストもほとんどないのよ。だって、あれは、癒されたいという気持ちと、その後のセックスを目論んでのことでしょう? 癒されるという感覚は、心身共に一緒だと思うので、身体が癒されることで、精神も癒される。キャバクラとかは、精神が癒されても肉体は癒されるわけではないでしょう? 却って悶々するくらいのもので。それを思うと、向こうのようにソープや逆ソープが世間一般の通常の会社と同じレベルの市民権を持っているわけだから、誰に白い目で見られることもなく、堂々と行けるのよね。それを思うと、こちらのような嫉妬もなければ、嫉妬に絡む犯罪もない。そんな世界なのよね」

 と、里穂は言った。

「何か、ユートピアを思わせる世界ね。言い方は悪いけど、酒池肉林が合法って感じで聞こえるわ」

「聞こえるんじゃなくって、それが当たり前の世界ということかしら」

 二人のそんな会話は、他の人が訊けば、きっと顔を背けるレベルのものであるに違いない。

「里穂さんは、たくさんの男性を知っているということなの?」

「ええ、知っているわ。友達くらいの関係になれば、皆セックスはするもの。それが友達としての証の儀式のような感覚かしら? そこで身体の相性も合えば彼氏にもなるかも知れないわね。そもそも、どうしてセックスを悪いことの代表のようになったのか、それって不思議よね。だって、セックスって、子孫を残すための重要な儀式でしょう? もちろん、それだけではないけど。でも、そんな神聖な儀式を悪いことのようにしている世界の意味が私には分からない。私たちのように、世襲を意識していない考えなのに。セックスを神聖に感じているのに、家系存続という意味まで背負わされている世界で、そのために行うセックスをどうして神聖な儀式として考えないのか、それが不思議、性犯罪が起こるからと言っているんだったら、それこそ本末転倒じゃない? 性犯罪が起こるのは、未成年者にそういう知識を植え付けないからであって、中途半端な知識、つまり学校で習うわけではない、偏った知識を先輩などから植え付けられたことで生まれてくる変な性教育の知識が犯罪を招くわけじゃない・これだから、結局、負のスパイラルを描くだけで、いい方向には決して転じることはない。だから、性犯罪がこっちの世界では蔓延していて、誰にも抑えることができないものになった。それを強引に抑えようとすると、結局……って感覚に陥ってしまうでしょうね」

 と里穂は言った。

「私もその意見に賛成なんだけど、でも、こっちの世界はもうそんな血靴は通用しないような世界になってしまっているのよね。今の里穂さんの話が完全に理想論でしかなく、まったく現実味がない。きっと共感は得られても、まわりからは、『何を戯言を言っているのよ』って言われるのがオチなんでしょうね」

 とまりえは言った。

「そう、その通りなのよ。でもね、私はどっちも極端だと思うの。私のいる世界だって、いつ何が起こるか分からない。もし、少しでも今の体勢の中で厳しくなることがあるとすれば、ちなみにその厳しいというのは、あなたたちの世界に近づく厳しさね。それがあるとすれば、きっと暴動が起きるくらいのことになるかも知れない。今まではまわりから縛られることはなく、そのため、個人の尊厳が一番だった。だから、犯罪というと、他人の個人の尊厳を壊す可能性のあることをしようとしたり、してしまうと、問答無用で罪に問われるのよ」

 と里穂はいう・

「それって、私には想像できないんだけど、何かその人の尊厳を妨げたり壊したりするという言葉が曖昧に聞こえるんだけど、そのあたりの裏付けというか、どこからが壊したことになるのかという線引きってしっかりしているのかしら?」

 とまりえが言った。

「法典に載っていることなので、問題はその解釈なのよね。だから、その解釈を巡って。いつも論争が起こっているわ」

 と里穂が言った。

「それはそうでしょうね。こっちの世界でも裁判になると、その凡例であったり、裁判官の解釈によって、いろいろな判決が起こってくる。これは、主観的に見るか、客観的に見るかで変わってくるものでもあるので、本当に難しいんじゃないかって思うわ」

「法律の解釈もそうなんだけど、問題は個人の尊厳という考え方よね。たぶん、あなたたちの世界では、裁判の前提として、公共の福祉、善良な風俗という公序良俗という考え方があって、個人の尊厳の前に、まずは社会にどれほどの影響を与えたかということが問題になるでしょう?」

 と里穂が言った。

「どういうこと?」

「例えば、誰かが殺された裁判として、殺した人や殺された人が社会的な立場としてどういう人かということで罪の重さが変わってくるということ。殺された人が政治家や芸能人などであれば、一般人が殺されるよりも、社会的影響が大きいとして罪が重くなったりするんじゃない? 逆に殺人者が有名人である場合も同じ。これは社会に与える影響を裁判が考慮している証拠よね? もっと他にもあるかど」

「もっと他というのは?」

「それは、肉親に対しての犯罪などよね。自分の親を殺したり、親が子供を殺したりすれば、罪が重くなるのも周知のことじゃなくって?」

 と里穂は言った。

「ええ、そうね。でもそれって当たり前のことなんじゃない? 相手が有名人という考えとは違うんじゃないかしら?」

 という里穂に対して、

「どうしてなの? だって、相手は近親者なのよ。家族が相手なら、罪が重くなって当然ではないのかしら?」

 とまりえは答えたが。

「あなたは私の言っていることを反復して、疑問を投げかけているだけよね。つまり、老理的な回答が頭の中にないということよね?」

 と言われて。まりえは、ぐうの音も出なかった。

「そうなのよ。この世界は家族や血の繋がりというものに、私たちから見れば異常なほど固執している。どうしてなの? そんなに血の繋がりが濃いと思っているの? だったら、どうして、家族で殺し合うようなことが起こるの? 私たちの世界では、この世界のように家族を特別扱いしない。家族と言っても、血がつながっている他人でしかないのよ。でも、殺人なんてほとんど発生しない。どうしてなんでしょうね?」

 と、里穂もその理由は分からないようだが、少なくとも、こちらの世界の家族の繋がりという発想には、まったく想像もつかないようであった。

「確かに私も親に対してはあまり他の家族ほど感じるものがあるわけではないけど、さっくの質問に何も疑問は感じなかったわ。それだけこの世界の常識を常識として思い込まされているということなのかしら?」

 とまりえは言った。

「そうね。思い込まされるというよりも、他の世界を知らないということで、この世界にあることがすべてだと思っていることが原因なんでしょうね。それは、他の世界にも言えることだけど」

 と里穂は言った。

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