予定

家をなくした俺と葉由奈は今、家が直るまで連盟が用意してくれたマンションで生活している。そしてあのオーバーフローで失った配信用のドローンも買い直してある。これで何時でも配信を再会出来る。


「…そういえば今どれ位登録者増えてるんだ?」


オーバーフローが起きてから1週間、俺はまともに配信出来ていなかった。だから自分の配信ページも開くことはなかった。


「どれどれ…」


俺は配信アプリを開き自分のチャンネルを確認した。


「ん?」


…おかしいな。自分のチャンネルが壊れてしまったのだろうか?登録者数が200万人を超えている。


「俺疲れてるのか?」


そう思い声を上げる。


「おーい。葉由奈。ちょっと来てくれ」


そう言うと葉由奈がやってきた。


「何?お兄ちゃん」

「いや、ちょっとこの数字なんだが…いくつに見える?」


俺がそう言うと葉由奈は俺の持っているスマホに顔を近づける。そして数秒後。


「…200万に見えるよ?」

「やっぱり?」

「うん」


ほう。200万…200万…


「はあぁぁぁぁぁ?!」


俺は思わず声を張り上げてしまう。


「うわっ!お、お兄ちゃん?どうしたの急に大声出して…」

「ど、どうしたもこうしたもあるか!俺のチャンネル登録者数が200万人超えたんだよ!」

「……ええぇぇぇぇぇえええ!!??!!?」


そう聞いた葉由奈も俺と同じように声を張り上げる。


「お、おち、落ち着け…」

「そ、そうだね…」


1度葉由奈と自分を落ち着かせる。つかの間の沈黙が訪れる。


「「えええぇぇぇぇぇええ?!?!!」」


だがやはり驚きを抑えることは出来なかった。今度は2人同時に叫んでしまう。


ひとしきり驚いた俺たちはようやく落ち着きを取り戻して来ていた。


「お、お兄ちゃん!凄いよ!」

「あ、あぁ。自分自身でも信じられないからな…」


だが実際に俺のチャンネルの登録者数は200万人と表示されている。


驚きが落ち着いてきた今、今度は別の感情が湧き上がってくる。それが喜びだ。俺は今とても嬉しいんだ。


最初はみんなにダンジョンを攻略していく様子を楽しんで貰いたいと思って始めた活動だった。でも配信を続けていく中で画面の向こうのみんなとふざけあったり俺の配信に反応があったりして楽しくなってきたんだ。


登録者数200万人という膨大な数に至った今、俺はもっとたくさんの人に俺の配信を楽しんでもらいたい。


「…よし!明日はダンジョンに潜るぞ!」


久しぶりの配信だ。今からワクワクしている。


「……」


そんな俺をじーっと見つめている存在に気がついた。


「は、葉由奈?どうしたんだ?」


1人で舞い上がっていた俺を葉由奈が無言で見つめていた。


「ねぇ、お兄ちゃん。私との約束覚えてるよね?」


その言葉にはどこか圧があるような気がした。


「も、もちろん覚えてるよ」

「私も行くからね。絶対」


そんな葉由奈の言葉に俺は渋々頷くのだった。


正直言うと葉由奈をダンジョンに連れて行きたくはない。葉由奈は1度…もう二度とあんな思いはしたくない。だからダンジョンなんて危険な場所には連れて行きたくない。行きたくないのだが…


「やった!」


葉由奈は嬉しそうに笑っていた。


きっと何を言っても着いてくると言って聞かないんだろうな。分かっている。葉由奈は頑固だ。こうなったら俺も腹を括るしかない。


「葉由奈もお兄ちゃんとの約束を破るなよ?」


俺より前に出るな。1度でも葉由奈がこの約束を破ったら俺は二度と葉由奈をダンジョンには連れていかない。これは絶対にだ。


「分かってるよ!明日が楽しみだな〜♪」


本当に分かっているのか妹よ…俺は心配になりながらご機嫌な葉由奈を見つめていた。



【あとかき】


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