第33話 大望

 ザイドが懲りずに語る。


「そんなつれなくするなよ、お嬢ちゃん。

俺には、夢があるんだ。

 貧しい村が嫌で、俺は、財宝を探しに世界中を回った。

なんでかって?豊かになって、貧しい村を豊かにするためさ。

 村の連中は、俺を大嘘つきって馬鹿にする。それでも俺は、富を手にして、村に帰るのが夢なのさ。

 そして、俺は、運良く海底からアスタロトを引き上げて、仕事の報酬として富を約束してもらった。

 どっちにせよ、人類は滅びる。だったら、大望を持って、夢を見て死にたいのさ、俺は」


 良い話、なのかもしれない。俺は、そう思ってしまった。でも、スピカはそう思わなかったみたいだ。

 スピカが怒気で空気を歪ませる。目を赤く光らせて、右腕に力を込めて構える。エネルギーが空気中に漏れ出して、線香花火みたいに爆ぜている。膨大なエネルギーを全て一撃に込める、天才スピカの真骨頂。

 まずい、これは魔法より危険な....

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る