二話・佐竹の怪談
「
写真なんかを見ても中々勢いあってねえ、確かに華厳というに相応しいなという感じなんだが、ここってのはちょいと自殺の名所として有名でねえ。何人も崖から落ちてんだ。怖いら?(今のところ観光案内のため、全く怖くない)
華厳の滝ってのは落ちやすいから自殺の名所になったってわけじゃねえんだよ。……一九〇三年だからつまり百二十年も前に、藤村操っていうやつが飛び込んでから名所になったんだ。
と、ここまでは
三年前、だからまあコロナの全盛期かな。自殺したある男子高校生についてだ。×高生徒の話だよ。(前座から話が飛びすぎである)これのどこが前座と関係あるのかって? まあまあ、どうどう、大人しく聴いてくれ。
こいつは……
そんな木下だが、コロナ禍になると、どこかおかしくなっちまった。SNSなんかに、男の幽霊が見えるとかなんとか、自分は宇宙人だとさえ言い始めたんだ。五月ごろになると、コロナ禍とはいえ登校が始まったもんだけども、久しぶりに見た木下の
そうして授業中はアンニュイな感じで窓をずっと眺めている。教師が何回も注意したんだが、いくらやっても治らない。体調が悪いのかと尋ねると、カラスかスナックのママみたいなガラガラ声でいいえと答える。その間も教師の方を向かない。怒った教師が、なんだその態度は! と彼の
木下は奇妙なやつと仲良くなってしまった。名を
その騒ぎの翌日、いじめの主犯格は首を吊っていたんだ。自殺だとさ。遺書の内容はそのまま『巌頭之感』の文なんだ。(前座と繋がる要素が急である。物語ならば
登校して来た木下の手には、破ってゴミ箱に入れたはずのあのノートがしっかり握られてるんだ。で、あいつは昨日と打って変わってずっとニヤニヤしている。いじめっこだって人望ぐらいある。主犯格が死んだのは木下のせいであるのも、なにやら超常的だが簡単に推測できる。
こんな
二人は病院に救急搬送され、何針だかわからないけど
もう一人の渦中の人、木下は生きているんだけど、パラノイアみたいな感じになってね。もう、ドッペルゲンガーが隣にいるだとか、藤村操の霊が後ろに憑いているだとか、悪魔が憑いたとか、急に聖書の一節をそらんじるだとか、もう、おかしくなってんだ。(
それどころかね、コロナにも
さあどこに行ったと思って色々なところを探すんだが、中々どこにもいない。まさかと思って華厳の滝を調べると…… ああ華厳の滝ってのは死体の回収やらがクソめんどいんだ、真っ先に調べるってわけにもいかないよ。木下の死体があるんだ。服は白い患者衣のまま、裸足。どうにも車や電車で来たわけでも、歩いて来たわけでもないっていうんだ。下手すりゃ殺人事件誘拐事件、×高暴動案件でもあるし、警察も総力上げて調べるんだけども、どうやってここまで来たのか、それさえわからない。いつ死んだのかも、わからないんだ。ただそこに死体があったことだけしかわからない…… ただ崖の下の死体は、あのノートを持っていた……」
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