第2話 無音は薄暗さを期待させる

お互いの顔はよく見えない、ただ存在は分かる、そんな暗さ。弾む心臓。

隣に君がいる。


チケット二枚とありったけの勇気を握りしめて、いざ行かん!!

「優香さん!!僕とプラネタリウムに行ってくれませんか!?」

語尾が気持ち悪いぐらいに上がってしまった、オペラ歌えるて。

「えーと…どちらs」

「勇気!!僕の名前は勇気」

苗字は言わん。名前で呼んでほしいからだっ。本音を言えばゆーくんと呼んでほしいっ。YUUKAとYUUKI、違うのはAとI、そしてそれを繋げると…

愛!!

これは運命!!結ばれるのは必然!!

…だけど不安だから短冊にも書いておいた。笹が来て一番乗りに吊るした。織姫!!彦星!!俺の願い聞いてくれるよな!?

「…分かった。勇気くん。行きましょう。楽しみ、プラネタリu」


こうして今に至る!!そうここはプラネタリウム!!調子乗ってカッコつけたがエッチな雰囲気はまるでない!!残念ではない…からな!!冗談はさておき、僕は本当に満足しているんだ。これ以上の関係になることを願うのが怖いのかもしれないけど。

何はともかく隣には君がいるんだから。星の何倍にも輝く君を見ようと、僕は横を向いた。


「えっ?ゆーちゃん?」


口にした後にしまったと気づいた。妄想の中、恋人の仲での愛称を言ってしまうなんてバカの極みだ。

だけどそうせざるを得なかった。詰め寄りがたい疑問と労りたいという欲求が、君の横顔を見ると溢れた。

ゆーちゃん泣いてるんだ。星を見ながら泣いてるんだ。

僕は君の手を強く握った。

この薄暗い宇宙せかいで君の存在を確かめたかった、と言えば聞こえはいいのかな。

君は驚いた顔でこちらを見る。見開かれた目から涙が落ちていくのも気づいていないみたいだ。

「勇気くんどうしたn」

「ゆーちゃん泣かないで」

そう言ったら君はさらに目を大きく開いて、涙をこぼした。

「ゆーちゃん僕がついてるから」

僕は君の体を強く包み込んだ。

この薄暗い宇宙せかいで僕の存在を確かめさせたかった、と言えば聞こえはいいのかな。

「ゆーちゃんのことが好きだ」


プラネタリウムは太陽が上り、幕が下りる。辺りが明るくなると君と僕はどちらからでもなく体を離し、席に戻った。


「考えさせて」


薄暗い、よく分からない、それが宇宙せかいの良さなのかもしれない。

隣に居続けることの言い訳をみんな求めているのかもしれない。


頬に残る涙の跡と耳に残る静けさと短冊に残る願いが僕の心にどうしようもない期待を残した。

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