第15話 質問あるー? てかみんな生きてるー?
「あと、何かいうことあったっけ?」
「おそらくないと思います」
「なら、次、質問以いこう! あたいの気がむいたやつに答えてくね」
「運ですので妬みあい、恨みあいはなしですよ」
コメント欄から「了解!」「OK」などなどいい返事が聞こえてくる。
「お! みんないい子だ。私がハグしてあげる」
ナギが聞き捨てならないことを言っている。これは許せない。
「ちょっと! 浮気はダメです。許しません。これは召使いとしてではなく恋人として許しません」
ナギが視聴者に渡そうとしたハグを私が受け取る。
「ごめんごめん。視聴者のみんな、ルルがこう言ってるから許してね。沢山質問読むから、ね?」
視聴者の皆さんも許してくれたようだ。
「じゃあ、読んでくよー! 一つ目は、二人の好きな食べ物は何んですか?」
「一つ目にちょうどいい質問ですね」
「そうだね! あたいはルルの作る料理が全部好きだけど、特にポトフが大好き。前の配信の時にも作ってもらったからこの配信終わったら見てみて!」
この子はなんて嬉しいことを言ってくれるのだろう。今すぐ食べてしまいたいくらいかわいい。
「食べ物なら私はムニエルが好きですね。一番美味しいのはナギですけれど」
「ちょっとルル!」
あら。口が滑ってしまった。
コメント欄では私が
「ごめんなさいね。だってナギがこんなにもかわいいのですもの。そしてナギがどこの馬の骨とも知らない相手に向かってハグをしようとしたのですから、仕方ないですよね」
「ご、ごめんよ! ルル! ごめんって」
コメント欄から土下座ムーブが。土下座程度で私の嫉妬心がおさまるわけないのに。それをナギもわかっているだろうに。
「ごめんなさい、ルル」
ナギは美しいフォームでスライディング土下座を決めた。
それこそ、コメント欄から感嘆の声が上がるほどには。
「許さない」
私はカメラを手で塞ぎ、ナギの頭を蹴李飛ばした。
配信画面には私の手しか写っていない。
「いで! いたいよ!」
「あと4回。セーフワード使用禁止」
「え! ちょ! ぐぇ!」
「あと3回」
「いたい! 痛いって!」
「あと2回」
「ごめん! ごめんって」
「あと1回」
「このたびは本当に申し訳ございま、いったい! 痛ーい!」
おそらく視聴者の方は困惑しているだろう。だが、仕方ない。ナギのハグは私だけのものだ。あの日、捨てられていた私を優しく抱きしめてくれたハグは私のものだ。誰にも渡さない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます