第14話 あれ、なんか人多くない?
あれからしばらく経って、金曜日の夜。
2回目の配信を始めることになった。だが。
「なんか待機組いるよ」
「きっとフウカのおかげだね! あたいたちのことを知りたい人がこんなにいるなんて、なんだか不思議な気分だよ」
緊張する。手が汗でベタつく。怖い。
ナギは私の心を知ってか知らずか手を握ってくる。
「あたいら新米配信者、ミスってかわいがってもらう時期。一緒に頑張ろうね、ルル」
「そうだね」
そうだ。まだ配信2回目。ただの新米。大丈夫。
手汗が引いてきた。ナギの言葉の力は大したものだ。
「配信、始めようか」
「うん。やってみましょう!」
ナギが開始ボタンをクリックした。
「どうも、こんばんは! 天才探索者のナギです!」
「その召使い、ルルです。どうぞよろしくお願いします」
家に作った撮影部屋。そこのソファーに座ってカメラに向かって話す。まだ慣れないが、いつかはこれが日常になるのだろう。
「おー、みなさんこんにちは! コメントいっぱいありがとうね」
ナギがそういうので視聴者数を確認すると……293人。なかなかな数だ。
「た、たくさん視聴者さんがいて緊張します」
そういいながら
横目でコメントを見れば「てぇてぇ」「目の保養」などなど喜びの声が見受けられる。成功だ。
「大丈夫だよ! 何も怖がることはない。なんたってあたい、天才探索者のナギ様がついてるんだからね」
そういってナギが
コメントが大いに盛り上がったところで本日の予定の発表だ。
「今日の雑談枠の予定はこちら!」
「まずは自己紹介と私たちの関係についてお話しします。その後、ちょっとだけ質問を受けて、最後にコラボ配信のお話をします」
画面に本日の予定を表示する。
──配信画面──
《本日の配信予定》
①自己紹介&関係性紹介!
②質問受けるよ!
③コラボ配信について!
「まずは自己紹介から! あたいはナギ。いわゆる『ノルマ破り』です! 持ち武器はなし。己の拳を信じて突き進むよ! あ、編集も基本私がやってるよー」
コメント欄がざわつく。こんな小娘がノルマ破りなんて聞いたらそれは驚くだろう。当たり前の反応だ。
でもなんだか少しほこらしい。
「そして私がルルです。同じく『ノルマ破り』で持ち武器は包丁。趣味はダンジョン食材の調理で、私は家事担当です」
コメント欄のざわめきが大きくなる。ノルマ破り×2、なんて珍しすぎるからだろう。仕方ない。
「ここまでOK? みんなついてきてるー?」
コメントでは脳がショートしたやら、顔面と中身の差で風邪ひいたやら阿鼻叫喚だ。
でもマイペースなナギ。待つことはない。
「ダメそうだけど次行くよー」
「私たちの関係というのは、ご主人様と召使いです。大まかに説明すると、私が両親にしてられ、さまよっているところをナギに拾われ雇われたのです」
ダンジョンが出来てからそこで資源を集めさせるために中学生の労働が認められた。もちろんなんらかの形で学校などの教育を受けることが前提条件だが、それさえ守れば労働できるようになったのだ。
「住み込みの専属メイドってわけ。そこから一緒に暮らして恋人にもなったんだー」
改めて言われたらなんだか照れる。コメント欄はいきなり明かされた重大事実に酔ってしまったみたいだ。
車酔いはしんどいが、情報酔いもにた感じなのだろうか。
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