第11話 お泊まりパーティーだよ!

 フウカに先に言ってもらって、めんつゆを買い帰宅するとソファーで親しげに話す二人がいた。

 ナギがフウカの話に目を輝かせているのが、ちょっと気になる。


「ただいま。すぐ夕飯作るね」

「おかえりー!」

「お邪魔してまーす!」


 元気な二人のためにもはやく夕飯を準備しなければ。

 買ってきたものを冷蔵庫にしまう。そうめんを茹でつつ、めんつゆを薄める。

 ダンジョンで採ってきたトマトは8つに切って皿にのせる。


 そして明日の朝ご飯はんの仕込みもする。

 卵をとぎ、パレットに注いで黄色い海を作る。

 そこへすっと食パンの浜辺をつけ、冷蔵庫で待機してもらう。


 茹であがったそうめんを冷水で冷まし、氷とともにガラスの器に盛り付ける。めんつゆとそうめんを【想いのオボン】にのせ、食べる二人を思ってお祈りする。


(美味しくなあれ)


 そうめんが水色の光に包まれる。

 どうやら冷やし足りなかったらしい。そうめんを冷やしてくれたオボンに感謝である。


「できたよー」


 夕飯を運びながら二人に声をかける。


「あ、ルル! 今日はこっちに運んできて」


 ナギが指さすのはソファの前にある机。もう動きたくないらしい。

 普段なら机で食べるよう説得するが、ナギは昨日からずっと頑張っていた。今日くらいいいだろう。


「あ、ルル。手伝うよ」

「大丈夫。これは私の仕事だから」

「でも……」

「召使いの仕事は取るもんじゃないよ」

「そういうもの、なのか」


 フウカの気持ちは嬉しいが、私はナギの召使いなのである。

 ナギのために尽くし、ナギを幸せにする。それが私の仕事であり、使命なのだ。

 周りからはママゴトやらお遊びやらと言われるが私とナギには絶対的な主従関係があるのだ。

 私とナギは太い鎖で繋がれているのだ。

 触れようものならすぐさま燃え尽きてしまうような強固な鎖で。


「ありがとうね、ルル」

「どうも」


 誰もその関係を見抜くことができないけれど。


「いただきます!」


 三人で小さな机を囲って大皿にあるそうめんを食べる。

 いつもは二人だけなので一人増えただけだがかなり賑やかに感じる。


「美味しい! 茹で時間も冷たさも完璧じゃん」


 ナギはいつもどうりに褒めてくれる。

 フウカは無言で勢いよくそうめんをかき込んでいる。大皿のそうめんがなくなる前に自分の分を取り分けて食べる。


「いつもどうり。大丈夫だ」


 ナギと同じ条件で食べて、ようやく安心できる。

 ほっと息を吐き出してフウカを見ると気持ちいいくらい綺麗に大皿のそうめんを食べ尽くしていた。

 誘ってよかった。

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