第7話 ポトフ作りますよ!

「はい到着!」


 元いた場所に戻ってきた。倒した【ニンジン】もほとんど残っていない。


「ポトフはやく作って!」

「はいはい。ちょっと待っててくださいね」

「はーい。あ、なら戦闘用の包丁貸して! 今の間にあたいが研いてあげる」


 ナギはそういうとすぐに包丁を掴んで持っていってしまった。


「自由ですね。そういうところが好きなんですけどね」


 どこかに行ってしまったナギが気になるが彼女ならなんとでもできる。

 とりあえず大量のポトフを作ることにした。


「まずは、エプロンをかえますね」


 白いエプロンにトマトの汁がつくとなかなかにバイオレンスな状態だ。

 荷物の中からかえのエプロンを取り出し、さっさと着替える。


「では気を取り直して……ポトフを作りますよ」

「まずは今回の食材を水で洗います」


 ナギが野菜を採っている間に水を張っておいた桶で食材を洗う。


「あ、そうそう。私とナギはノルマクリアの資格を持ってますけど、まだ未取得の人はダンジョンの食材食べちゃ駄目みたいですよ! ちゃんとダンジョンの入り口にある換金所に行って、お金にしてくださいね? 約束ですよ!」


 もし、この動画をみてノルマ取得者が同じことをしたら大変なので警告する。

 もちろん私はノルマをクリアしている。

 ナギに拾われてから、二ヶ月ほど召使いとして鍛えられ、その後一週間くらいかけてほぼ徹夜でダンジョンを巡ってクリアしたのは懐かしい。


「洗えたら、食べやすいように切ってお鍋に入れます」


 今回は大量に作るのでにんじんの皮をむくのはやめておく。むかなくても美味しいし。

 でもジャガイモはきちんとむく。芽と一緒で危ないという噂を聞いた。


「全部終わったら水を入れて、コンソメも入れて、火をつけます」


 つまみを回して火をつける。

 カセットコンロは非常に便利だ。発明者に感謝。


「しばらく煮たら、ソーセージ入れてもうちょい煮ます」


 ここまでは普通のポトフ。


「ここまでで一応完成です。よっこらせ」


 鍋を【想いのオボン】に乗せる。


「最後におまじないをします。簡単ですよ! 食べる相手を思って『美味しくなーれ!』って心の中で唱えるだけです!」


 大切なのは相手ナギを思う心。

 私は心の中で念じた。


(美味しくなーれ!)


 鍋が白く光った。

 これは多分五味のうちの旨味だ。野菜多めだったからだろう。


「これで完成です! 皆さんも作ってみてくださいよ!」


 カメラドローンに手を振る。

 反対の手でリモコンを操作して包丁を研いでいるであろうナギの方にカメラを飛ばす。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る