第5話 戦闘じゃオラァ!
「もう、どうして今来るのです?」
私は今非常にイライラしている。
なぜならせっかくナギにもらった調理用包丁を研いでいたら、【ニンジン】ごときに邪魔されたのだ。非常に腹が立つ。
ナギの声が連絡用のスマホから聞こえる。カメラが来るらしい。
だが答える暇はない。
鞄から戦闘用包丁を取り出し、さっと距離をとる。
『あ、カメラきた!? ちょっと今軽いピンチです。【ニンジン】に襲われてます」
【ニンジン】が葉を振り回して威嚇してくる。ちょっぴり怖い。
【ニンジン】が大きく体を振り回す。私はひょいと飛んで避けた。
「うぅ、はやくナギきてくださいよ!」
巨大な魔物は怖い。戦うのも好きでない。
だが、ナギは多分しばらく来れない。ならば、戦うしかないか。
「ああ、もう。
大丈夫。私には、ナギにもらった包丁がある。
ちょっぴり怖いけど、戦える。
「かかってこいよ!」
「オリャア! ルルの食事になりやがれ! この魔物野郎が!」
【ニンジン】を包丁で切り付ける。
何度も。何度も。何度も。
離乳食のようにボロボロになった頃、ようやくソレが死んでいることに気がついた。
「終わった……終わりましたわ」
非常に疲れた。
足から力が抜けて、座り込む私。よくとがれた包丁が地面に刺さる。
それを見つけたナギが走ってくる。癒される。
「ルル、大丈夫?」
「大丈夫。ちょっと疲れちゃったけど、お昼は作れるわ」
ナギの手を借りて立ち上がる。少しくらっとしたが、問題ない。
「これ、どうする?」
ナギが指さしたのはドロドロになった【ニンジン】だ。
「放っておけば勝手に吸収晒されますから、大丈夫ですよ。それより、ナギは動きたりないって顔してますね?」
ナギのほおをつまんでクルクルと回す。柔らかい。
手を離すとムッと怒った顔になる。
「ちょっと! 何するのよ……もう」
「戦いたいのは本当でしょう?」
「確かにあたいは今、戦闘の気分だよ」
しっかり顔に出ている。本当に可愛い。
私は包丁を拾った。
「ほら、行きましょう? まだまだ魔物がたくさんいるでしょうから、討伐に行きましょう?」
「……ポトフおかわり何杯?」
「20」
「了解。あたいに任せな」
また彼女が走り出してしまう。今度は頑張って彼女のすぐ後ろを追いかける。といっても彼女の全速力には追いつけないので多少手加減して暮れてるみたいだけれど。
私たちは先ほどの死骸を飛び越え、ナギが集めていた野菜をよけ、さらに奥へと進んだ。
「お、今度は【トマト】の大群がきたよ」
「【トマト】、ですか……」
戦闘開始だ。
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