第4話 初めての視聴者、の目線
──視聴者画面──
『今日はポトフ〜♪ 今日はポトフ〜♪ ルルの作ったポトフ〜♪』
画面の先にいるのはものすごい勢いでキャベツとじゃがいも、にんじん、を集める少女だ。
腰まである長髪は桃色。くすんだピンクのサロペットと白のTシャツを着ている。
すごく可愛い。
『あ、視聴者さん来てる! ありがとうございます! ちょっと今ね、彼女がポトフ作ってくれるらしいから、その材料集めてるの』
食事の材料集めとはどういう事だろう。
普通はダンジョンの素材は使えないはず。まさか。
よく目を凝らすと肩紐についているピンバッチはノルマ達成者のものだ。
「これ、場所特定して会いに行ったらワンチャン素材分けてもらえるんじゃね?」
頭ではわかっている。一応百合配信、つまり俺がいくと百合に挟まる男になる。
つまり殺される、と。
ガールズラブが好きな人間はそこに挟まる男が大嫌いらしいのだ。それゆえ、触れれば殺されると言われている。
だがニート歴10年を超えた俺は死んでも困る人間などほとんどいない。
ここは、生きてノルマ達成からの億万長者ルートへ行くか、百合豚どもに殺されて親の扶養から外れるか。
どちらでも良い。やるしかないな。
『よーし、これくらいで良いかな』
画面では少女が山盛りのキャベツ・にんじん・じゃがいもをみて満足そうに頷いている。見始めたころの10倍はある。
「さすがに、この短時間でその量はないだろ」
みていることがバレたくないのでコメントこそしないがこれは、当たりかもしれない。
『これを私は運ぶんだけど、その間、みてても面白くないだろうからルルの方に切り替えるよ!』
初配信でなかなかハイレベルなことをしているなぁ。
『おーい、ルル! ルル! あれ、返事がない。まあ、いっか。飛ばすねー、バイバイ』
カメラが切り替わるとそこでは白髪の少女が巨大な包丁片手に野菜と戦っていた。
比喩ではない。野菜系ダンジョンでは野菜の魔物が出る。
今は少女が肩ほどまでの髪を揺らしながらニンジンと戦っている。
『あ、カメラきた!? ちょっと今軽いピンチです。ニンジンに襲われてます』
冷静に状況説明する彼女がルルか。
真っ黒のショートパンツとTシャツ。そして真っ白なエプロン姿で戦っている。
『うぅ、はやくナギきてくださいよ!』
ニンジンの体を振り回す攻撃をかわして嘆く。
戦闘は苦手なのだろうか?
しばらくナギはこなさそうだが死なないだろうか?
少々心配になる。
俺は友人と比べてたいしてフォロワーのいないSNSで、一応宣伝しておいた。
──某SNS──
[百合速報!]
百合カップル二人がダンジョン配信中! 白髪の美少女がニンジンに襲われているらしい!
↓配信サイトはこちらから↓
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます