第3話 誰もみてないとか気にしない!

「どう? 美味しい?」


 食パンをスープに浸して食べたナギに聞く。

 ちなみにこの食パンを焼くとナギは怒る。


「とっても美味しい! 色も綺麗だし最高! これであたい、準備頑張れるな」

「それは良かった」


 それからは大変だった。

 私は配信用のアカウントを作成、SNSアカウントも作り、宣伝を進めた。同時に進行予定表も作成した。

 その間に彼女が配信の画面を作成。

 コメントは勿論、配信の予定と今どれをしているのか、集めた素材はどれくらいかなどを表示できるようにしている。

 さらに彼女は三つのドローンの追従に関する設定と、配信時の切り替え用リモコンまで作ってしまった。

 気づけば夜の九時。軽く軽食を取り、シャワーを浴びて、二人で寝た。

 ナギの体温が温かく、緊張もほぐれ、よく眠れた。


 そしていよいよ始まる初配信。連絡用にスマホの電話をつけ、ダンジョンの入口で、最後の告知をしてから、スタートボタンを押す。


「おはよう! あたいは天才系探索者ナギ!」

「おはようございます! その召使いルルです」


 視聴者ゼロの中、カメラに向かって話す。なかなかきついな、これ。


「今日は食物系ダンジョンに潜っていくよ〜!」

「いぇーい!」


 横目でナギを見ると、普通に楽しそうにしている。誰も見ていないのに。

 何か策でもあるのだろうか?


「まずは、予定をどん!」




──配信画面──


《本日の配信予定》

①野菜を集める!

②モンスター倒す!

③料理する!




 可愛いピンク色で彩られた予定表が表示された。

 我ながら可愛くできたと思う。

 ナギにも「ルル天才!」って褒められたし。


「じゃあまずは野菜集め! 行ってみよー」

「おー!」


 私たちはダンジョンへと潜った。

 食物系のダンジョンにも色々種類があるが今回は野菜らしい。当たりだな。


「おおっと!  ここに何か生えてるじゃないか! ルル、これはなんの野菜?」

「キャベツですね。今日のお昼はナギの大好物のポトフにしましょうか?」


 ちゃんとスープの素やら肉やら魚やらある程度の食材を保冷可能なリュックサックに入れて持ってきている私はナギに提案する。


「ほんと! あたい、ルルの作るポトフ大好き!」


 ナギが抱きついてくる。可愛い。

 頭を撫でる。サラサラの桃色の長髪が心地よい。

 予定表を


「なら、にんじんとじゃがいも探してきてくれますか?」

「わかった! たくさん採ってくるね」


 そう言ってナギは走りだしてしまった。

 こうなったら追いつけない。

 100メートル12秒という異常な速さを持つ彼女に追いつける人間などいない。

 彼女を追いかけるのは撮影ドローン2台に任せて、私は自分用のドローンと共に食事の準備をする。


 その時、お一人様視聴者がやってきた。

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