異界へと誘う「連作」 境界としての「祭り」
- ★★★ Excellent!!!
夏祭り・花火という、ともすれば類型化しやすい素材に敢えて挑み、独自の境地を「連作」であることを十全に生かし切り拓かれているようです。
短歌として自然な表現を用いながら、緻密な計算がおそらくあり、境界から見え隠れする異界の闇にひきこまれるような魅力を感じます。
日常が異界となる、境界としての「祭り」の原風景ー子どもの頃誰しもが感じた境界の外の「闇」への畏怖が、重層的に詠まれています。
屋台のおいそうな食べ物、華やかな花火の思い出の「向こう側」、それぞれの必ずしも明るいものだけではない夏の追憶を重ねずにはいられない、優れた連作だと思います。