第31話

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 七月に入ってすぐ、オールから確認の連絡が入った。彼は「正装で来るなよ。気楽な格好で来てくれ」とそれまでも何度か伝えていた。その念入りな様子に、彼がよほどの計画を練っているに違いないと、ローネやジャン、ティモといった他にも招待されている人たちの間で度々話題に上がるようになっていた。

 そのオールとソフィアの結婚式まであと一週間と迫ったその日、出社してすぐに書類が次々と舞い込んできたため、僕たちは忙しなく書類を捌いていた。お昼近くになってようやく一段落した時、同じように一息付けたティモがイェンスと僕に話しかけてきた。

「聞いたかい? ケンがオールに結婚式の前に男だけでお祝いをしようと提案したら、オールが『俺はソフィアと一緒に参加したいんだ』と言って断ったそうだ」

 ティモはそう言うと朗らかに笑った。オールらしい返答だとイェンスと話し合っているうちに、ジャンが出先から笑顔で戻って来る。その弾けるような笑顔を推察するに、どうやら彼は出先でベアトリスとばったり会ったらしかった。

「さっき偶然会ってさ。せっかくだから、今日の昼は彼女と一緒に食べに行くことにした」

 ジャンの言葉にティモはにやついた表情で返した。

「お前たち、すっかりアツアツだな。今日も夜、ベアトリスとデートだって言っていたじゃないか」

「そりゃ、彼女と一緒にいればマジで楽しいからな。来週の土曜日、オールの結婚式だろう? オールの許可を得て、彼女を一緒に誘ったんだけど、あいにく彼女の都合がつかなくてさ。なんでも彼女の兄も今年の十月に結婚するとかで、来週はまるまる休みをもらって地方国にある実家に帰るそうなんだ。そこで彼女の兄の婚約者と顔合わせをするらしい。それでも日曜日にはドーオニツに戻ってくるんだけど、俺もそれ聞いたら意識してしまって……」

 ジャンが珍しく口ごもった。

「まさか、お前……!」

 ティモが笑顔にも見える驚いた表情でジャンに問いただすと、ジャンははにかんだ様子で答えた。

「いや、まだそういった話はしていない。彼女の口からもそう言った言葉は一度も出ていない。だけど、俺は彼女のことをとても大切に思っているんだ。彼女はもう一年したらドーオニツに五年間居住したことになる。そうなればあいつ、永住権を得るからさ。身近に結婚の話題もあるし、そりゃ俺もゆくゆくは、と考えるさ」

 ジャンはそう言うと突然慌てふためき、「やべえ、急ぎの書類があった」とつぶやくなり急いで自席へと戻っていった。ティモはにやにやした表情で彼を見ていたのだが、電話が鳴ったのを皮切りに、あっという間に仕事を再開させる。そのティモも恋人と順調であることは、直接本人から聞いていた。

「あなたたちにも素敵な恋人ができたら、私がたくさんお祝いするのに」

 突然、ローネに話しかけられた。

「いったいどんなお祝いをしてくれるんだろう?」

 イェンスが明るく尋ねると、彼女はにんまりと笑って「こんな風にね」と言いながら輸入書類を何件か僕たちに手渡した。

「うまいことやられたね」

 僕がイェンスをからかうと、それを聞いていたローネが朗らかに言った。

「あら、クラウス、あなたにもよ。あなたたち二人に私からのプレゼントなの。急遽依頼が入ったそうで、今日できれば輸入許可までもっていきたいから頼んだわよ」

 その言葉にイェンスと僕は顔を見合わせて思わず笑いあった。こういったプレゼントも悪くないと思いながら、すぐさま書類に目を通す。お昼を挟んで午後三時頃になると、ローネからもらったプレゼントは無事輸入許可となり、あっけなく僕たちの手元から離れていった。

 七月らしい暑い日が続く。雨が降っても蒸し暑くなるだけであり、容赦のないドーオニツの天候とともに日々が過ぎていく。事務所ではオールの言葉どおり、ひとまず凝ったお祝いをせずに結婚式に参加することで話がまとまっていた。

 イェンスと僕は相変わらず仕事を終えてから一緒にエルフの言葉を勉強し、魔力を高める本を読み解く作業をこつこつと進め続けていた。少しずつ本が読めるようになるにつれ、情熱とやる気が俄然上がっていく好循環が形成されていたため、疲れはほとんどなかった。エルフの言葉の一文字一文字に真剣に向き合い、熱っぽくイェンスと語りあう生活を僕はすっかり気に入っていた。

 リューシャに想いを馳せることも、気が付けば僕の日常の中に定着していた。この気持ちの行く末がどうなるのかはわからないのだが、今の僕が彼女に対してできる唯一のことであるため、彼女に想いを贈る時は常に心と魔力を込める。

 どうか、今この瞬間も彼女がドラゴンとして美しく、ありとあらゆる喜びの中に在りますように。

 いよいよ迎えたオールとソフィアの結婚式当日はさわやかに晴れ、朝から美しい青空が頭上一面に広がっていた。イェンスと僕は僕の部屋で一緒に朝食を取ると、エルフの言葉を勉強したり談笑したりしながらのんびりと時間が来るのを待った。

 結婚式場はDX‐16地区にあり、結婚式自体は午後四時から始まるのだが、オールの説明によると、式の後に美しい庭園の中で簡単な立食パーティーを用意しているのだという。夕方近くとはいえ気温はまだまだ高く、正装だとどうしても厳しい暑さから逃れられなかった。オールの気遣いはそこに発端しており、それを受け止めているソフィアの優しさもまた、素晴らしいものであった。

 午前十一時を過ぎた頃、僕たちのスマートフォンにメールが届いた。ユリウスからであった。

「来週の土曜日と日曜日の午前中に都合がついた。泊りがけで遊びに来い、だってさ」

 僕が弾んだ声で読み上げている横で、イェンスが嬉しそうに返信を打ち始める。イェンスも僕もユリウスからの連絡をずっと心待ちにしていた。この一か月もの間、僕たちが覚えたエルフの言葉や魔力のことで得た気付きを彼と共有したくて、うずうずしていたのである。返信して数分後、僕のスマートフォンが鳴り響いた。イェンスが僕を抱きかかえ、電話の向こうに耳を澄ませる。深みのある声がイェンスと僕の名前を優しく呼んだ。

「早速の返事をありがとう。来週会えるのを楽しみにしている」

「ユリウス、こちらこそありがとう。君に会って話したいことは山ほどあるんだ。エルフの言葉も覚えてきたし、魔力のことでも気付いたことがそれなりにある」

「私も同じだ。あと一週間だ、すぐにやってくるさ。本当に楽しみだ」

 ユリウスの優しい声を聞いて魔力が反応する。受け取ったドラゴンの能力もにわかに活気づいていくようである。

「シモから聞いたのだけど、最近本当に忙しいんだってね。そんな中で時間を作ってくれて本当にありがとう」

 イェンスが言葉を添えると、ユリウスは電話の向こうで朗らかな笑い声を上げた。

「ははは、たいしたことじゃない。気にするな。そのために働いているのだからな。そのシモとホレーショに代わろう」

 彼がそう言うと電話の向こうで話し声が聞こえ、少しして「シモだ」とあたたかい声が耳に届いた。

「来週またお前たちを迎えに行く。いつもどおりだ。また会えるのを楽しみにしている」

「ありがとう、シモ」

 イェンスと僕が口々に感謝の言葉を伝えると物音が聞こえ、今度はことさら低い声が電話に現れた。

「俺だ、ホレーショだ。そう言う訳だ、また来週には会える。待っていろ」

 彼の口調もまたあたたかかった。

「ありがとう、ホレーショ」

「今日は知り合いの結婚式だそうだな。素晴らしい時間を過ごせるよう願っている」

 ユリウスが再び話しかけてきた。

「ありがとう、君たちの一日が素晴らしいものとなることを心から願っているよ」

「ありがとう、また来週」

「また来週、楽しみにしている」

 イェンスが最後に言葉を返すと電話は終わった。

 僕たちはやはりあたたかい気持ちのまま、お互いに顔を合わせて笑顔になった。待ち望んでいたことが来週に差し迫っている。それを考えるだけでお互いに心から満ち足りた気分になった。

 遅めの昼食は近くのカフェで簡単に済ませた。それから互いのアパートに戻り、身支度を整える。着替えを済ませると、冷房の効いた室内から外を眺めた。先ほどは少し歩いただけで汗が噴き出るほど暑かったのだが、午後四時にもなれば日差しがいくぶんかでも和らぐため、少しでもしのぎやすくなっていることを願うばかりである。

 出発時間になった。外の暑さはさほど変わらず、ジャケットを羽織らずとも汗が吹き出しそうである。ジャケットを手に持っているだけでも暑いので、なるべく日陰を選んでイェンスが待つアパート前へと向かう。彼もまたジャケットを片手に日陰で僕を待っており、シャツも胸元近くまではだけさせていた。

「正装するな、とオールが何度も言ってくれたおかげで少しは涼やかだ」

 イェンスが日陰を選んで歩きながら言った。

「本当だな。最近は仕事でジャケットを羽織る機会も無かったし、きちんとした身なりでいたら汗だくで、暑苦しい見た目になっただろうね」

 僕もまた日陰を歩きたくて、イェンスの後ろを歩いていく。「オールはつくづくいい奴だ」とイェンスが振り返って言ったので、「全くだ」と返して微笑んだ。

 汗だくになる前に地下鉄の駅に到着した。電車の中は空調が効いており、イェンスも僕も涼みながら快適に移動する。七駅進んだところで地下鉄を降りて地上に上がり、今度はバスに乗って式場へと向かった。

 バスを降りて数分歩くと、ジャンとティモが暑さをものともせずに結婚式場近くの街路樹の下で談笑しているのが見えてきた。彼らは僕たちに気が付くなり笑顔を見せ、明るく声をかけてきた。

「今日は暑いな。オールが正装を拒んでくれて助かったよ」

 ジャンの屈託のない笑顔に、僕も笑顔で「本当だな、暑いね」と返す。

「建物内へと入ろう」

 そう言って歩き始めたジャンに、ティモが横に並んでにやついた表情で話しかけた。

「それで、ご両親にベアトリスを紹介してどうなったんだ?」

 その言葉に動揺し、背後からそっとジャンの様子を伺う。それと同時に建物内に入って涼しくなったのだが、ジャンは耳を赤くして答えた。

「どうって、そりゃ両親も喜んでいたさ。彼女性格がいいし、美人だし、頭もいいからな。今まで何人かの女性と付き合ったりしてきたけど、彼女は本当に違う。コウラッリネンを合格しただけあって、ひたむきでぶれない芯があるんだ。俺の腕の中に彼女がいるたびに、俺は芯がある彼女を大切にしていきたいと思うんだよ」

 ジャンはベアトリスの強さの中にか弱さと繊細さを見出したばかりでなく、愛する気持ちから彼女を大切にしようと決めたようである。それを聞いて、未だ残っていた彼らに対する罪悪感から逃れるため、なるべく誠実な態度でジャンを呼び止めた。

「ジャン、君ならきっと彼女も喜んで一緒に新たな道を歩もうとするよ。君たち二人の幸せを心から願っている」

「ありがとう、クラウス。実を言うと、俺はベアトリスが最初、お前に気があったことを知ってたんだ。同業者のリーからお前のことを聞かれたことがあってさ。理由を聞いたら『私じゃないのよ』ってはぐらかされたんだけど、その数日後に税関の前を通りかかったら、偶然お前が女性と話しているのを見かけたんだ。お前が素っ気ないのは見てすぐにわかったけど、女性のほうはお前の後ろ姿をじっと見送っていた。そん時は気付かなかったけど、後になってリーの話を思い出し、その女性がお前に気があることがわかったんだ。彼女がベアトリスだと知ったのは、交流パーティーで彼女を初めて見た時だった。あの時は軽くショックだったよ。けど、俺はチャンスだと考え直した。そこから俺がベアトリスと付き合うようになってから、一度だけそのことで彼女に尋ねることにした。まだお前に気があったら、俺はお前を恨むつもりだったからな。けど、彼女の反応は意外だった。すごくあっけらかんに『そんなこともあったわ』と言って笑ったんだ。そして『最初は確かに気になっていたけど、全く相手にされないからきっぱり諦めて交流パーティーに参加したの』と続けた。彼女はどうやらお前がイェンスと付き合っていると考えて諦めたらしい」

 僕はジャンの唐突な言葉に面食らい、困惑した頭で思考を張り巡らせる。しかし、彼は笑い声を上げてすぐさま言葉を続けた。

「気にするな、冗談だ。お前もイェンスも女性にもてるわりには、話しかけてくる女性と関わるのを避けるだろう? 彼女の話を聞いているうちに、彼女ですら相手にされなかったことになぜか腹が立ってさ。俺が『あいつら付き合っているんだよ』てベアトリスに言ってやったんだよ。お前たちはどことなく不思議な雰囲気があるから、最初彼女は信じかけたけどな。もちろん、訂正しておいたぜ。お前たちがお互い尊敬し合っているのは見ていてわかるし、俺が知りうる限りでの恋人同士の雰囲気が全然ない。彼女にはお前が俺より三つ年下で、まだケツの青いガキだから大人同士の恋愛の良さに気付けなかったんだって言っておいた」

 ジャンの言葉はベアトリスに対する過去の僕の態度から、彼女の名誉を彼なりに守ったように聞こえた。

「そういうわけで安心してくれ。俺が彼女をきちんと幸せにする。後で悔やむなよ」

 ジャンは真っ直ぐに僕を見つめていた。その瞳は澄み渡っており、僕に悪意がないことはすぐにわかった。そうでなくとも今までの彼の言動全てにおいて、僕には無い人柄の良さとその人懐っこい価値観を親愛の気持ちで受け止めていた。

「ジャン、君の言葉どおりだ。成熟した男性なら、ベアトリスの魅力や美しさに心が惹かれて交際を望むはずなんだ。だけど幼稚な僕は、彼女に失礼な態度を取ることしかできなかった。彼女は諦めたと言ってくれたけど、本心では僕の浅い本性を見抜いて『見限った』と言いたかったんだと思う。僕はベアトリスの恋人が君で良かったと心から思っている。君の良さを僕は一緒に働いてきて、もう何度も実感してきた。君なら真実の愛や思いやり、あたたかい感情といったものを彼女にたくさん与えられるだろう。だからこんな僕でも、君たちが幸せな道を一緒に歩んで行くことを祝福させてほしい。君たちの幸せな未来ために僕が敷石になったことも光栄に思えるぐらいだ」

 いきなりジャンが僕を力強く抱きしめた。彼はすぐに僕を離したのだが、その瞳にはあの美しい光が放たれていた。

「ありがとう、お前を敷石にできたことを誇りに思う」

 ジャンが放つ固有の美しさは、今までにない輝きを放っていた。その茶色の瞳に宿った純粋な光がベアトリスをこの先もずっと優しく照らすことを願っていると、ローネが僕たちを探してやって来た。

「そんなところにいたのね。そろそろいい時間よ」

 その言葉を受けてすぐさまジャケットを着用し、急いで会場となる部屋へと向かう。

 華麗さの中にも荘厳な装飾が施された室内は、オールとソフィアの家族に親戚や友人、そして職場で親交のあった僕たちのような招待客が談笑しながら結婚式が始まるのを待っていた。オールとソフィアの家族に挨拶をし、式場の担当者にも挨拶を済ませてから横長のイスにイェンスと並んで座る。開始時刻が迫るにつれ、ドーオニツの特殊性からなるべく宗教色が排除された会場内に独特の緊張感が漂っていく。

「きっと僕たちには一生縁のない出来事だな」

 イェンスが耳元でささやいた。しかしながら彼の表情は落ち着いており、自虐的な雰囲気は感じられなかった。

「だけど君ならウボキで縁があるだろう? きっと君もそうなるさ。彼女もそれを望んでいるはず」

 僕はまっすぐに彼を見つめて小声で返した。すると彼は思いがけずはにかんだ笑顔を見せた。

「彼女を束縛したくは無い。だけどありがとう、嬉しいよ」

 僕はラカティノイアを思い出していた。エルフの結婚観がどういったものであるかは不明なものの、彼女が別れ間際にイェンスを見つめたあの眼差しに、僕はほのかに輝く希望を見出していた。やがて政府の婚姻証明と宣誓担当者が式場の壇上に登場したことで、ざわついていた式場内が静まり返っていく。厳かな沈黙が訪れ、その後にオールの希望なのであろう、イェンスも僕もプレイしたことのあるゲームの音楽が生演奏で流れる。そこに会場の進行役が挨拶をし、後方を振り返って新しい門出を迎える新郎新婦を出迎えてほしいと案内したため、会場内の参加者が一斉に後方を振り返った。

 音楽に合わせて扉がゆっくりと開いていく。音楽はそのゲームのオープニングテーマとして広く知られている曲であり、僕はオールがソフィアとの新しい一歩を心から喜んでいるのをひしひしと感じ取っていた。

 正装したオールと美しい花嫁姿のソフィアが互いの腕を組んで登場する。オールの表情から、彼が明らかに緊張していることはすぐにわかった。それとは対照的に、久しぶりに見たソフィアの表情は落ち着いており、喜びと幸せとが彼女を取り巻いているようであった。

 彼らは政府の婚姻証明担当官が立つ宣誓台の前までゆっくりと歩いていき、そして静かに立ち止まった。政府の婚姻証明担当官は年配の女性であり、その担当官はオールとソフィアに優しく微笑むと顔を上げて真っ直ぐに前を向いた。そしてややしゃがれた声で彼らの婚姻証明の手続きと宣誓を執り行うことを宣言し、それに続いて彼女の隣に立っている政府の婚姻宣誓担当官である若い男性が、婚姻に関する法律を読み上げていった。

 婚姻に関する条項はそんなに多くは無いのだが、退屈したのか、前方で子供たちがふざけ合う。それを隣の母親らしき女性がたしなめ、おとなしく座り直す様子を僕は微笑ましく見ていた。

「……以上の法律を順守し、また相手に自由と愛と思いやりを喜びとともに与えることを宣誓できるのであれば、この妖精の羽のペンを用いてこちらの婚姻届と宣誓文に署名をするように」

 婚姻証明担当官はゆっくりとした口調で話すと、金細工が施された万年筆をオールに手渡した。オールはその妖精の羽をモチーフにした万年筆を受け取り、次々と書面に署名をしているようである。

 妖精の羽のペンとは、ドーオニツで代々結婚式で使用されてきた金細工を施した万年筆のことであり、古くから妖精の羽の形に永遠の愛を見出してきた言い伝えに起因していた。そのことでふとアウラを思い浮かべたのだが、実際の妖精の羽の形にほとんど似ていないことに気が付いた。現実には普通の人間が妖精と接触することは不可能であるため、誤ったモチーフも仕方がないことなのだが、もしアウラが妖精の羽のペンを見ることがあればきっと困惑するであろう。だが、そのことも羽の形が実際と異なることも、指摘することはお互いにとって意味の無いことであった。相容れない世界をそのままそっとしておくのが一番適切なのだ。

 その万年筆が一度婚姻証明担当官に戻され、次にソフィアが受け取る。彼女は終始落ち着いた様子でそれぞれの書類に署名をしていった。政府提出用と返却用全ての内容を結婚証明担当官が精査し、二人の婚姻を認める署名を書き添えていく。続いて結婚宣誓担当官が最後に署名すると、近頃はその場でコンピューターの端末に婚姻届登録を済ませるようになったらしく、その若い担当官はスキャナーに書類を読み取らせ、手早く何かを入力していった。

 その登録もいよいよ完了したのか、画面を確認していた政府の結婚証明担当官と結婚宣誓担当官が元の位置へと戻った。厳かな雰囲気の中、年配の女性担当官がゆっくりと式場内を見渡す。そしてややもったいぶったふうに口を開いた。

「おめでとうございます。今、この二人が夫婦として婚姻関係を結んだことをここに証明いたします」

 声高に宣言された言葉に、参加者から次々と歓声が湧き起こった。イェンスも僕も、オールとソフィアに向かってお祝いの言葉を心を込めて贈る。その時、結婚宣誓担当官が金のトレイに白いレースのような飾り布を敷いたものを持ってやって来た。そこからオールとソフィアが結婚指輪を手に取り、笑顔で互いの指にはめていく。ここでキスを交わすのが最も一般的で、彼らは軽くキスをしてから僕たちのほうを振り返った。その瞬間、式場内の興奮は最高潮に達した。

 オールの顔は幸せそのもので、ソフィアをしっかりと抱き寄せると再び彼女にキスを贈った。そこに結婚証明担当官が美しい装丁が施されたファイルに婚姻を証明する書類を丁寧に挟み、オールとソフィアに手渡す。今までもう何度も見てきた、簡潔でありながら陽気さを前面に押し出したドーオニツ風結婚式は、出席者の笑顔の下で無事終了した。

「本日は、私たちの結婚式にご臨席くださいましてありがとうございます。ささやかではございますが、軽食を用意いたしました。ぜひそちらにもご参加いただき、私たちの感謝の気持ちをじかに受け取って頂ければと思います」

 オールとソフィアが笑顔で案内したので、再び歓声が上がった。そして式場の担当者からガーデンパーティーの場所が告げられたのに合わせ、出席者たちがおもむろに移動を始める。

「行こうか」

 イェンスに声をかけて僕たちも移動を始めた。外はまだ暑さが残っており日差しもあったのだが、幸せな二人を祝福した心はさわやかであり、暑さを笑い飛ばすだけの余裕に満ちていた。

 広い屋根を十数本の柱が支える東屋のような建物に案内される。天井から冷たい水蒸気と冷風とが絶えず放出されている開放的な空間は思いのほか涼しく、イスも用意されていたため、小さな子供を抱えていた親と年配の出席者からは安堵の表情が見られた。また、縦に並べられたテーブルの上にはたくさんの氷で冷やされた軽食と飲み物とが用意されており、本格的な夕食とまではいかないものの、オールとソフィアの感謝の気持ちを充分に表すものであった。

 スパークリングワインが成人した出席者に振る舞われていく。そこに遅れてやって来たオールとソフィアが、出席者から再度祝福を受けながら登場した。

「改めて本日ご出席くださいましたことに、私たちは心から感謝しています。疲れたらイスもご用意しておりますので、楽しいひと時をお過ごしください」

「今日ご出席くださいました、全ての皆様の健康と幸せを心から祈っております。乾杯!」

 ソフィアの挨拶にオールが乾杯の挨拶を続け、早速饗宴が始まった。最初のうちは和やかな雰囲気で軽食をつまんだりしていたのだが、オールの友人なのか、酔っぱらった複数の男性がオールとソフィアを囃したて始めた。それを受けてオールが照れながらもソフィアに再びキスを贈る。すると再び大きな歓声が湧き上がり、あちこちからにぎやかな笑い声が飛び交った。

 イェンスと僕がオールの弟と世間話をしていると、オールとソフィアがやって来て輝く笑顔で話しかけてきた。

「クラウス! イェンス! ガキども、よく来てくれたな。感謝している」

 オールはすでに酒が回っているのか、あるいは幸せに浸りすぎているからなのか顔が赤く、目尻は下がりっぱなしであった。

「いい顔しているよ、オール」

 僕の言葉にソフィアがいたずらっぽく笑いながら言葉を返した。

「彼ったら結婚式の時、すごく緊張していたのよ。最初は私が署名するところに書こうとしてたし、自分の名前さえ間違えるんじゃないかって冷や冷やしていたわ」

「間違えるもんか! 俺はこの日を心待ちにしていたんだ」

 オールが照れながらもソフィアを見つめて言ったその時、ジャンとティモがやって来て彼らに話しかけた。

「お互いに相手を生涯の伴侶として認め、一生愛し合うことを誓いますか?」

 ジャンがワイングラスを片手に、わざとらしく厳粛な表情で問いかける。しかし、オールは締まりのない表情で「なんだよ、突然。ああ、そうだよ」とだけ答えた。それを聞いたティモがすかさず「誓います、だろ」と、にやにやした表情で注意を入れる。

「はいはい、誓います」

 オールがおどけた表情で言い直したからか、ソフィアは朗らかに笑いながら「誓います」と続けた。

「では、誓いのキスを」

 ジャンがにやついた表情で彼らにけしかけたのに続いて、ティモが「最低三秒以上でお願いします」といたずらっぽく笑う。どうやらジャンとティモもお互いに息がぴったり合うらしかった。

「あなたの友人って本当に面白い人が多いわ」

 ソフィアが幸せそうな笑顔でオールにささやいたことに対し、オールは「最高だろ、こいつら」と言って彼女に長いキスを贈った。しかし、オールの友人の一人が「一番最高なのは君さ」と二人を囃したてたので、結局彼らはキスの途中で笑いだしてしまった。

 オールとソフィアが僕たちから離れて他の出席者のところへと移ると、ソフィアの友人らしき女性数名が僕たちに話しかけてきた。

「素敵な結婚式でしたわね」

「ええ、全く。そして楽しいガーデンパーティーですね」

 僕はにぎやかな雰囲気に合わせようと、彼女たちの熱心な視線にたじろぎながらも、笑顔を添えて言葉を返した。その時、女性の一人が酔っているのか、イェンスに軽く触れながら親しげな様子で話しかけた。

「あなたって超イケメンね。スタイルもいいし、どこかの王子様みたい。ねえ、恋人はいるの? いないんなら私とデートにしない?」

 その言葉にイェンスを心配しかけたのだが、彼は落ち着きを保っており、やわらかい口調で答えた。

 「すみません。とても大切に想っている女性がおりますので、お断りさせてください」

 その言葉を聞いた途端に女性たちからため息がもれたのを、僕はじっと見守っていた。

 「やっぱりそうよね。素敵な人にはいつも恋人がいるんですもの」

 話しかけた女性が残念そうにつぶやいたのを、イェンスは静かに受け流した。その時、別の着飾った女性と目が合い、笑顔が向けられる。僕が小さく会釈を返すと、彼女もまた親しげに話しかけてきた。

 「すごくきれいな目ね。印象的だわ。ねえ、あなたもやっぱり恋人がいるの?」

 僕はその言葉を聞いて息が止まった。それと同時にリューシャの笑顔が脳裏に浮かぶ。この程度の会話でやましいことは何らないのだが、瞳のことをさらに尋ねられるのも億劫であったため、遠慮がちに答えた。

 「ええ、まあ。大切に想っている女性はいます」

 それを聞いていたジャンとティモが、驚いた様子でイェンスと僕を見たのがわかった。僕はイェンスに目配せをすると、「すみません、知り合いが呼んでいるので失礼します」と女性たちに嘘をついてその場を離れた。

「二人ともほんと一貫しているよな。さっきの女の子たちけっこう可愛かったのに。特定の恋人がいないんなら、単に楽しく遊ぶぐらいアリだと思うよ」

 僕たちを追ってきたティモが明るく話しかけてきた。その言葉に便乗してどう嘘を重ねようかと思案する間もなく、ジャンが疑いの眼差しで「いや、あれは初耳だった。まさか本当は隠して付き合っている女性がいるとか?」と鋭い質問を投げつける。

「まさか――」

 動揺を即座に押し殺し、もっともらしい理由を頭の中に並べていく。無難で説得力のある説明を考え付いたその時、ローネがムラトとギオルギを連れて陽気に割って入って来た。

「ジャン、聞いたわよ。すごく素敵な女性と付き合っているそうじゃない!」

 ローネは僕たちのそれまでのやり取りを全く把握していなかったようで、勢いよくジャンに質問を並べていった。ギオルギが「美男美女のカップルで有名らしいな」とジャンを小突き、そこにムラトまでもが「稀に見る美人だと聞いたのだが本当か」と興味津々に話しかける。そうなるとジャンはあっという間にのろけた表情へと変わり、彼らの交際を少しずつローネたちに報告し始めた。

 どうやらイェンスと僕はローネの陽気な割り込みに救われたらしかった。しかし、ジャンのみならずティモも質問を受けるようになったため、気まずさからイェンスも僕も会話から徐々に離れ、会場の隅にこっそりと移動する。木陰から全体が見渡せる場所に来ると、オールとソフィアが車いすに乗ったソフィアの祖父と話をしているのが見えた。その高齢の男性が深く刻み込まれたしわに喜びを織り込ませ、輝く笑顔でソフィアを祝福している様子を見つめる。おそらく、孫の新たな生活が幸福に彩られているのを心から喜んでいるのであろう。その眼差しに尊い美しさを見出し、感慨深げに辺りを見回す。すると出席者全員が笑顔で誰かと談笑し、またはパーティー自体を楽しんでいる様子が飛び込んできた。

「いい雰囲気だな」

 イェンスが穏やかな表情でつぶやいた。

「全くだ」

 その言葉は僕の本心であった。

 僕がドラゴンの魔力を授かって普通の人間ではなくなったこと、想いを寄せる女性がドラゴンであること、これらのことで異種族と人間との関わり方について人間側の視点を持てなくなったこと――。この全てにおいて人間社会にいる限り、僕は嘘を重ね続けていくことになるのであろう。

 それでも僕は自分を責める気持ちにはなれなかった。真実が真実として受け入れられるとは限らない。真実を全て伝えることが正しいとも限らない。僕もまた、自己の保身のために嘘で自分自身を固めていることは間違いないのだが、それでも僕は普通の人間に対してもその美しさと価値を見出し、そして一人ひとりが幸せであることを願う存在でありたいと考えていた。

『何もかもが美しい』

 どこからともなくその言葉が脳裏に浮かんだのだが、僕には抵抗の気持ちが全く起こらなかった。僕の目の前には、まさにその言葉に相応しいほどの美しい光景が広がっていた。

 陽気に笑い合う男女、用事があるのか帰っていく年配の夫婦、穏やかな笑顔で接客する式場の給仕、人だけではなくテーブルクロスやグラス、イスの造形、床に敷き詰められた石の模様、手入れの行き届いた庭園、その頭上に広がる薄い水色の空、僕は目に映る全てに独特の美しさを感じ取っていた。

 もしかしたら僕が考えている以上に世界は美しいのかもしれない。今まで僕がただただ偏狭な見方で捉えてきただけなのだ。

 風が運ばれ、雲がたなびいていく。その雲と地表を照らす太陽が夕日へと変容していく一方で、別の地域では朝日として大地を眠りから目覚めさせようとしていた。庭園の花壇の上では小さな虫が忙しなく飛び回り、その近くで蝶々が優雅に舞い、聞き慣れた小鳥の鳴き声が耳に届く。草木にも街路樹にもたくましい生命力が宿っているのを見つけ、僕は調和された美しい世界に引き込まれていった。

 存在する全てが最初から完璧なのだ。

 ソフィアが嬉しそうにオールに寄りかかり、オールが優しく彼女を受け止める。彼らの進む道がずっと平坦であるとは限らないであろう。それでも、彼らなら協力しあって同じ道を同じ歩調で歩んでいくに違いない。その願いも込めて、オールとソフィアにたくさんの喜びと優しさが届けられるよう、再度心から祝福を贈る。彼らもまた完璧を構成している、完璧な存在なのだ。

 ふと、リューシャを思い出した。想像をはるかに超えた広大な宇宙の中で、砂粒どころか素粒子以下の存在である僕ですら、完璧な存在なのだと彼女は話していた。そのおかげで僕はようやく、彼女が言う『完璧』がどういう状態なのかを掴めるようになったのである。

 リューシャの美しい眼差しとやわらかい笑顔とが脳裏に鮮やかに浮かび上がる。僕は活き活きとしたその映像に、魔力を意識しながら想いを贈った。次の瞬間、さわやかな風がほほを撫で、僕の心にみずみずしい感激を送り届けてきた。

 僕は今も彼女と心が通じ合っているのだ!

 ああ、あの美しいドラゴンがこの先も幸せと喜びの中にいますように。

「クラウス、君は本当に美しいのだな。君の瞳があまりにもあの美しい光を発するものだから、僕は思わず見とれてしまった」

 イェンスが僕の耳元でささやいた。しかし、彼こそがその緑色の美しい瞳に清らかで美しい光を放っていたので、僕は見入るようにその光を捉え続けた。

「ねえ、クラウス。ここにいる人たち全員が美しいと思わないか? いや、もともと全ての存在が美しいのかもしれない。生物だけじゃなく、無生物もだ。僕は以前、リューシャが君に話した『存在の美しさ』の話を聞いてから、全てが完璧に調和した状態で存在していることを考えるようになったんだ」

 彼の言葉は甘美で心地良かった。僕は彼の肩に手をかけると、顔を近付けて彼の耳元でささやいた。

「イェンス、僕も全く同じことを考えていた。僕たちは本当に気が合うんだね。ああ、何もかもが美しい。まさしく今、そういう気持ちなんだ」

 その状態のまま、僕は空を見上げた。午後六時近くになってもあたり一面が夕焼け色に染まることはなく、薄い水色の空が未だ残っていた。その空の向こうに、ふとリューシャからの視線を感じた。もちろん、彼女の姿はどこにも見えず、そもそも人間が生活する場所にドラゴンが堂々と姿を見せることは到底あり得ないことなのだが、それでも僕は頭上高く広がる大空にリューシャが優雅に舞っている姿を重ねた。

「この空はあの空に続いている。僕たちはつながっているんだ」

 イェンスが空を見上げながらつぶやくように言った。

 そうだ、僕たちはつながっているのだ。

 ルトサオツィ、ラエティティア、ラカティノイア、そしてアウラに対しても想いを贈った。僕が感じている感謝と友情が彼らに届きますように。彼らが今も笑顔で幸せの中にいますように。

 間髪入れずに感激が僕の中で広がる。僕は彼らとも今まさに心でつながっていた。彼らとのあたたかい友情に感謝しながら、ユリウスにも想いを馳せる。すると、すぐさまあたたかい感情と喜びとに満たされ、彼の優しい眼差しが今でも僕を包み込んでいるようであった。

 いよいよ隣に立っているイェンスに想いを贈った。彼がこの先もずっと、ずっと幸せでありますように。次の瞬間、混じりけの無い喜びとあたたかい感激とがあふれ出す。

 僕は空を見上げているイェンスにつぶやくように話しかけた。

「イェンス、ありがとう。君を愛している」

 それを聞いた彼が僕の肩に手を回し、素早く僕のほほにキスをしてから耳元でささやいた。

「クラウス、僕からも感謝の言葉を贈りたい。そして君を愛している」

 結婚式に相応しい愛の言葉が僕たちの友情の上に再びもたらされたことを、僕は素直に喜んで受け取った。僕がイェンスに感じている親愛の気持ちは広がるばかりで、きっと誰かを想う気持ちに際限はないのであろう。

「クラウス、イェンス! そこにいたのね、スパークリングワインを飲まない?」

 ローネが離れた場所から大声で話しかけてきた。酔ってすっかり陽気になった彼女に大きな声で「もちろん」と返すと、イェンスと僕は足を踏み出した。

 その時、優しい風が僕たちを取り巻き、澄み切った空気に紛れ込んだ美しい何かが僕たちの五感にやわらかく挨拶していったのを感じた。それと同時にドラゴンとエルフと妖精の姿が脳裏に浮かぶ。それが彼らからの魔法によるものであったのかはわからなかったのだが、イェンスと僕は顔を見合わせて微笑んだ。

 ようやく傾いてきた太陽がオレンジ色の光でやわらかく僕たちを照らす一方で、東の空から徐々に群青色の影が濃さを増していく。もう少しすれば、美しい星が紺色の世界とともに登場し、僕の心に馴染み深い喜びを与えることであろう。

 そうだ、今晩星空を見上げる時は僕自身を想ってみよう。無償の愛を丁寧に自分自身にも贈ろう。

 僕はそっとイェンスを見た。彼の表情もまたやわらかく、僕がもう何度もあこがれてきた美しさを堂々とにじませていた。彼もまた、僕と同じようなことを考えていたのかもしれない。

(クラウス、あなたは非常に美しい存在だわ。無償の愛を喜んで自分に与えて)

 リューシャの声が脳裏に響く。しかし、それは僕の記憶からではなく、彼女から直接僕に届けられた生身の声であった。彼女がまたしてもドラゴンとしての常識を破り、僕の心にキスを贈ってくれたのである。僕はそれを感謝とともに優しく受け止めると、彼女を想いながら言葉を返した。

(リューシャ、美しいドラゴン。君の存在を心から喜んでいる。君の存在に感謝している。君が愛と喜びと美しさの中に、ずっと居続けられますように)

 心の奥底からまたしても彼女に対する深い感情が湧き上がり、言いようもない喜びと力強いあたたかさとで満たされていく。僕はドラゴンのいる世界と唯一つながっている空を見上げ、彼女に対する全ての気持ちをその空へと託した。

 あちこちで笑顔がはじける中、心地良く調和された美しい世界を見つめる。いろいろな人たちの眼差しからあの美しい光が微かに放たれ、完璧に存在する世界に彩りを添えていく。その世界の中に僕が存在しているのだ。

 その瞬間、存在する自分自身を力強く実感する。思考が消え去り、大きな安心感に包まれると、僕が最初からたった一つのかけがえのない存在として世界と結ばれていることに気が付いた。

 中途半端で哀れなものなど、最初からどこにも存在していなかったのだ。

 僕は感慨深くその言葉を自分自身に贈ると、感じている好ましい感情を全て受け止めた。僕が今までに囚われていた認識が徐々に力を失っていく。完璧な美しさの中だからこそ、ありのままの僕が存在していることもまた、完璧なのだ。僕は穏やかな気持ちで無抵抗に自分を受け入れると、そっと今までの自分に愛を贈ったのであった。



終わり

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Dragon Breaker @klaus-frederiksen

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