挿入

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避妊と辛い生理から逃れる為、ついにその日がやってきた。

経産婦でスムーズに進むと思われていた里美だったが、処置の最中に異変が起きてしまう。

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「お疲れ様。忙しいところ悪いわね。」

「やぁ、元気そうで。快人も悪いな、宜しく。」

「構わないよ。子どもたちは晴と遊ばせてるから二人でごゆっくり。」


今日は利佳子に呼び出され、仕事後に待ち合わせをしていた。

子ども達を見ていられる人がいない賀城家、利佳子は自宅に招き夫に保育園後の世話を頼んだのだった。

話の内容としてはあの事だろうと修二は簡単に予想でき、初めて利佳子を怖いと思った。


「三人とも、遊ぶ前に先に手洗わせてもらうぞ。」

「あーい!」

「優梨、手って洗うぞー!こっち来るんだ。」

「やー!あっち、しない。」

「優梨ちゃん、みんなでご飯だから手洗う所行こうね。」


快人に抱かれ一人遅れて来た優梨も手洗いうがいを済ませると、進藤家の一人娘の晴、そして亮二、愛梨、優梨は予め用意してもらっていた夕飯の時間が始まった。


「じゃ、快人くん宜しくね。」

「あぁ、ごゆっくり。」

「悪いが頼むよ。うちの子達、騒がしくしたら叱ってもらって構わないから。」


修二と利佳子は奥の部屋へと向かった。



「唐突だけど、今日は里美のこと。」

「分かってるよ。あいつ、最近は落ち着いてるよ。この間の双子の誕生日を祝えなかったのはショック受けてるけどな。」

「そうね、もう誕生日なのよね。里美もこの間言ってたわ。来年は夏休みに旅行したいとか話してたし、あの子なりに良くなりたいって思いはあるみたいね。」

「もう二歳だってさ、早いよな。」


修二は利佳子と視線が合わぬ様、広い部屋の遠くを見つめていた。

だが、利佳子が話したいのは子どもの事ではない。

今まで様々な場面で里美の世話的な事をしてきたが、利佳子がここまで二人の事に口出ししてくるのは初めての事だろう。

それだけ利佳子自身もショックを受けた事であり、どうしても里美の身を守りたかったのだ。


「あの日のこと。里美、あの後何か言ってた?」

「いや、特には。けど医者から避妊リングってやつを勧められてね。俺も良いんじゃないかって言った。」

「あらそう。で、あの時お腹にいた子のこと、修二くんは知ってたの?」

「いや…」

「私もう、最近の里美の事は見ていられないのよ。大学の時から修二くんと里美の事を見て来て、あの子の本当の姿を、明るさとか性格とかも知ってるからこそ、私はあの変わり様がすごく辛いの。そういう辛い思いをこれ以上させないで貰いたいの。それは一番近くにいる修二くんにしか出来ない事なんじゃない?」

「利佳ちゃんの思い留めておくよ。」


こうは言っても、今は夫婦となった修二と里美に自分が口出しする立場ではない事は利佳子自身が一番よく理解していたが、宿した命を亡くす姿を目にしたくない事情が利佳子にもあった。

それが親友であれば尚更だった。

そして他人の事にあまり気を掛けるようなタイプではない利佳子が、ここまで口を挟むことはかなり珍しいと修二も感じていた。


「ところで修二くん、避妊してないの?」

「ん、まぁ…色々かな。したりしなかったり?直に繋がりたいんだよ。それだけ桃瀬の事を愛してるってことさ。」

「それは違うでしょ。夫婦なんだしセックスするなとは言わない。だけど、今の状況をちゃんとよく考えてちょうだい。傷つくのはあの子なの。高校生の男子じゃないんだから修二くんもその意味はわかるわよね?あの時に出て来た子の大きさを見たらそれなりに週数行ってるはずよ。心当たりは?」

「あるよ。」

「病院でしたの?」

「入院してからは流石にしてないよ。入院する事を勧めた時かな、あいつ家で凄い泣きついて来てさ。本人は最初入院することは嫌がったんだ。捨てないでくれとか、頑張るから、ちゃんとするとか言ってたかな。けど俺もずっとは休めない事や金銭的な事なんかも話して、子ども達を保育園に預けようと思う事も話したら納得したんだよ。」

「そう、だから避妊なしで?」

「違うって。入院する前夜かな、あいつ子ども達の寝顔見ながら泣いてたんだ。その姿見たらこっちも辛くてさ。そんな姿で求められたらこっちも抱いちまうだろ。」


修二はここまで夫婦生活の事を打ち明ける事をかなり恥じたが、自分が里美愛している事をきちんと伝えたかった。

それと同じくらい利佳子も里美の事を思い、気に掛けているのだと知っていたからこそ、修二も友人として打ち明けたのだった。

これで修二が無理矢理行為に及んだわけではない事は伝わったはずだ。

利佳子はてっきり修二が性欲発散のために里美を利用していたのだと思いこんでいたことから、本人の口から本心を聞く事ができ、そして予想外にも里美からの要求だったと知り拍子抜けした。



「ところでさ、利佳ちゃん家の病院って避妊リング入れられるのか?」

「うちは産科婦人科だからね、やってるわよ。母に話しておく?」

「そうだな。折角なら信頼できる病院でお願い出来たらいいのかなって思ってさ。とりあえず桃瀬にも聞いてみるよ。」


後日、里美は生理の開始を待ち、一時外出を利用して青井マタニティクリニックへ避妊リングを入れるための処置を受けに来ていた。

友人である利佳子の母親という事、そして医師であることもあり、里美も修二も大きな信頼を寄せていた。

そんなフレンドリーな雰囲気の仲、事前検診を終え処置の最終説明が始まった。


「里美ちゃんは出産経験があるから大丈夫だと思うけど、入れる時に子宮の入り口が狭い場合は痛みや出血がある事があります。入れた後に下腹部痛とか、不正出血もあるかもしれません。だけど月経痛が重いって話しだったし、今後はきっと楽に過ごせるんじゃないかしら。大丈夫そうですか?」

「はい、お願いします。」


処置が始まると麻酔が施される。

経産婦ではあり出産程の痛みは感じないと伝えたものの、痛みに弱い里美が自ら希望したのだ。


「気分、大丈夫?」

「はい…」

「大丈夫じゃなさそうね。緊張しないで力抜いて、深呼吸してリラックスよ。」

「吸ってー、吐いてー、ふーっ、ふーっ、ふーっ…」

「大丈夫よ。それじゃ、入れて行きますね。すぐに終わりますからリラックスして。」


付き添う看護師にサポートを受けながら胸元をそっと叩かれながら呼吸で落ち着きを保つ。

麻酔のお陰か痛みを感じることもなく、処置はものの五分程で終了した。

しかし待合室で待機していると、貧血の様な感覚に襲われ椅子に横になる。


「桃瀬大丈夫か?」

「ちょっとごめん、横にならせて。」


その姿を見かけた看護師が声を掛けた。


「大丈夫?少し休みましょうか。麻酔のせいかしら。緊張しちゃった?」

「ごめんなさい。なんか力が入らないというか、気持ち悪いかも…」

「お部屋で休みましょう、こちらどうぞ。」


里美は看護師と修二に支えられ処置室で横になると、少しずつ落ち着きを取り戻した。


「ちゃんと入れられたよ。生理痛も楽になるといいな。」

「そうだな。避妊もできるし、桃瀬が辛くなくなるのは良いよな。ずっと生理痛で苦しんだんもんな。」

「避妊も100パーセントじゃないのよ。ゴムしようね、念のためだよ。」

「わかってる。」

「というか大丈夫か?気持ち悪くなっちゃった?」

「あーいうの乗ると、やっぱり緊張感しちゃうわよね。さっきもずっと看護師さんが付き添ってくれてたんだけど出産のことも思い出しちゃうし。けどもう大丈夫、歩けると思う。」


修二に付き添われ、車へと向かった。

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