眠り姫

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夫婦それぞれが限界を感じ始めていた。

急な眠りに襲われる里美と子ども達を家に残した先に待ち受ける出来事とは…

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ここ数日、里美は死んだ様に眠る時間がとても増えた。

どうやら日中過ごしていても突然の睡魔に襲われ、それに耐えられない様なのだ。

それに食欲も落ち、少し食べ物を口に出来たとしても吐いてしまったり、あまり良い状態とは言えなかった。

体力の低下からか、先日は室内で倒れ頭を打った様だが幸いにも大事には至らずに済んだ。

箸を持つ手が下ろされ、視線が合わずダイニングテーブルに座る里美の上半身がフラフラと揺れている。


「美味しいのに…ごめんなさい。」

「ん、吐きそうか?」

「違う。急に、眠くて…」

「気にするな。とりあえずリビングでもベッドでも横になれ。倒れたら危ないぞ。」


先日の様に突然倒れ打ちどころが悪ければ命にも関わるだろう、修二が身体を支える。

とりあえずリビングで横にさせると、すぐに脱力し意識を失った。


「まま、ねんね?」

「そうだね。優梨もご飯ちゃんと食べて、お風呂入ったらねんねだよ。」


修二の腕の中の愛梨は一人まだ熱が下がらず食欲がなく、ミルクならば飲んでくれる。

こんな状態の家族を残し、修二は日々出勤する事に不安を抱いていた。



子ども達もそんな里美の状態を察しているのか、幼いながらに母親に甘える事を我慢しているらしく、その分修二への反動が激しかった。

思いっきり甘えて来る子、癇癪を起こす子、特にママっ子の亮二は圧倒的に後者だ。


「やーだーなのー!ままとねんねしゅるのー!」


別室で眠る様になった里美の元で眠りたいとダダをこねる亮二。

寝かしつけしようにも、その母親は既に深い眠りについていた。


「ママはもうねんねしてるから、亮くんのことトントンしてくれないよ?一人でねんね出来ないだろ?」

「ぱぱが、おーくんにしてくれるの。」

「パパもママの所でねんねするのか?」

「しょう(そう)なの…」

「パパがあーちゃんとゆーちゃんの事トントンしてあげないと、可哀想じゃない?」

「あーちゃんとー、ゆーりもいっしょ。」


修二は笑みを含めながら息子に問う。

亮二はみんなで寝たかったのだ。


「じゃあ明日からな。ママも愛梨も優梨もみんなで一緒の部屋でねんねしような。今日はパパといい子におやすみだぞ。」

「うん!」



翌朝も変わらぬ里美の様子。

修二は里美と子どもたちの様子を気にかけながらも出勤時間となった。


「桃瀬、子どもたちのこと頼むよ。」

「行ってらっしゃい。」


修二はこの状況をどうにかしなければならないと思っていた。

精神的に状況の良くない母親とその子ども達を家に残し、何も起きないわけがなかった。


「どうしたもんかねぇ…」


車を運転しながら口にしたその言葉は、普段悩みなど抱えない修二が今現在、頭の中の大部分を占めている事だった。

仕事中も気にかけることは家族の事ばかりであり、上司もその様子を気にかけた。

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