第8話 義父と花田課長①

◆義父と花田課長


 昼休憩が終わって仕事についても、由美子から聞いた話が頭から離れず集中できなかった。

 パソコンのディスプレイを見ても、その中に誰か知らない男の姿が映っているような気がしてならない。

どっちにしても、花田課長のことは気の毒な反面、いい気味だと思っている。

 これまで、あの男のセクハラでどれだけイヤな思いをしてきたことか。

 私は昔からセクハラが嫌いだ。誰でも嫌いだと思うけど、私は特に嫌いだ。憎んでいると言ってもいいくらいだ。

 おそらく私の父親のせいもある。私の父は、よく酒を飲む。

 夜遅く酔って帰ってくるなり、出迎えた私の体を抱きすくめ、別の女性の名前を呼びながら、胸やお尻に触れてきたこともあった。

「さゆりは、本当に可愛いなあ」

 その言葉は只の愛情表現だと思っていた。だが、違った。

 子供の頃は、それほどではなかったけれど、父の言葉・・いや、義父の言葉は私が成長するにつれて次第に酷くなっていった。

 高校に上がった頃、「さゆりは俺の好みにピッタリの女だ」と言ったり、「さゆり、今度一緒に風呂に入ろう。父娘の親睦を図ろうじゃないか」と誘ってきたりした。

 もちろん一緒にお風呂に入ったりなんかしない。それなのに何度も言われたし、着替えを覗いてくることもあった。

 母に言っても、「あの人はそういう人なのよ」とか「さゆりと仲良くしようとしているだけなんじゃないの?」と言って全く取り合ってくれない。

 母がいる時は安心だけど、母が留守の時は怖くてしょうがなかった。

 夜は部屋に必ず鍵をかけて寝た。それでもドアをガチャガチャして開けようとするときは怖くて眠れなかった。


 社会人になれば、家にいる時間が減るから、義父と顔を合わせる機会が減り、助かると思っていたら、会社の中はもっと酷かった。

 会社は、セクハラ満載だった!

 極めつけは、私が配属された経理部には、よりによってセクハラの象徴のような花田課長がいた。あの男には、セクハラ発言はもとより、もっと酷いことをされたりした。

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