【短歌】猫と本と読書家

ハルカ

我々は似た者同士 飽きもせず猫にまたたび私には本

美しい言葉も猫の碧い目も 澄んだ硝子ガラスの欠片で出来てる


もふもふの毛並みに指を沈ませる 本の紙よりやわらかな白


図書館のコンクリートに迷いなくまっすぐ伸びる猫の足跡


月明かり夜の路地には猫集う 我が家の床には本集う


寝そべって恋愛ものを読む背中 猫が乗っかり胸が苦しい


小説の急展開に驚いて声をあげれば猫逃げてゆく


仲直りする方法は辞書にない ネコと和解を ちゅ~るあげよう


ひだまりの君の背中が愛おしい 丸ゴシックは香箱に似る


積読のビルの谷間に揺れる尾よ 怪獣の声ニャオンと響く


SFを熱く語れば宇宙猫 猫には少し難しいかな?


完璧な推理の続きは夢の中 安楽椅子に飼い猫眠る


六本の指があるなら言の葉もつかめるだろうか幸福の猫


西洋の猫は長靴ブーツを履くらしい 隣のミケは白足袋を履く


小説の猫は名前がなかったり いっぱいあったりルドルフだったり


注文の多くない猫 春の日に眠るばかりの年老いた猫


小説は数多あまたの世界への扉 どれかひとつは夏に繋がる


いつの日か虹の橋にて君を待つ 静かに眠る背中をなでる


野良猫が風と落ち葉を連れてくる秋の夕暮れ静かな読書


ぺらぺらとページをめくる猫又の口絵はどこかうちのに似る


冬来るひとりは少し寒過ぎる 本の合間に亡き猫のひげ

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