第11話

「お頭……食糧庫が空になりやした……後は酒樽しかないでやすよお……」

「えええええっ!! マルガリータ! お前、食い過ぎだぞ!」

「あ……ごめん……いつもの調子で食べちゃってた」


 飯が終わると、壁にある髑髏の燭台の明かりで照らされた。俺たちがいる部屋へと、男たちがぞろぞろと集まってきた。


 不思議な事に凶悪な盗賊団の男たちが俺に懇願してきた。


「ああ、お頭に息子がいたなんて……俺たちのお頭はとうに死んでしまった。だから、お頭の息子であるあなた様にどこまでも着いていきやす!」

「お頭がラピス城を守るってんなら任せて下さい!」

「お頭……先代のオニクボ頭領の息子なんでやすよね! なら、俺たちはどこまでも着いていきやすよ!」


 はて?

 これで、辻褄は合ったように思うが……。

 まあ。こいつら怖いし。むさ苦しいが結果的に良かった……のか?


 俺の親父って盗賊団の頭領だったけか……? 普通のサラリーマンだったはずだ。それも会社に蟻のように働かせられていて、いつも泣いていたっけ。確かに、いつかでっかくなってやるっていってたけど……。親父もこの世界へ来て盗賊団の頭領にでもなったんだろうか?


「へ? はあ? 頭がすごく混乱するぞ???」

「それでは、お願いしますね。鬼邦くんは、正真正銘の黒の骸盗賊団の頭領の息子なんです。これからすぐにラピス城へ向かってください。私と鬼邦くんは空を飛んでいきますから」

「へ? へ? え?」


 勝手に話をずんずんと進めるマルガリータの横で、俺は混乱したままだ。

 髑髏の燭台の炎で盗賊団の男たちの顔が見えるが、どれも体が震えてしまうほどの凶悪そのものだった。


 俺はなんでこんなところにいる?

 なんで、盗賊団の頭領の息子なんてやっている?

 今まで普通の高校生だったんだぞ!

 それよりソーニャは……。

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