第46話 祝福されてるのに
「今、専門家に治療してもらってるそうよ」
母のアリシアが、エリサに言った。
「専門家? いつもの病気じゃないの?」
「……もあるけど、心が何処かで迷子になってるって診断だと聞いたわ」
アリシアも心配そうであった。
エリサもそうだ。
途中から彼の気配は消えていた。
イリアスの圧倒的な力のせいだと思っていたが、それだけでは無いようだ。
もしかしたら、あのリカルドのしたことを見ていたかもしれない……。 そして、心の目を閉ざしてしまったのかしれない……。
あのことは、エリサの心にも深く刺さっていた。
もし、ティランがいっしょにいたら、イリアスはカタリナを救うためだと言って、彼に託したと思うとゾッとした。
「エリサ、お前は、私とサントスに行くのよ」
「母様?」
母の突然の言葉に、思考の追いつかないエリサである。
「聞くところによると、デュール谷で暴れまわって、結界にヒビを入れてるんですってね。閉じこめらるから嫌で帰りたくない、とか?」
「だって~」
「気が付いてる?お前の精霊が半分になってるの?」
「あっ!! そういえば、針葉樹の貴婦人と、泉の主がいないわ!!」
「神に付いて行ったようね。あの方の一部としてね。火竜の精は、火竜の一部だし、こんな下位の風の精霊は、私でも引き取らないわよ」
アリシアは、未だにエリサの頭の上で目を回してるリカルドを指差して言った。
「母様!! リカルドは、結果的に私を助けてくれたのよ」
「人間に戻れば、一流の魔法使いにだってなれたのに……そうそう、私もサントス勤務になったの。レフもサントス神殿の警備騎士から巡礼騎士を育てる計画をしてるのですって。親子で西域で暮らしましょう」
「私は何をすればいいの?」
「取り敢えず、学問所で出直しなさい。学び舎で暴れたそうね?」
アリシアはエリサを睨む。
「だって~」
「今のお前には、火竜の精と、落ちぶれた風の騎士しかいないわ
リカルドが元の力を取り戻すには、数年はかかるでしょう……
つまり、エリサも力が使えないってことよ」
「リカルドの力が戻るまで、他の精霊と契約すれば良いわ」
「忘れたの?リカルドは、あなたを祝福してたの。自分から離れることは出来ても、あなた側からは何も出来ないのが祝福よ」
(((得意な風の力が、あと数年も使えないなんて!!)))
エリサの顔が、カエルのように膨らんだ。
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