第44話 天界へ
イリアスは、ディハルドと自分とを光の縄で括り、飛び立とうとしていた。エリサは、まだ決めかねていた。
「迷う事なのか!?」
リカルドは言う。
「だって……谷に帰ってもまた閉じ込められてしまうわ……」
もとのような窮屈な生活はもう嫌なのだ。
この旅で自由の楽しさを知ってしまった。
「さあ、姫!!」
エリサは、そろりそろりとイリアスの方へ歩いて行った。
イリアスはエリサの手を取ると浮かび上がった。
その時に、急に強大な風が吹いた。
<これ、リカルド! おやめなさい>
「うるさい!! 思い出したよ!! 俺は生まれながらの風使いなんだ!! 奥方の名前も知ってる!! 奥方、リザベータ!! 力を借りるぜ!!俺の本当の名はリカルド・マーシュじゃなくて、リカルド・ストリ・カスパールだ!!」
<イリアス様の恩情をお忘れですの!?>
半透明の風の奥方は、リカルドの頭上に移動していた。
「リザベータ、我に逆らうか?」
<いいえ、いいえ! リカルドがわたくしの力を引き出しているのです>
上空に乱気流を起こして、飛ぶのを邪魔していた。
イリアスも一人ならモノともしないが、二人のオマケ付きでは慎重にならざるを得なかった。
「行かせねぇぜ!! エリサ!! お前はミシャールの嫁になるんだろ!?」
イリアスがクスリと笑った。
「そなたが貰ってやると言う発想は無いのだな……大分精霊らしくなっていたのだな……」
「いらねぇよ!! 身体なんか!! 俺はアンナのこともアリシアのこともエリサのことも忘れたくはないんだ!! 身体なんか持ってけ!!」
「仕方ない奴よ、下位に落とすぞ。我に逆らったのだから。カタリナの件の礼だと思ったに。
姫も諦めよう。だから、リザベータをこき使わないでくれ。そなたの身体の器を回収する。風を止めてくれたら出発する。
リザベータ、後のことは神殿に任せたと伝言を頼む」
<承知しましたわ。イリアス様。わたくしは自分の消滅の時まで、地上に留まって、人間を見守り続けます>
「我との約束を覚えていて嬉しいぞ」
イリアスは、微かに微笑んだ。
そして眩い光にエリサは目が眩んだ。
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