第43話  エリサ、天界に……?  

われの姿を見ても、恐ろしいと思って欲しくなかっただけだ」


「これ以上、そなたを地上に置いておけぬ」


 イリアスが、溜め息をつきながら言った。

 そこにアヴィンが飛んできて、ディハルドの前に立った。


「「イアン様を何処に連れて行く気だ!?」」


「天界だ……我も行く故、大事ない。そなたは、その大岩の番でもしておれ」


 イリアスは、アヴィンの方を向くと、彼は、ドトール山の山頂の大きな岩に縛り付けられた。


「邪魔をされても迷惑だ」


「「「この野郎!!」」」


「さて、ディハルド。父神の所へ帰ろうぞ」


 ディハルド神は頷いた。

 この五年で、どのくらい北の地の人を狂わせたのか、見当もつかない。

 イリアスに言われて、エリサの涙を見て、やっと人の心に寄り添うべき自分の役目を思い出したのだった。

 でも!!


「「われは、地上で人族を見守って行きたいのじゃ」」


 闇の神の本心だった。

 だが、光の神は首を振る。

 五年間、人々を苦しめてきた事実は消えない。


「カスパールの王子(リカルドのこと)、その姿が気に入ったなら、我からの餞別にするぞ?」


「良いのか?俺!500年前に死んでるのに」


「時空を飛ばさなれなければ、生きていただろう。デユール谷の姫の母たちと同じくらいの年であろう?過去の記憶は消すが良いが?」


 突然、イリアスが変な事を言ってきた。


「「過去の記憶を消すって!?アンナのことをもか!?」」


 リカルドは、素っ頓狂な声を出した。


「人間に、精霊だった過去はいるまい」


 イリアスは、当たり前のように言った。そしてエリサを見て、


「デュール谷の姫、我らと来ぬか?天界も良いところだが、退屈過ぎるのだ。我らを楽しませて欲しい、」


 エリサに向かって、手を差し出してくるイリアス。

 エリサは、フラッとイリアスの方に向かって歩き始めた。


「ねぇイーリャは、もう地上に来ないの?」


「今回はな……前に天界に帰ったのは、われの半身が弱っていたためだ。今回はこの世の守護神であるはずのディハルドを連れて帰るのだ。我だけが残る訳にはいかぬ」


「ふうん……そうなんだ……」


「デュール谷の姫。ディハルドもそなたを気に入ってるようだ」


「「「馬鹿!!行くんじゃねぇぞ!!アリシアやミシャールにレフに合えなくなっても良いのか!!」」」


 リカルドは金色の髪を振り乱して叫んだ。

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