第41話  騎士、リカルド

「これで、何をしろって言うの?」


 エリサは、神剣アフレオスに向かって問いただした。


{足元をを地中深くに剣を突け!!}


 <ちょっと待てよ!! エリサは、まだ13でしかも女だぞ。しかも若長とも親交があるんだ!! 残酷な事をさせるなよ!!>


 風の騎士が、エリサの頭上から怒鳴ってきた。


{カタリナを救うには、もうこれしか方法がないのだ……カタリナの大地の力は強い。どの魔法使いでも、カタリナが自らかけてしまった呪縛からは解放出来まい}


「奥方は、ディハルド神の願いを聞いただけでしょう? 悪い事なの?」


{この花の香りは、乾いた砂漠の地方には、香しい匂いだが、湿気の多いこちらの地方では、幻覚を見るものになるらしい……長く吸っていると中毒にもなるぞ。見よ、山の下の村を}


 エリサは飛んで、山の下にある村を眺めた。

 こんな大雨が降ってるのに、村人は雨なのに畑仕事をしていたり、外で酒を飲んでいる者もいた。


「何なの?」


{花の香りの作用で正常な判断が出来なくなっているだろう……。今はまだこの村だけかもしれぬが、ここに花が咲く限り、この地の人はどんどん、侵されてゆくだろう}


 <でも駄目だ!! エリサにやらせられねぇ!!>


{では、そなたがやるか?風の騎士にしてカスパールの星の王子よ}


 <嫌な呼び方をすんなよ!! 俺は精霊だ>


{ひと時、そなたに器を与える。受け取れ!!}


 エリサの持っていた神剣が、一瞬光った。

 その光がエリサの頭上に吸い込まれていった。


 そして、ドサッと鈍い音がした。


「痛いな~~ 急に身体が重くなっちまったじゃないか!!」


 エリサの前に現れたのは、金髪碧眼の美しい青年であった。

 古風な騎士の格好をしている。


「リカルド? なの?」


「この位置からのエリサは、初めてだな」


 二人は初めて向かい合った。


{カスパールの第二王子、早くしろ!!ディハルドに気が付かれる!!}


「いちいち、気に食わない呼び方するなぁ! エリサ、神剣を向いて俺に渡してくれ!!」


「う、うん」


 エリサは、アフレオスを抜いてリカルドに渡した。


 リカルドには、剣を突きたてる出来ところが目印でもあるかのように見えていた。

 そこに、肉体を得た精霊のリカルドが渾身の力でもって花園に神剣アフレオスを突き立てたのだ。


「「おりゃーー!!」」


手応えはあった。何かを貫いたようだ。

 するとどうだろう……ゼナの花が徐々に枯れ始めていくではないか……


それと共に何処からか、微かに「ありがとう」という女性の声が聞こえてきた。


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