第39話  山頂の花園

 山頂には、むせ返るようなゼナの花畑があった。


 闇の神は、花を摘んでは花びらを空に飛ばせる事を繰り返していた。


「北の地を一周して舞い戻って来たのか?ディハルドよ」


「……イリアスか、久しいのぉ」


 花畑の中程で闇の神は、山頂に着地した光の神に声をかけた。


「何ゆえ、我の娘を攫ったのだ!?」


「そなたの娘御……。か……。それで……大地の魔法が見事であった」


 エリサは、イリアスの怒りを感じていた。

(ああ、この神は元精霊王だ……本当はもっと人間臭いのかもしれない)


 精霊たちが、人間と同じように笑ったり、怒ったり説教をするのと同じだ。

 一つ目の恐ろしい姿の怪物の神はを見ないようにエリサは、ずっとイリアスの後ろに控えていた。

 一度見てしまったら、脳裏に残ってうなされそうな気がしていた。


「カタリナに何をした!!」


「この国に、ゼナの花を咲かせてくれとな。ゼナは砂漠の花ゆえにこの国では根付くことは無かったのだ。だから、ゼナ(精霊)の最期の力を使って、強大な大地の魔法使いを捜したのだ。そなたの領分の場所にいた故、その者の夢に干渉したのだ。夢は我が領分である……忘れられておるがな」


「それでカタリナは、そなたの意志を汲んだ訳だな。カタリナは何処だ?」


「自ら、身体を苗床として、花を咲かせてくれておるのだ」


「この花畑は、カタリナの魔法によるものか?」

 

「そうよのぉ~よき花園が出来たぞ」


ディハルドは、花畑の出来に満足していたがエリサには、イリアスの身体から湯気が出ているように見えた。

(((怒ってる、怒ってる~~なんで、そんなことしたのよ~?ディハルド神様~)))


「おや、可愛らしい娘を連れておるな。イリアス、その子にゼナに水をあげてくれるように頼んでくれぬか?上位の精霊を持っておる」


 イリアスは、黙ってエリサを振り返った。


「どうするの?雨雲を呼ぶ?何なら、花畑ごと焼き払っても良いのよ」


エリサはディハルドを見ないようにイリアスの耳元で囁いた。


「そなたなら出来ようが、ゼナの根がカタリナと一体化しているのだ。そこに本人の意思がある限り、そなたの魔法と喧嘩になってしまう」


「でも、この状態じゃあ奥方は!!」


「この花は、カタリナの命を懸けた魔法で咲いておる……。生還はもう無理だ……」


「そんな……何とかならないの?」


「デュール谷の姫、我とて出来ぬことがあると言った。我の娘故に、カタリナの意志を曲げられぬ。出来る事だあるとすれば、この状態からの解放だ」


「どうしたら良いの……?」



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