第38話  ディハルド神を崇める村

「「「ちくしょう!!せっかく竜の棲み処が分かったのに!!

 縦横無尽に飛びやがって!!分からなくなったじゃないか!!」」」


 アヴィンが、怒っていった。


「呆れた奴よ、それよりこの山間やまあいの村で良いのか?そなたの村は」


 アヴィンは横を見た。


「村に行っても誰もイアン様のことなど誰も知らないぜ」


「あら、どうして?闇の神様とお約束をしたのでしょう?北の地に信仰を広げるることを」


「それは、最初に神と移住した者達だけだ。この地には、竜神という水竜を崇める風習があったんだ。贄を出して水竜に魔族から守ってもらっていた。イアン様は、魔族たちの神でもある。

 この村には魔族は襲ってこなかった。それを祝してイアン様のために感謝祭を開いたそうだ。そして老人たちは、口々に姿を現わしてくださいと言ったそうだ。

 年寄りの願いを叶えようと姿を現したイアン様を見て、何も知らないこの地で生まれた若者の中には、気のふれた者ももいたそうだ」


「ディハルドは今何処にいる?」


 イリアスは、感情のこもらぬ声で言った。


「ドトール山の山頂だ……」


「案内いたせ」


 アヴィンは、力の圧倒的な違いを見せつけられているので、黙って山の方へ向かって飛び出した。


「一緒に移住をした者達にさえ、見捨てられたのか……」


 イリアスは、ポツリと言った。


「でも、それはあなたの所為せいではないでしょう?イーリャ」


「確かに……それでディハルドは、今まで北の地で何をしておったのだ?」


「魔族の巣巡りらしいぜ。ここには、暗黒時代前までしゅう帝国があったが、気候が良くなって、北の勢力が政権を取って、今は、エル・ヴァサロ帝国だ。極力人間を襲わぬように各地の魔族に呼び掛けていたようだ」


「では、北の民は南の民よりも幸せであったのかな?魔族の滅びた今となっては、分からぬ事よ」


 エリサは、一番の疑問をイリアスにぶつけてみた。


「ねぇ、何故イーリャがそんなに怒ってるの?」


「我が娘を拐いしこと、それから天界の創世神との約束だな」

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