第36話  竜の棲み処

 イリアスは、真っすぐに東に向かった。

 やがて、遠くに海が見える山の中腹に辿り着いた。

 心地よい風の通り抜ける山肌だった。

 エリサは、そこに見たことも無い竜が風に乗って旋回しているの見た。


「あれは風竜だな。相変わらず風竜の飛行は美しい」


 イリアスは、呟いた。


『アッチ、オニイチャン、イル』


「そうか」


 イリアスは、ブリジットを抱いたまま、山の麓に降りた。


『オニイチャン、ブリ、ナノ!!』


 ブリジットが人型のまま、洞窟の中へ入っていった。


「ブリジット!!人型じゃあ危ないわよ!!」


  イリアスはエリサの肩に手を置き首を横に振った。


 洞窟の中からは、エリサの知っている火竜の巣の匂いがした。

 でも、複数だ。

 こんな所にブリジットは一人で入って行ったのだ。


 しばらくすると、ブリジットを抱いた一人の若者が洞窟から出て来てきた。

 ブリジットと同じ赤毛で深い青色の瞳をした、美丈夫な青年だった。


 ブリジットは、嫌がらずに抱かれていた。


『これは……お初にお目にかかります、我が敬愛するお方。

 妹を家族のもとまで送って頂いて有難うございます

 私はジェイテッド、ブリジットの兄にあたります』


「ふむ、この山には風竜もいっしょに棲んでいるのか?」


『はい、地竜もおりますよ、近くの湖には水竜も。我々は、もう個体数が

少ないので、かたまって暮らしているのです』


「そうか、われがそなたたちの一族に出来たことは少ない。許して欲しい」


 イリアスは、目を閉じてしばし、赤毛の青年に向かって頭を下げた。


『や、やめてください!!魔族に連れ去られた妹を連れて来てくれたことだけでも感謝ですのに!!』


『オニイチャン、カミサマ、イジメルノ、ダメ!!』


 ブリジットは兄の顔をツネって怒っていた。





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