第3章 大山脈の北の国
第35話 大山脈越え
「デュール谷の姫、大山脈を越えるぞ」
「う、うん」
イリアスの真剣な顔にエリサは、旅の核心の部分まで来ていることを感じた。
「カスパールの王子、姫を守れ」
<俺は、ただの精霊だよ!!忘れてないからな!!天界から、突然アンナとの契約を切ってこの時代に送ったこと!!>
イリアスは風の騎士の怒りを笑って受け流した。
注:リカルドは,本来、エリサの母たちと同じ年代の生まれである。オアシスのカスパール王国の第二王子として生まれたが、兄王子の陰謀で時空を350年昔に飛ばされた。そこで命を落として、風の精霊となったが、当時の契約者と共に訪れた天界で、創世神の手で生まれた年代に戻されている。
今、リカルドの言ってるのは、この事だ。
「あれは、我のしたことではない」
リカルドは思い切り顔を歪めた。
「カスパールってあの、砂漠のオアシス……?」
エリサである。
<精霊の俺には関係ないことだ>
「あら、良いじゃない。リカルドの身元が分かってるなら、風の騎士から身分が上がったら、オアシスの王子って呼んであげるわよ」
「悪いがデュール谷の姫、その精霊はいつまでたっても若僧だと父神も言っておった。上位には行くが、下位に落ちたりと忙しい奴だぞ」
「何なの~~」
♦
「おい!!俺の故郷はもっと西だぞ!!」
ブリジットを抱いたイリアスとエリサ、捕縛されたアヴィン・ディアルは、デュール谷を真っすぐに行った大山脈の山に向かった。
イリアスはアヴィンの言葉を無視してそのまま山に向かって突き進んだ。
エリサもイリアスの後ろからついて行った。
一瞬の暗闇の後、空気が変わった。
振り返ると、大山脈が後ろに見えた。
「少し、寄り道をするぞ」
「!?」
「火竜の巣に寄ろうと思う」
イリアスが言った。
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