第34話  アヴィン・ディアル

「二つの蝶の髪飾り、指輪、ネックレス。これでカタリナの失踪当時のアクセサリーが揃ったわけだな」


 イリアスは、銀色の袋に四つの装飾品を入れて言った。


「これをどうやって、カタリナ様から奪って、アルテアの商人に売りつけたのかよ。おさのお屋敷の結界は、とても強いのよ。それをすり抜けてカタリナ様を攫うなんて……」


「カタリナが、自分でついて行った可能性もある…… 先ほど我らを見て逃げた若者が気になるな。追うぞ」


 イリアスは、デュール谷の結界を出ると真っすぐに北に向かった。


 そして、あっという間に黒髪の男がスカーフをなびかせているのに追いついてしまった。


「そこの男!!待て!!」


「ちっ!!」


 イリアスの言葉に、男は空中で止まった。


「待って!!イーリャ!!速いわよ」


 エリサは、こんなに早く移動したことが無い。


「おや、そなたが弱音を吐くとはらしくないぞ」


 イリアスは麗しく笑って、エリサを待ってくれた。


「逃げられちゃうんじゃない?」


「もう、捕縛している」


 見ると、イリアスの浮かんでいる下の方で銀色の網に捕まってる男がいた。


「まぁ……」



 ♦



 やがて、地上に降りて男への尋問が始まった。


「名前は?」


 イリアスは強めの言葉で聞いた。

 男は答えない。でも名前は先程エイミアに聞いていた。


「アヴィン・ディアルですってよ」


「ディアル……そうか、お前は北に向かったディハルドの信者の末裔か」


「うるせい!!俺は、神の願いを聞いてやっただけだよ!!」


「ディハルドに何を頼まれた?」


 イリアスは、声を荒げてアヴィンに詰め寄った。


「俺が神の力を受け取る代わりに、神の願いを聞くことにしたんだ

 もう一度、闇の神が崇められる様になるようにな!!」


「そなたたち、ディアルの一族が望んだはずのことだな」


「だが、魔族に襲われない俺らの村は、北の地の奴らには受け入れられなかった。その内、神といっしょに移住した奴らも神を蔑ろにしていったんだ。シンボルも忘れて!!」


「シンボル……??闇の神のシンボルって何だろう」


 エリサには、アヴィンの言ってることが分からなかったが、イリアスはかなり怒っているのは分かった。



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