第32話  デュール谷へ

「では、我らも出発するとしようか」


「待って!!」


 イリアスは、エリサを振り返った。


「あなたがティランじゃないのも、お母さんじゃなくて、娘を探してて…… 人間じゃないのも分かったわ!!でもこれから何処へ行くの?どうして私がいっしょな訳?」


「そなたが、我のあるじよ。そなたは神剣のアフレオスを抜き、我を目覚めさせたのだ」


「言ってることが分かんな~~い!!あんな怪物の神様となんか会いたくないんだけど!!」


 エリサには、全然ピンとこない。


「分からぬか?そなたの声なら闇の神にも届くかもしれぬ。だから我といっしょに行って欲しいと言っている」


「「だ~か~ら~!あの怪物神様に会うのは嫌なのよ!」」


 エリサは、突っぱねる。

 そこにブリジットに、言われてしまった。


『勇者サマ、闇の神サマ、コワク、ナイよ。ブリもコワクナイモン」


「ブリジット……」


「決まりだな、火竜の姫。ディハルドの気配は何処にあるか分かるか?」


 イリアスは、ブリジットを抱き上げて聞いた。


『ウ~ンとね、アノ山ノ向コウ』


 ブリジットの小さな手が指差したのは、微かに見える、大陸を南北に横断する大山脈だった。


「それでは、行こうか」


「待って!!あなたのことはなんと呼べばいいの!?」


「古来より略名は、イーリャだ」


「分かったわ。なんかよく分かんないけど、私がカタリナ奥方探しに同行した方が、闇の神様を説得出来るかもってことで良いかしら?」


「そうだな、それにそなたの精霊はみな上位だ、力を借りることになるかもしれぬ」


「その前にデュール谷に寄っていいかしら?」


「何か故郷に用があるのか?」


 エリサは頷いて、イリアスからカタリナの髪飾りを受け取った。


「従妹がこの髪飾りの片割れを持ってるわ。これがアルテアで処分されてたのなら、人間だって関わってるはずよ。デュール谷へ行って、エイミアにもっと詳しく買った時の事を聞くべきだと思うわ」


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