第31話 カタリナの行方
イリアスが、金色の髪飾りを持つと二人の前に幻影が現われた。
エリサが前に見た、ティランに似た人の幻影だった。
精霊のように半透明で透けているその人は、イリアスを父と呼んだ。
「カタリナ、何処にいるのだ?我の力の及ばぬ所か?我の力をもってしても、そなたの行方が知れぬ!!」
(お父様……わたくしは、かの神に選ばれてしまいました……)
カタリナは涙を流して訴えた。
「神…… ディハルドか!?」
カタリナの幻は、俯いたまま頷いた。
エリサは、さっきの一つ目の怪物を思い出して身震いがしていた。
「ディハルドは、何をそなたに要求したのだ?」
(わたくしの魔力ですわ。かの神は、僅かですが光の力も持っています。
そこから辿り、わたくしを見つけ出しました)
「精霊のゼナが与えた力だな…… で、彼は何がしたいんだ?」
(お父様、かの神に失礼ですよ。もう一度かの神の信仰が増えるように力を貸してくれと言われましたわ……)
「一匹の精霊の力でか?」
(もとより、夜の世界の支配者ですわ……)
「この世界に最初に生み落とされたのが、闇の神のディハルドだ。
我らの眷属の精霊族と魔族は、ディハルドの心の葛藤から生まれた。
ディハルドの心の闇からは魔族が生まれ、それを打ち消す清い心から精霊族の眷属が生まれたのだ。だからこそ、魔族はディハルドの事を我こその神だと神と思い込んでいるのだ」
「ね…… ねぇ、人間は?」
エリサがおずおずと会話に入った。
イリアスがエリサを振り向く。そして静かに言った。
「魔族と精霊族の争いが神代のほとんどだった。その後混沌とした時代に何の力も持たぬ人族が現われた。魔族は最初は、人族を襲うことは無かったのだがな。
ディハルドが精霊族のゼナと密会して、人間の守護にまわったことで、魔族が怒って人間を襲うようになってしまった。
我らが考えた苦肉の策は、我らの力を人間に渡すという事だけだ」
「それが魔法使いや、精霊使い……」
「魔族は、我の手で全滅させた、もう大陸にはおらぬ。山の中や、街の中でひっそりと暮らしておるモノもいるが…… 被害の無いようなので放ってあるだけよ…… カタリナ、何処にいるのだ?」
エリサに説明を終えると、再び幻影の方に振り向いて聞いていた。
「北……」
幻影はそれだけ言うと消えていった。
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