第30話  光の神様の娘?

 <ほら、エリサ。ミジアに習っただろ?正式な神への挨拶>


 頭上の風の騎士に促され、エリサはイリアスに膝を折って、挨拶をした。

 …… といっても、とても不本意だったが、リカルドが頭をツンツンと押してくるのだるのだ。


「リカルド~痛いわよ~分かったからやめてよ~!」

((まったく、もう!))

「イリアス・エル・ロイルの神にご挨拶申し上げます。エリサーシャ・フレイドルでございます」


「見事に心のこもってない挨拶だな。我もこれほど軽視されたのは、初めてだな」


 イリアスは、うっすら笑って、エリサを見ていた。


「それよりデュー谷の姫、砂だらけだぞ」


 イリアスは手をエリサの方にかざすと、水を含んだ風を吹かせた。

 その風が強くて、危うくリカルドも吹き飛ばされそうになった。


 服がまくれ上がったので、エリサはまた叫んでしまった。


「「「何するのよ!!」」」


 リカルドは、力の圧倒的な違いを見せつけられた。

 エリサの肩で同じ上位の水のぬしにしがみついていた。


 エリサの魔力の帯びた声で、砂嵐が舞った。


 それを水の結界で、散らしたイリアスである。


 その時に、エリサのミジェーリアの土産の髪飾りが地面に落ちた。

 ポケットに入れてあったものが、突風で出てしまったのだ。


「あ~あ!!」


 エリサは、砂の上に落ちた金の蝶の髪飾りを拾おうとした。

 その前に、イリアスが髪飾りを拾ってしまったのである。


「カタリナのものだな……」


「ロイルおさの奥方のものよ」


「我の娘の事だがな」


 エリサは、一瞬、思考が停止した。


「えと?」

「…… リカルド…… どういうこと?」


 <カタリナ・アシス姫は、銀の森の北に隣接しているビルラード王国の三代前の王、英雄王のゼフラード王の晩年に生まれた姫だ。ゼフラード王には三人の子供がいて、長男が先代の賢王で有名なラルフォン王で、今のビルラード王は次男のウィルレード王子の忘れ形見なんだ>


「じゃあ、ティランがあなたに似ているのは……」


「逆だな。あの者が我の血筋ゆえに、姿が似ているのだ」


「ちょっと待って!なんで神様が人間の世界で王様なんてやってるのよ!」


「故あってのことだ。まだ、われも完全体では無かったので、銀の森に帰らずにいたのだ」


ますます意味の分からないエリサである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る