第24話  オアシスへ

 ティランは、見違えるように飛ぶのが上手くなっていた。


「アルテアに行くんじゃないの?」


 確か、アルテア王国は、北の方である。ティランは、南の方向へ向かっている。


「いや、アルテアには行かぬ」


「え?だって……」


「それより、砂漠に強力な力を感じる…… 古き力だ…… 急ごう」


「……」


 エリサは、ジッとティランを見てしまった。

 頭上の風の騎士も大人しくなってしまっている。


 もともと、風の騎士は奥方と旧知の仲なので、頭が上がらないようなのだが、戻って来たティランと奥方を見たリカルドは<<あっ!!>>と声を上げた切り、エリサのどんな質問にも沈黙を貫いている。


 ディナーレの南には、広大な砂漠地帯が広がっていた。

 古王国、ドーリアの王都、アスタナシヤがヴィスティン王国に併合された時、アスタナシヤの住人は、砂漠のオアシスに逃れて住んでいだ。


 そして、数十年が経ち、そのオアシスのいくつかが国として独立宣言をしている。


 ティランは、真っすぐに南下した。

 ほぼ、砂漠の中央だと思われる所に砂嵐が起こっていた。


 彼は空中で立ち止まって、からくり箱の中から二人分のゴーグルを出した。


「入りますよ」


「ここに?」


「はい、ではお先に」


「ちょっと、置いて行かないで!!」


 驚いたことに、砂嵐の中に廃墟のオアシス跡地があった。


「もと、カスパール王国。40年位前に砂嵐で滅んだ国です」


「そうなの?」


「懐かしいか?カスパールの第二王子よ」


 ティランの声がまた低くなった。


「また、おかしいわよ」


 エリサの声でティランは我に返ったらしく、彼女に棒を探すように言ってきた。


 時々、小山が見えた。あれが建物の後であろう。


「あっちです、あちらからすごい気が感じられます」


 ティランは、迷うことなく進んで行った…… 目印があるみたいに……


「ここです、掘りましょう」


 二人は風の結界を張り、余分な砂が入ってこないようにした。


「ね?聞いて良い?」


「何をです?」


「ヴィスティンの王宮を壊してきたから、神殿に怒られるかなって」


 エリサは、力を暴走しすぎたことを反省していた。


「タイミングの問題ですね。ヴイスティンには、魔王信仰の噂が立ってたんです。 ロイルの神殿は、魔王信仰を認めてません。しかも、表向きロイルを受け入れて、裏で堂々と魔王信仰が行われたとあっては…… 光の神殿だって怒りますよ。それで騎士団が、王宮に様子を見張ってたみたいです」


「ま…… 魔王って何?」


 ティランは、掘っていた手を止めて、綺麗な顔を物凄く歪めて言った。


「魔族たちの王ですよ。昔は、闇の眷属が蔓延はびこっていましたから…… さすがに現代は生贄とかはしないみたいですけど。

でも王宮を破壊したおかげで、地下への秘密の祭壇所への入り口が見つかったとか?この場合は、セーフだと思いますよ」


 ティランは、手が届かなくなってきたので、掘った穴の中に降りてしまった。


「奥方、頼む」


 <了解ですわ>


 穴の中の砂が払われ、土が見えて来た。乾いた土だった。

 それを水を含んだ風で取り払って行くと、からくり箱が出て来た。

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