第18話  ディナーレへ……

 ロサの療養所で、しっかり二日休みをとった二人は、ヴィスティン王国の王都ディナーレへ向かうことにした。


 身体の弱いティランが旅をする事に反対していた風の奥方が、ティランの意見を尊重して、早く旅を終わらた方が彼のために良いだろうと、全面的に協力してくれる事になったために、旅は一気に進むことになった。


 幸い、ロサの療養所には、二人の着替えになりそうな服も置いてあった。

 ティランはともかく、エリサは寝間着で飛び出してきたのだ。

 姫が二年前に着ていたというドレスが今のエリサにちょうど良い。


 ♦️


 ディナーレは、元ドーリア王国の王都『アスタナシヤ』だ。

 ヴィスティンでも、西の方にある。


 そして、ディナーレは大きな街だった。


「何処で手に入れてたと言ってましたか?」


「大通りの露店商だと言ってたわ!本当にこんな広い場所から探す気?」


「ちょっと、まっててください。」


 ティランは、エリサを木陰のあるベンチに残して、少し離れたところにある公園に行った。

 あそこで、風の奥方の力を借りて、アクセサリーを扱う露店商を探すつもりなのだ。


(ちょっと、綺麗なだけじゃないかも…… 高位の精霊を操るのがとっても上手……)


 その時だった。


 <サリィヌ、お帰りなさい……>


 エリサに声が聞こえてきた。

 エリサの座っているベンチの隣に大きな針葉樹がたっていた。


「私はエリサよ、サリィヌじゃないわ」


 <良いのよ、あなたが覚えていないだけ…… 私には分かるわ。あなたが元はドーリアの巫女だったことがあるの。私たちは同じ名前で、何時いつもあなたに呼びかけていたけれど、その時のあなたに私が視えなかった。でも今は視えるのでしょう?聞こえるのでしょう?私の声が>


「ええっと…… つまり契約したいということで良いのかしら? サリィヌね? 私は、テュール谷のエリサよ。エリサーシャ・フレイドル」


 <私は、これでもここが、ドーリアの頃から生き残ってるわ。針葉樹の貴婦人と呼んでね>


 針葉樹から、半透明な貴婦人が出てきて水の主の隣に行った。


 思いがけず、大地の力を得て、四大精霊をコンプリートしてしまったエリサである。








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