第15話  出発

「でも、このお屋敷は結界が張ってあるって聞いたわ」


 エリサは、ティランに聞いてみた。


「僕を誰だと思ってるのですか!?この屋敷で生まれ育ってるのですよ。結界の結び目くらい知ってますよ」


 ティランは、エリサの腕を掴んで屋敷の裏側にまわった。

 屋敷の裏は、色々な地域の木々が植えられていた。


 ティランは、エリサの頭上を見て風の精霊の存在を確認した。


「姿を隠してください」


「分かったわ」


 彼の言ったところには、館の警備騎士がいたのだ。

 風のマントの術でおのおの姿を隠すと、警備騎士の前を堂々と歩いて通って、やり過ごした。


 警備騎士の前を通り過ぎて、森のような木々の中へ入って行った。高い木と低い木の境目に結び目があった。

 かなり、強力な結び目だ。それだけ強い結界であることを示していた。


 __が、ティランが流暢な呪文を唱えると、一人分が通り抜けれるような穴が開いた。

 エリサは、目がパチクリである。


「さっ、早く!!」


「えっ…… ええ!!」


 その時に、けたたましいベルの音がなった。


「何?」


 エリサがティランを見ると、彼は悔しそうに膝を見てみていた。


「この前に脱出した時に、ジェドにバレて手を回されてましたね……どうしましょうか……」


「そんなの簡単よ。振り切るだけだわ!!」


 今度は、エリサがティランの手を取って言った。


「リカルド、飛ぶわよ!」


 <この状況で二人はエライぜ。若長は、自分の事は自分でやってくれ>


「リカルド、良いから飛びなさい!」


 エリサが怒って風の騎士の力を引き出した。

 突風が吹いた。


「わわわっ……」


「ひょっとして、飛ぶのは初めて!?気持ちが良いのに」


 ティランは、真っ青な顔でエリサにしがみついていた。


「高位の精霊を持ってるのに、宝の持ち腐れじゃない!」


「奥方は、僕の命令には忠実ですよ。変な使い方は、習ってないだけです」


「変?飛ぶことが?」


 エリサには、理解が出来なかった。


「まっ!!結果オーライよね?屋敷からは抜け出せたんだし!」


 二人は、銀の森を西に向けて進んでいた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る