第10話  エリサの反抗

「ロイル姓なんて、ただの魔法使いでしょう?何がそんなに珍しいの?」


 エリサのこの言葉で、彼女は、間違えなくクラスの全員を敵にまわした。

 みな、呆然とエリサを見た。


 エリサは、気にした風でもなく椅子に座って窓から外を見ていた。


 授業が始まった。風の呪文の授業時間だった。


「ダドリー師、ここは、編入生のエリサ-シャに、お手本を見せてもらえませんか?」

 

 クラスメイトの視線は、エリサに注がれる。


「そうだな、エリサ-シャ。そなたの魔力が見たいものだ」


「必要ありませ~ん!風の力も火の力も水の力も使えま~す!力は、人に見せるものではないと、教わってま~す!」


 ダドリー師は、唖然とした。

 こんな反抗的な生徒は、初めてだった。


「エリサ-シャ・フレイドル。これは、命令だ。皆の前で、そなたの力を見せてみなさい」


 ダドリー師は、強い口調でエリサに言った。


「手加減しなくて良いならやります」


 ダドリーは頷いた。

 エリサもウンザリしていたので、頭上の風の騎士に合図を送った。


「リカルド、暴れて良いそうよ」


 <こんな狭い所でか?>


「そうね~部屋を壊したら怒られそうね。まあ、ボチボチの力でお願い」


 <承知>


 エリサが上を向いて、独り言をしばらく言った後、突然教室の中に風が吹き始めた。

 かなり強くて、カーテンは飛ばされ、生徒達の教科書も吹き飛んでいた。

 小柄な子など、身体が浮きそうである。

 そんな恐怖もあってか、教室は騒然となった。



「もう、良い。エリサ-シャ」


「まだ、火と水が残ってます」


「今、やったことを呪文を使ってやってみなさい」


 ダドリー師が言った。エリサはポカンとしている。


「出来るわけないわ。呪文なんて知らないもん」

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