第7話  結界を破壊!!  

 <エリサ!!>


 風の騎士は、エリサの後を必死に追った。エリサの無意識の魔力は、精霊のリカルドがともすれば引きずられることがある。


 今のエリサは、無意識に髪飾りから出てきた幻影を追っている。あの幻影に何かを感じたのか……風の騎士には、分からなかった。


 幻影は、何かを探すようにデュ-ル谷の中をさ迷っていた。


「待って!!なにを探してるの?」


 彷徨っていた幻影は、やがてデュール谷の結界まで来ていた。そして、スルリと結界を抜け出していった。


 エリサは勢い余って結界に激突した。


 <大丈夫か!?エリサ>


 風の騎士が、心配そうに言ったがエリサには届いていない。


「「「もぉ~~この壁、邪魔!!」」」


 こんな声が、13歳の小柄な少女の何処から出るのかである。

 魔力を帯びた雄叫びの所為で、エリサの精霊たちは、一瞬にして力を持っていかれた。


 数千年以上、壊れたことのないデュール谷の壊れた瞬間である。

 更に外に出ようとした時に、エリサはあらがえない大地の力で引き落とされ、頑丈な根っこの様な縄でグルグルに縛り上げられてしまった。



 ♦



 同じ頃、銀の森の光の神殿では___


 予見師が、銀の森の北東方向に大きな光の力を持つ子が、現れたことが予見された。


 その事を聞いた三賢人の一人、アレクサス・ロイルは気が気でならなかった。

 魔法使いの血は遺伝する。この世界では、至極当然のことだった。

 古くは聖なる光の神の子孫まで、存在するのだ。

 アレクサスの家、フレイドル家だってそうだ。男子に火の使い手が出る。他にも何人も魔法使いを輩出してきた家柄だった。


 アレクサスの母は、エル・ロイル家から降嫁してきた人で自身もそれが自慢だった。

 アレクサスも大国の姫を娶って、二人男の子を儲けた。一人は早逝したが、次男には火竜の精が祝福に来てくれた。

 学び舎で同級生だったという、次男の妻もロイル姓の一流魔法使いであった。家柄は神官の家系で、二流魔法使いの家庭だったが、努力してロイル姓をもらった褒美に結婚を許したのだ。

 二人の間に生まれた女の子が、よもや、あんな凄まじい力を持った子だとは……

 想像も出来なかった、アレクサスである。

 その子の安全と未来のために、銀の森に関わらせない、というのが妹のミジェーリアと相談して得た結果だった。

 では、隠すしかない。デュール谷の結界の中で育て上げるのだ。

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