第5話  精霊使いのエリサ

 デュール谷は聖地、銀の森の直轄地である。そして、デュール谷は広い。

 ディヌデルムの町や、ディニル村、ディスヴァ砦。谷の中心部の谷村、涸れ谷、はぐれ谷、魔竜谷、の総称が、デュール谷である。


 デュール谷は、精霊が生まれる所でも有名である。

 泉や、釜土や、粉を引く水車の風の調節するまで、村人のほとんどの人が、精霊の力が使えた。


 エリサは、デュール谷の谷長の谷長の三番目の孫として、13年前に生を受けた。

 学び舎の同級生だった、神殿所属の魔法使いのアリシアを母に、デュール谷の谷長の次男で、火の魔法使い、魔法鍛冶師のレフを父に生まれた。


 エリサの魔力は飛び抜けていた。

 谷長の裏の泉の主は、エリサが生まれた時に祝福に来た。そして、一流の証であるロイル姓の魔法使いである母、アリシアの精霊リカルドまでも、エリサを祝福をしたのだ。

 そして、父の火竜まの精まで奪っていた。

 エリサにとって、精霊の力を借りることは、息を吸うことより簡単な事だった。


「「「エリサ!!」」」


 いつものように、ここから先は、行ってはいけないというギリギリの結界の所まで来ていた。


 風の精霊のリカルドに飛ばせてもらって、上空にいたエリサに幼馴染みのミシャールが話しかけてきた。


「また、結界の外を見てたのか!?ミジア様が、ヴィスティンからお戻りだぞ。エイミアも帰って来たぞ!早く、降りてこい」


「良いなぁ~~エイミアは!いつもミジアの治療先についていけるんだもの~私なんて、結界の中でしか自由に動けないなんて!不公平だわ!」


「エイミアには、両親がいないんだ。お前には、二親がいる。それだけでエイミアよりも恵まれてるんだぞ。エリサは」


 明るい金髪と空色の瞳の、美丈夫な男が言った。


「ううん、エイミアが羨ましいんじゃない。 私が中途半端なのが嫌なのよ。従兄のリックみたいに学び舎に行くでなし、同じ年のリーリアみたく巫女の修行をする訳でもなく……」


「エリサはどうしたいんだ?」


 少し、苛立っていたエリサにミシャールは、おでこを付けてきた。

 ミシャールにこうしてもらうと、落ち着くのだ。


「苛立ってるな、焦るな!いつか結界の外に出られる日も来るだろうさ」


「こんな結界、今すぐにでも壊してやるのに!!」


「おまえ……アリシアが銀の森へ帰って、機嫌が悪いな」


 ミシャールは盛大な溜息をついた。

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