第2話  結界

「こら!!エリサ!!待て!」


「「嫌よ~~!!」」


 エリサは、風の精霊を操って飛びながら、父から逃げていた。


「もう、魔法鍛冶はやらないんでしょ?火竜の精はいらないでしょう?」


「それとこれとは、話が違う!!火竜は危険なんだぞ!!返せ!!」


「ちゃんと、挨拶はして契約したわよ」


「駄目だ!!これ以上、お前に精霊は持たせられん!!ましてや、火竜なぞ!」


 父のレフは、10年前まで優秀な魔法鍛冶師だった。

 だが、不幸な作業場での事故により、大ケガを負っていた。

 レフの持っていた魔法の力で、傷は治癒したが魔力は完全に失われてしまった。以後は騎士として、騎士団の創設の携わっていた。休暇のたびに、ひとり娘のエリサに振り回されていた。


 叔母のミジェーリアに預けていたが、エリサの落ち着きの無さに心配は尽きない。


「リカルド、父様を振り切るわよ」


 <了解>


 エリサは、騎士の格好をした風の精霊のに更なる風を吹かせて、上空に舞い上がって行った。


 薄茶色の髪と、茶水晶色の瞳。髪の緩いウエーブが父と似ていた。

 金髪で暗緑色の瞳の母とは、似たところは一つもないのだ。

 母は、「お前が父の子だという証だと」と言うが、


 <おっと、此処ここまでだ。これ以上は結界に触っちまう>


 半透明のリカルドが、エリサの前に廻りこんで、それ以上エリサが進まないように止めた。


「また、結界なの!触ってもいけないんでしょう?」


 <俺にもよく知らされていないんだ。ただ……エリサは神殿に見つかると面倒なんだそうだ>


「神殿?聖なる光の神を祀る、銀の森の神殿なの?」


 <俺の生まれた所だ!神秘的な処だぜ……リドムの葉が銀色に年中輝いてる>


「行ってみたいわね、母様に頼んでも無理かしら……ここは狭すぎるわ」


 寂しそうに話すエリサに、風の騎士が言った。


 <戻ろうぜ……レフに怒られろよ、レフを祝福をしてた火竜と契約しちまったんだから……>


「分かったわ」

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