第12話「初めて会った時のこと、覚えてる?」と言われました。
「ごめん、ベッド二つしかないんだ」
俺のこの言葉が、戦争の合図だったんだ。
「なんの話?」
「寝床の話なんだけど、今ウチにあるベッドは二つ。一つは俺の部屋な、そんでもう一つは向かいの空き部屋。だから今日は一人リビングで寝てもらうことになっちゃうんだけど、それでも大丈夫か?」
俺がそう言うと、はいはーいと元気にエリィが口を挟んできた。
「わたしに任せなさい!それに関しては誰しもが幸せになれる解決策があるのよ!」
「何か嫌な予感がするけど……まあいいや、言ってみ」
するとエリィが俺を指さし、声高らかに言った。
「わたしが佑都と一緒に寝て、この女が向かいの部屋で寝ればいいのよ!そしたらすべて解決ね」
すると当然のごとく宮城が反論した。
「はあああああ何それ!そんなの絶対おかしい!それなら私が佑都くんと一緒に寝るから、エリィちゃんが向かいの部屋で寝ればいいじゃない!」
「それじゃあんたたち絶対セックスするじゃない!わたしがあんたらの監視しないといけないんだから、わたしが佑都と一緒に寝るのは当然のことよ!」
「ま、またあなたセセセ……とか変なこと言ったわね!!!わ、わわ私と佑都くんがそんなことするわけ無いじゃない!それよりもエリィちゃんの方がそういうことしそうじゃない!」
「当然よ!わたしはあんたと違って佑都に求められたらいつでもセックスする準備は出来ているわ!あんたごときとは覚悟が違うのよ!覚悟が」
「なーんでセックスしないっていう選択肢が愛がないみたいな感じで受け入れられちゃってるのかな!私はそんなにビッチじゃ無いもん!」
「はあ!?!?あんた今わたしのことビッチって言った?言ったわよね!いい、よく聞きなさい!私が愛するのは今までもこれからも佑都だけよ!そしてエッチするのも佑都だけ!これは純愛であって決してわたしがビッチなわけでは無いわ!」
「どーだか、他の男の子にも同じこと言ってるんじゃないの?」
「あんたねえ……マジでブチ殺すわよ!!!!」
ヤバいな、止めるタイミング見失って喧嘩をあきらめてみていたけどそろそろお互いガチギレしそうになってきた。
「おいお前ら!いい加減にしろ!」
俺は大声で叫んで、時計を指さした。
「今何時だと思ってんだ!お隣さんに迷惑だろ!」
二人によーく聞こえるようにかき消されないように一生懸命大声を出す。
結果で言うと喧嘩は止まった。
しかし二人は俺一気に俺の方を向いてこうハモった。
「あんたの方がうるさいわ!」
※
「ということで、お前ら二人はリビングで寝ろ」
俺がそう言うと、エリィが案の定怒った。
「ちょ、佑都どういうこと?わたしこの女と一緒になんか寝れないんですけど!」
「だってそうしないとお前等喧嘩するだろ。一緒に寝ればお互いの監視にもなるし、今日のところがあきらめろ。ほら、布団しくぞー」
「まあ確かに、こうなったらこれしかないね……」
宮城が仕方がないといった形で出された布団を広げる。
「ちょ……もう」
エリィもやっと懲りたのか、おとなしく寝る準備を始めた。
「それじゃあ布団広げられたみたいだし、俺は寝るわ。二人ともおやすみー」
「おやすみなさい」
宮城の声が聞こえる。
俺はその言葉を背中で聴きながら自室へと向かった。
まあ今日は色々あったけど、なんとか何も失わず一日を終えることが出来た。
俺は突然どっときた余りの疲れから、ベッドに飛び込んだ。
ヤバい、もう何もやる気起きない。
そういえばそうだ。今日だけで俺はとんでもないことを沢山してしまった。
今まで話したことのないカースト最上位の女子に話しかけたり、宮城を追って授業中なのに抜け出して走りだしてみたり、宮城と一緒にいる為に『1年間で10万人登録者作らなかったら高校辞めます』ってとんでもない宣言してしまったり。
そして、告白しちゃったり。
とんでもない1日だった。もちろんエリィの件もあってな。
……。
…………。
ダメだ。ベッドに入ってすぐなのに、もう意識が……。
……。
…………パシッ
何かとてつもない衝撃を感じて、俺は勢いよく飛び起きた。
んん? なんか身体が妙に重いな……もしかして金縛りか……?
そう思って目を開けたら、目の前にいたのはエリィだった。
俺に毛布の上から覆いかぶさって、いたずらな表情をしている。
「やっと起きた」
そう言って俺に抱き着いてくる。
「ちょ……エリィお前何やって」
「二人きりになれた」
エリィはそう言うと、もぞもぞと俺の毛布に潜り込んできた。
「おい、お前一体なにやってんだ」
「いいじゃない。少しくらい一緒にいなさいよ」
ベッドで隣どうし、エリィが少し寂しそうな声色で言った。
「あのな、さっきそれで宮城と喧嘩したんだろ……俺はお前らに喧嘩してほしくないから」
「分かってるわよ。ちゃんと凪咲とは話つけてきた」
ええ、この短時間で?
お前等一体何を話してたんだ??
そう思ってスマホを見る。時計には午前3時の文字が刻まれていた。
マジか、俺もうそんなに寝ていたのか。
というかそれよりも大事なことがある。
なんだよその『話をつけてきた』って。
「ねえ、佑都」
「なんだ?」
「わたしたちが初めて会った時のこと、覚えてる?」
「ああ、覚えてるよ」
そう、覚えてる。それは去年の12月、YouTuberを集めたオフ会に参加した時だった。
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