第4話

そう言って3人は事件現場に行った。そこで颯が


「鬼火よ、跡を辿って。」


と手のひらから青い炎を出して、それがフワッと中に浮いて進んで行った。


「さ、追うぞ!」と颯


「おいおい、なんでもありだな。」と鈴鹿


「能ある鬼は角を隠すだよ!」と渚


そして3人は鬼火を辿りとある古民家へと辿り着いた。


「む、ここは鬼の入れない結界がある。鈴鹿さん、悪いんだけどどこかに札があると思うから、それを一枚でいいから破ってきてくれない?」と颯


「わかった。探してくる。」と鈴鹿


しばらくして


「おーい!あったぞー!破ってきたぞー!」


と鈴鹿が少し離れた場所から叫んできた。


「よし、乗り込むぞ、渚!」


「がってんだ!」


戸を開けて隣の部屋へと入った。そこはリビングで、茶髪に染めた若者と3人の老人がいた。


「くっ!鬼ども!どうしてここが分かった!?」


「てゆーかお前誰?お前が犯人なのは分かったけど、誰?」


「俺は第45代桃太郎だ!いざ、成敗せん!犬、猿、雉、行け!」


「はい、桃太郎さま。いきますぞ!」


と犬が先に向かった。颯に嚙みついた。


「ああ、歯が。歯がボロボロにぃぃぃ...。」


と犬が転げ落ちた。


「次はワシの番じゃ!」と猿


自慢の爪での攻撃を颯に仕掛けた。


「痛い!痛い痛い!爪がはがれた!爪がはがれることほど痛いことはない!」


と猿は膝から崩れ落ちた。


それを見た雉は


「ぐは!もうだめだ!」


と死んだふりをした。


「あのー、あなた達はなんなんですか?」と渚


「うるさい!俺が直々に相手をしてやる。これを見ろ。名刀、鬼切丸だ。」


「あれ、本物?」と渚


「本物だったらちょっとやばいな。」と颯


「何をごちゃごちゃ言ってやがる!行くぞクソ野郎!」


と桃太郎が鬼切丸で薙ぎ払った。すると


「くっ!風圧だけでかまいたちみたいに切れやがる!奴が持っているのは本物だ!」と颯


「いたた。鈴鹿さんは大丈夫なの?」と渚


「あぁ、俺は大丈夫だ。鬼にしか効かない武器なんだろうな。」と鈴鹿


その間にも桃太郎はぶんぶんと刀を振ってくる。


「くっ!鈴鹿さん、あいつの手を少し止めてくれませんか?あいつの一振りは大きいから隙が出来るはずなんです。私たちはあの風の刃で近付けないから少しやつを止めてください!」と颯


「了解!」と鈴鹿


桃太郎が刀を大きく振り下ろした時にすかさず鈴鹿が刀を持ってる手の上にジャンプして乗っかった。そうすると切れ味の良い鬼切丸は床に刺さり、抜けなくなった。そうすると鬼化した颯が桃太郎の首をつかみ持ち上げて


「てめぇ、何の真似だ?なんであんなことしやがった?」


と颯が語気を強めに桃太郎に言った。


「くっ!俺たちはっ!俺たちは代々、鬼を狩るのが仕事だ!グッ!」


「私たちはただ平穏に生きたいだけだよ?なんでいつも悪者扱いをするの?昔は昔、今は今でしょ?」と渚


颯が手を離してドスっと桃太郎が落ちた。


「そうだ。俺たちになんの罪があるんだ。細々と暮らしてきたのに。鬼というだけで両親も国に捕らわれて研究材料にされて。ようやく俺たちが日の目を浴びる日が来たというのに何でこんなことをするんだ?」


と颯が悲しそうに言った。


「それは俺たちも似たようなものだ。時代と共にそのアイデンティティを無くされただのおとぎ話の中でしか生きてない俺の祖先だけが輝いてる。そんな中、脚光を浴びるお前らが羨ましかったんだ。嫉妬したんだ...。」


と桃太郎が吐露した。


「気持ちはわかるがお前らが犯した罪は重い。お前らが桃太郎の子孫だということは黙っておく。自主しろ。」と颯


「なんだか時代と求められる人物像とのギャップって残酷だね。私たちもそうだもんね。」と渚


「鈴鹿さん、こいつらの後を頼みます。」と颯


「わかった。」と鈴鹿


「はぁ。なんだか一気に疲れたな。」と颯


「目まぐるしい展開だったね。」と渚


「まぁ、神はご都合主義だからね。」と颯


「何の話?」と渚


「さあ?」


そんなこんなで鬼の兄妹の天皇皇后両陛下の護衛は続くのであった。


それから岡山では吉備団子よりも鬼の酒のほうがメジャーになったとかなんとか。

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鬼の系譜 秦野 駿一 @kwktshun

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