第3話

いよいよ天皇皇后両陛下がご入居する時が来た。その時ドローンが飛んできて上から何かを落としてきた。SPが


「爆発物かもしれん!早く非難を!」


と叫んだ。周りには天皇皇后両陛下の車だけではなく歓迎の声をかける民衆が多くいて、それが爆発物だとしたら被害は確実にでるだろうと思われた。それを考えて颯は急いで飛び込み、体を巨大化させ、爆発物を抱えるように体で包みこんだ。民衆が


「ひえぇぇ!鬼だぁぁ!」


と叫んだその瞬間、颯の体から「ボフっ」っと鈍い音がした。颯の外見は角が二本と牙が生えて鬼の形相になっていた。颯の衣服は爆発のせいで焼け焦げていて体からも血が出ていた。民衆が


「一体何が起きたんだ?」


「多分爆弾だ!」


民衆の中の一人が


「あ、あの鬼が体を張って私たちを守ってくれたんだ!」


その中で颯が渚に


「あのパーカーの男を捕まえろ、渚!」


「わかった!」


と渚もその可愛らしい見た目から鬼の形相に変わりひょいっと飛び回りパーカーを着た犯人を捕まえた。


そして一連の騒動が終わるとテレビ局の報道や新聞の記者、海外メディアまでもが鬼の兄妹に押し寄せた。颯は怪我をしているのでそんなに長い間メディアにさらされることもなかったが、これらのニュースは世界中を騒がせた。


「鬼の兄妹が天皇皇后両陛下を守る!」


「伝説の鬼の子孫が大活躍!?」


などなどと、しばらくマスコミの報道は絶えなかった。


「いや~、まいったね、君ら鬼の形相になるなんて知らなかったよ。」と鈴鹿


「こっちもびっくりしてるよ!小さい頃から本気を出すなって言われてたからこんなのになりたくなかった...可愛くない!」と渚


「まあ、俺はどのみちそうなるんじゃないかと思ってたよ。命張る警備だもんな。」と颯


「でもあれで天皇皇后両陛下から感謝状が頂けるらしいぞ?良かったな!」と鈴鹿


「おお!俺たち鬼も日の目を見る日が来たか!」と颯


「やったね、お兄ちゃん!」と渚


その一方


「ちっ。クソ面白くねぇ。俺のご先祖様が狩ったはずのクソ鬼どもが脚光を浴びるなんて。」


と嫉妬めいてぼやいているのが第45代桃太郎だった。


「おい、犬!なんか手立てはねぇのか?」


「そぉですのぉぉぉぉ...私がまだ若かったらですなぁぁぁぁ...。」


と家来の犬は精霊みたいなもので、初代桃太郎からずっと生きていて今は老いてしまっていた。猿も雉も一緒である。注釈としては一応人の形である。


「私らが引きつれていた子分らも暴対法に抵触して解散されましたからなぁ...。」と猿


「現代で生きるのは辛すぎますだ...。」と雉


「ええい!役に立たん!俺が考えて全部俺がやる!」


「分かりました…。」


そう言って桃太郎は何かしら良からぬことを考えていた。


一方鬼の兄妹はというと、その人気から皇居前に人だかりができ、メディアも殺到してしまい、警備どころの騒ぎではなかった。また、模倣犯の可能性もあるので皇宮警察の護衛部門に配属された。その中でも最も側近での護衛にあたった。


「お前らみたいな教育も受けてない奴が天皇皇后両陛下の護衛に当たれるなんて光栄に思えよ?俺たちはどれだけ苦労したことやら。だが、お前らの身体能力だけは買ってやる。間違っても変な気は起こすなよ?」


と護衛官の方が言った。


「私たちも鬼である前に一応日本人ですよ。天皇皇后両陛下のをお守りできることは光栄に思っています。」


と颯が言った。


そもそも天皇陛下へテロをするというのは政治的思想でもなんでもなく、ただもてはやされたいだけの輩のような気がする。昔のように権力の権化ではないのだから。


そんなある日の鬼の兄妹が非番の夜、ファンからの差し入れということで鈴鹿を通して酒を頂いた。


「は?鬼ころし?俺らを殺したいの?まあ、酒に罪はないが。」と颯


「ふざけたネーミングよね?お酒に罪はないけど。」と渚


「まぁまぁ、二人とも、これはファンからのユーモアだと思うよ?上撰の鬼ころしだし。せっかくの非番なんだからゆっくりしなよ。」と鈴鹿


「まぁ、ありがたく頂戴します!」と颯


「あざます!」と渚


とさっそく晩酌をしてなぜだか二人とも眠くなってそのまま二人寝てしまった。


ドンドンドン!


ドアを叩く音がして二人とも目が覚めた。


「ふぁ~い。ちょっと待ってください。」


とドアを開けると


「警察だ。署までご同行願う。」


「は?」と颯


「私たちが何したっていうの?」と渚


「妹の方には用がない。兄のほうだ。取り合えず署に来てもらう。」


「おいおいおい、ちょっと待てよ。」


とキムタクぎみになる颯。そんなわけで警察署まで連行された。


「この動画を見ろ。ナパーム弾が皇居に打ち込まれてる。ナパーム砲とでもいうか。これがお前が鬼の形相になったときのお前の姿だろ?」


と刑事が言った。


「いやいやいや、刑事さん、ちょっとよく考えて?私が鬼の形相になるとき体が巨大化するでしょう?なのにこの人顔面だけデカくて体細くない?どう見たって俺じゃなくない?それにあの晩、妹と酒飲んで寝てたんですよ。二人とも寝てたから証明する人はいないけど。」


と颯が反論した。


「ふむ。確かにそう言われればそうかもしれないな。一度家に帰す。まだ容疑が完全に晴れたわけではないがな。」


と刑事に言われ警察署をあとにした。渚と鈴鹿が迎えに来ていた。


「まさかお前がこんなことをするとは思ってはないから警察に事情を話してきたよ。それとあの鬼ころしの酒を鑑識に調べてもらうように言った。渚ちゃんも一緒に眠っちゃったと聞いたからね。」と鈴鹿


「そうだよ。あのお酒絶対何か入ってたよ。あの程度のお酒じゃ私たち眠くならないもん。」と渚


「そうだよな。それじゃあ疑いを晴らすために一仕事しようか。」と颯

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