第14話

「ちょっと岐阜に行く前にバイクショップに寄ってもいいか?」と宇都宮


「いいけど何すんの?」と亜斗


「運転してる間、お前らと話せないだろ?だからBluetoothイヤフォン買おうと思ってさ。」と宇都宮


「それは確かに。」と亜斗


というわけでバイクショップに寄って宇都宮がBluetoothイヤフォンを買ってきた。


「これで運転中も話せるね。」と詩音


「それじゃ行こうか。白川郷まで下道で5時間くらいかな?」と亜斗


「もう相手がいる場所分かってるから高速使わないか?」と宇都宮


「私は下道でもいいけどね。」と詩音


「宇都宮さんと会った時のように目玉に襲われたこともあったしね。」と亜斗


「じゃあ下道で行きますか。」と宇都宮


しばらく車で走り


「Country road take me home to the place I belong~」


と宇都宮が歌いだした。


「何そのアップテンポなカントリーロードは?」と亜斗


「Me First and the Gimme Gimmes のCountry Roadだよ」と宇都宮


「知らねー!」と亜斗


「いい感じの曲だね!今度そのCDかデータくれない?」と詩音


「いいよ!今度あげるね!」と宇都宮


「しかし移動は退屈だね。敵は待つだけ。襲ってこないという変な仕組み。」と亜斗


「私は結構楽しいよ?色んな景色が見えるから!」と詩音


「やっぱり詩音ちゃんは純粋だねぇ。」と宇都宮


しばらくして岐阜に着き、山道に入り白川郷の直前まで来た。


「ちょっとまって、ここ、紫色の瘴気で溢れてる!それに合掌造りもボロボロ!どうしたの?」と詩音


「おそらくこれは裏の世界だな。どこからか裏の世界に入ったようだ。じゃないとこんな現実はないはずだ。」と宇都宮


「どういうこと?」と亜斗


「仮にこれが現実だとすると、普通の人間はパニックになって社会的に問題となる。そうなれば夢堂の存在にも影響が及びかねないからさ。」と宇都宮


「なるほど。」と詩音と亜斗


「じゃあ、敵はどれなの?こんなに一面、紫色だと見分けがつかないわ。」と詩音


「ハーモニクスエスケープを使おう。最も濁った音の所へ行けばそれが敵の所だ。」と宇都宮


さらに宇都宮が


「詩音ちゃんは亜斗の手を取って!俺は自分で出来るから!」


詩音は魔音鈴を鳴らし、最も不協和音がするところへと意識を集中した。そしてスッと飛び去った。それにあわせて宇都宮も飛び去った。


そしてたどり着いたのが、ただ一つの合掌造りの前だった。


「あれ?敵がいないじゃん?」と亜斗


「待って!この家、すごくどす黒くて真っ赤に染まってる!これが本丸よ!」と詩音


「しかし、鎮座してるこれを壊せばいいのか?」と宇都宮


そうこう言っているとゴゴゴゴゴゴ!と合掌造りの家が立ち上がり、手と足が出てきた。


「来るぞ!」と宇都宮


ズシン、ズシンと歩いてきて詩音の前に来ると両腕を振り下ろしてきた。それを詩音はひらりとかわした。そして遠くから宇都宮が魔弾で打っていると窓のようなところから無数の蚕が出てきて糸を吐き出した。それが手足を粘着して身動きが遅くなった。


「クソ!どうすりゃいいんだよ!うかつに近づけねぇ!」と亜斗


「それに何?この虫と糸?ねばねばして動きづらい!」と詩音


「詩音、弱点は見えないか?」と宇都宮


「見えるどころの騒ぎじゃないよ!」と詩音


「多分あいつらは火に弱いよ!絶対そうだよ!」と亜斗


「火か...。考えてみりゃそうだな。しかし火なんてどうするよ?」と宇都宮


「俺にいい考えがある。宇都宮さんはタバコ吸うでしょ?だからライターでその辺の糸に火をつける。その火と詩音の共鳴刀を共鳴させる。それから俺たちは敵の足元に入って敵を転ばす。その隙に詩音が一気に敵を切りつけるというわけさ。」と亜斗


「なるほど。火属性を帯びた共鳴刀での攻撃か。やってみる価値ありだな。冴えてるな、亜斗!」と宇都宮


「じゃあ、火をつけるぞ!行くぞ、亜斗!」と宇都宮


「OK!宇都宮さん!詩音、火と共鳴させて!」と亜斗


「分かった!」と詩音


「行くぜ!」と亜斗と宇都宮


魔弾と魔音刀で敵の足に攻撃を与えた。蚊を叩くように敵は手をパチ!っとやってくる。それをかわしながら足元に攻撃を加える。それを繰り返していくうちに敵が後ろにバターンと倒れた。その隙に


「詩音!今だ!窓から中に入って切りまくれ!火をつけまくるんだ!」と宇都宮


「分かった!」と詩音


敵によじ登り、窓から入った詩音は炎に燃える共鳴刀で合掌造りの家を切りまくった。そうすると次々と炎が立ち上がり、一気に全体が燃え始めた。


「ぐおおおーーーーーーーーー!」


と家は叫びながら燃えて消えていくようだった。


「詩音!大丈夫か?詩音!!」と亜斗


「やばい、詩音ちゃん逃げ遅れたのか?詩音ちゃんに限ってそんなことはないと思うのだが...。」


とその時


「ふぅ~。ただいま。」


と詩音が二人の後ろのあぜに現れた。


「ハーモニクスエスケープか...。」と宇都宮


「そうそう。これって便利ね。焼け死ぬかと思ったよ。」と詩音


「びっくりさせやがって!」と亜斗


「まぁまぁ、ひとまず安心だね。どうやって元の世界に戻るの?」と詩音


「それもハーモニクスエスケープかな?」と宇都宮


「すげぇ。まじ万能。」と亜斗


そして三人は普通の白川郷に戻った。


「せっかくだから観光していかない?」


と詩音が言った。

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